7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(後編)

数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。

数学セミナー 2018年 10 月号 [雑誌]

数学セミナー 2018年 10 月号 [雑誌]

7つのうち前半3つの記事のメモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com

今回は後半4つの記事のメモです。

有限体の不思議な森

有限体  \mathbb{F}_p

  • 素数  p に対して、  p で割った余りの集合  \mathbb{F}_p = \{ 0, 1, \dots , p-1 \} は体となる。
    • 小さい  p では乗積表で逆元の確認ができる。
    • 一般の  p での証明は本文の脚注にあり。
    • 『はじめての数論』 *1 第9章参照

原始根

  •  \mathbb{F}_p の元  r  \neq 0 で、集合として  \{ r, r^2, \dots , r^{p-1} \} = \mathbb{F}_p \setminus \{ 0 \} となるものが存在する。これを \mathbb{F}_p原始根という。
  • 原始根の存在定理について
    • 原始根は1つとは限らない。
    • 言い換え: \mathbb{F}_p^{\times} 巡回群である。
    • 証明から、任意の体の乗法群の有限部分群は必ず巡回群であることが言える。
  • 『はじめての数論』第20章参照

円分多項式

準備
  • 正の整数  n に対して、多項式  \phi_{n}(x) = x^{n-1} + \dots + x + 1 を考える。 *2
  •  x^n -1 = (x-1)\phi_{n}(x) より、 \phi_{n}(x) は1の  n 乗根で1以外を根に持つ。
  •  \phi_{n}(x) \mathbb{Z} [ x ] では既約だが、 \mathbb{F}_p [ x ] ではどうかを考える。
  • フリーの数値計算ソフト PARI/GP を使うと計算できて、既約/可約(さまざまな分解の型 *3 )がわかる。重根を持つ場合もある。
円分多項式の性質
  • 1の  n 乗根のうちで  n 乗して初めて1になるものを1の原始  n 乗根という。
  • 1の原始  n 乗根をすべて根に持ち重根を持たない多項式 n 番目の円分多項式といい、  \Phi_{n}(x) で表す。
    •  \Phi_{n}(x) は整数係数で、  \mathbb{Z} [ x ] では既約である。
    •  n素数のときは、   \Phi_{n}(x) = \phi_{n}(x) となる。
  • 素数  p について、  \Phi_{n}(x) \mathbb{F}_p [ x ] 因数分解するとどうなるかを、本文では調べている。

すべての有限体は  \mathbb{F}_{p^n} で尽くされる

  •  \mathbb{R} に実数で根を持たない  x^2+1 の根を添加して  \mathbb{C} を構成したのと同様に、  \mathbb{F}_p を拡大して新しい有限体を作れる。
  • ここで、どのような  \mathbb{F}_p でも、任意の  n について  \mathbb{F}_p 係数の既約な  n多項式  f(x) が存在することを使う。
  •  f(x) の根を  \mathbb{F}_p に添加した体は  p^n 個の元を持つ有限体で  \mathbb{F}_{p^n} と書く。
  • 最小分解体の理論から  p^n 個の元を持つ有限体は  \mathbb{F}_{p^n} に限られる。
  • 逆に、任意の有限体は必ずある  \mathbb{F}_{p} の拡大で、元の個数はその  p の冪となる。
  • 以上により、すべての有限体は  \mathbb{F}_{p^n} で尽くされる

 p 進数体をめぐる冒険  p 進距離が紡ぎ出す甘美な世界

有理数 \mathbb{Q} に入る2つの距離による完備化で作られる体について説明されています。

2つの距離とその完備化の特徴について、次のポイントを挙げて整理しました。数学的に適切ではない記述についてはご容赦ください。

なお、素数  p を1つ取って固定します。

ポイント

  • (1) 距離関数の元になる絶対値の定義
  • (2) 距離関数が満たす三角不等式
  • (3) 有理数自然数倍すると何が起きるか?
  • (4) 完備化
  • (5) 整数に相当するもの
  • (6) “無限小数”の進数表記

(A) ユークリッド距離  d_{\infty} の完備化=実数体  \mathbb{R}

  • (1) 通常の意味の絶対値  | \cdot |_{\infty} *4。ここから距離  d_{\infty}(x,y)=|x-y|_{\infty} が入る。
  • (2) 通常の三角不等式 d_{\infty}(x,z) \le d_{\infty}(x,y) + d_{\infty}(y,z)
  • (3) 非常に小さい有理数を十分大きい回数加えると、非常に大きい有理数を超えることができる。
  • (4)  \mathbb{Q} d_{\infty} による完備化が  \mathbb{R} である。
  • (5) 通常の整数環  \mathbb{Z}
  • (6)  \mathbb{R} の元を10進数の無限小数で表すと、小数点以下(  10^{-1}, 10^{-2}, 10^{-3}, \dots の位)に無限に数が続く。 *5

(B)  p 進距離  d_p の完備化=  p 進数体  \mathbb{Q}_p

  • (1)  p 進絶対値を次のように定義する。距離を  d_{p}(x,y)=|x-y|_{p} で定義する。
    • 整数  x  \ (\neq 0) は、0以上の整数  e_x p と互いに素な整数  x' を使って、  x = p^{e_x}  x' と一意に書ける *6 \mathrm{ord}_p \ x := e_x x加法的  p 進付値と呼ぶ。
    •  \mathrm{ord}_p有理数  x  \ (\neq 0) に拡張する。  x は2つの整数  m, \ n \ (n \neq 0) を使って  x = m/n と書ける。  \mathrm{ord}_p \ x := \mathrm{ord}_p \ m - \mathrm{ord}_p \ n で定義する( m, n の取り方によらず、well-defined)。
    • 以上を使って、有理数  x の乗法的  p 進付値を  |x|_p := p^{-\mathrm{ord}_p \ x } で定める。ただし、  \mathrm{ord}_p \ 0 = + \infty, \ |0|_p = 0 と定める。
  • (2) 強三角不等式 d_{p}(x,z) \le \max \{ d_{p}(x,y) , \ d_{p}(y,z) \}
  • (3) 非常に大きな有理数を何回加えても、もとの有理数を超えることはできない。
  • (4)  \mathbb{Q} d_{p} による完備化を  \mathbb{Q}_p と書き、  p 進数体と呼ぶ。
  • (5) 各整数  n について、  \mathbb{Q}_p での半径  p^{-n} の“円”  C_n := \{ x \in \mathbb{Q}_p \ | \ d_p(0,x) = p^{-n} \} を考えると、  \mathbb{Z} \mathbb{Z}_p := \{ x \in \mathbb{Q}_p \ | \ d_p(0,x) \le 1 \} = \{ 0 \} \sqcup \bigsqcup_{n=0}^{\infty} C_n  に含まれると言える。  \mathbb{Z}_p  p 進整数環という。
    • さらに、  \mathbb{Z} \mathbb{Z}_p で稠密であることが知られている。
  • (6)  \mathbb{Q}_p の元を  p 進数の“無限小数”で表すと、小数点以上(  10^{0}, \ 10^{1}, 10^{2}, \dots の位)に無限に数が続く。

その他

  •  \mathbb{Q} 上の距離は実質的に  d_{\infty} と各素数に対応する  d_p しかないことが知られている(オストロフスキーの定理)。
  • ディオファントス問題 *8有理数解を求めるのは難しい。一方、実数解はニュートン法 p 進数解はヘンゼルの補題などで、点列の極限として解を構成的に発見できる。
  • 大域類体論と局所類体論
  • キーワード:ハッセ-ミンコフスキーの定理、ハッセの原理、アーベル拡大、フロベニウス元

実数体の使われ方 ― 量化記号消去と半代数的集合

量化記号消去

  •  \forall, \ \exists などの量化記号を使った論理式から、量化記号を使わない同値な論理式を得ることを量化記号消去という。
    • 例:「  \forall x \in \mathbb{R} \ ( x^2 + bx + c > 0) 」から同値な命題「  b^2 -4c < 0 」を得る。
  • 実数に関する命題 *9 では量化記号消去だが(タルスキー-ザイデンベルグ)、整数に関する命題では量化記号消去できない。
  • ポイントは中間値の定理
  • 東ロボくんの数学の問題を解く手段としても使われている。

実閉体

  • 加法や乗法と両立する順序構造を持った体である条件(本文の(i)~(iii))を満たすものを実閉体という。
  • 実閉体では、量化記号消去は成立し、ヒルベルトの第17問題とも関連している。

半代数的集合

  • 多項式の等式や不等式を使って表現される集合といえる半代数的集合 *10 と量化記号消去の関係がありそう…だが、自分の力では把握できず。

計算機で扱える実数

  • 実数は有理数のコーシー列の極限で定義されるが、実数を扱うときに近似列をまじめに扱うことは少ない。
  • 一方で、計算機で実数を扱う場合は、実数の近似列を使って計算を行う。
  • 実代数的数は、近似列を使わずに、四則演算や等式を扱うことができることが知られている。
  • 一方で、超越数についてはまだ答えが得られていない。

いろいろな体 ― 体のレベルをつうじて

整域から体を作る

準備(整域の定義とその例)
  • 整域  D :零因子を持たない可換環 \{ 0 \} を除く)
  •  K の形式的冪級数  K [ [ t ] ] := \{ \sum_{i=0}^{\infty} a_i t^i \ | \ a_i \in K \} は整域である。
  •  K n 変数多項式環  K [ X_1, \dots , X_n ] は整域である。
整域から作られる体
  • 商体(分数体) D からその商体  \mathrm{Quot}(D) := \{ a/b \ | \ a, b \in D, \ b \neq 0 \} が得られる。これは  D を部分環として含む最小の体である。
  •  K [ [ t ] ] の商体はローラン冪級数  K ( ( t ) ) := \{ \sum_{i > - \infty}^{\infty} a_i t^i \ | \ a_i \in K \} である。これは完備離散付値体で  \mathbb{Q}_p とともに数論では重要な研究対象になる。
  •  K [ X_1, \dots , X_n ] の商体として、  n 変数有理関数体  K ( X_1, \dots , X_n ) が得られる。これは  K 上の超越次元が  n の体になる。
超越次元を持つ体の例
  • 有理関数体の拡大体も得られる。具体的には、有理関数体内で根を持たない多項式を使うもので、本文に例がある。
  • 代数多様体の関数体にも超越次元を持つ体が現れる。

小さい体の例:素体

  •  K標数を、乗法の単位元  1 に対して  1 + \dots + 1 \ ( n \text{個} ) = 0 となる最小の自然数  n と定義する。
  • 体の標数 0 または素数  p となる(体が整域であることを使う)。
  • また、標数  0 の体は  \mathbb{Q} 標数  p の体は  \mathbb{F}_p を必ず含むことがわかる。 \mathbb{Q} , \ \mathbb{F}_p を最小の体という意味から素体と呼ぶ。

体からさらに大きい体を作る

  •  K 上の既約  n多項式の根で  K にはない元  \theta K に添加した体  K( \theta ) = \{ a_0 + a_1 \theta + \dots + a_{n-1} \theta^{n-1} \ | \ a_i \in K \} は拡大次数  n(代数)拡大体になる。
    • 特に、  K= \mathbb{Q} のとき、  \mathbb{Q}(\theta) n 次代数体という。
  • すべての  K 上の多項式  f(x) が必ず  K 内に根を持つ体を代数閉体という。
  • 一般に、すべての体  K には代数閉体  \overline{K} が存在することが知られている。  \overline{K} K代数閉包という。
    • 体ごとに定まる代数閉包はすべて同型になる。
  • 有理関数体  \overline{K} (X_1, \dots , X_n) を代数拡大して、さらに大きい体を作れる。

斜体:乗法が非可換な体

  • 可換環  R R \setminus \{ 0 \} が乗法群をなすものを斜体という。
    • 有限集合は斜体にならない(ウェダーバーンの小定理)。
  • 斜体の例:ハミルトンの4元数体  \mathbb{H} \mathbb{C} の一般化)
    •  \mathbb{H} をさらに一般化したケイリーの8元数  \mathbb{O} と呼ばれる代数は結合律が成立しなくなる。この代数はさらに一般化できる。 *11
  • キーワード:ノルムの乗法性、ラグランジュの4平方定理、Hurwitz、Pfister

体のレベル

  •  K 上の代数方程式  X_1^2 + \dots + X_n^2 = -1 が解を持つような最小の自然数  n Kレベルといい、  s(K) と書く。
    • このような  n が存在しないときは  s(K) = \infty と定める。
  •  s(K)=\infty なる体を形式的実体または実体といい、実体ではない代数体を総虚という。
    • 【疑問】虚2次体と総虚の関係は?
  • 有限体  \mathbb{F}_{p^n} や2次体  \mathbb{Q}(\sqrt{m}) のレベルは  1, 2, 4, \infty のいずれかになる。
  • 体のレベルは有限である限りは2の冪であり、逆に任意の2の冪をレベルに持つ体が存在する(フィスター)ので、さらに“大きい”体の存在が示唆されている。

おわりに

この特集で体論についての振り返りができました。

そして、数学セミナー 2017年6月号』の特集で群論の振り返りができるようになっています。ブログにはまとめられていませんが…。

あとは環論

群・環・体でいちばん理解できていないのが環論なので、今後の『数学セミナー』に期待です!

*1:以下、次の本を指す。

はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで

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  • 作者: ジョセフ・H.シルヴァーマン,Joseph H. Silverman,鈴木治郎
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*2:本文では、最初に  \phi_5(x) = x^4 + x^3 + x^2 + x +1  \ ( = \Phi_5(x) ) を研究している。

*3:分解の型についての探求問題あり。【疑問】分割数やヤング図形と関係あり?

*4:通常は  | \cdot | で表すもの

*5:コーシー列と合わせて考える。

*6:素因数分解の一意性より

*7: \mathrm{ord}_p \ N \le 0, \ |N|_p \le 1 を使う。

*8: f \in \mathbb{Q} [ x_1, x_2, \dots, x_n ] で、  f( x_1, x_2, \dots, x_n ) = 0 有理数解を求めよ。

*9:ぼやかして書いています。

*10:きちんとした定義は本文参照

*11:志村五郎『数学をいかに使うか』の第1章~第5章で、ハミルトンの4元数体の記載あり。いつかまとめる予定。

数学をいかに使うか (ちくま学芸文庫)

数学をいかに使うか (ちくま学芸文庫)

特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(前編)

数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。

数学セミナー 2018年 10 月号 [雑誌]

数学セミナー 2018年 10 月号 [雑誌]

大学数学科時代に体論やガロア理論の講義を受けましたが、十分に理解できないままでした。

卒業後に数学ガールガロア理論を読んで、ガロア理論や方程式の可解性をようやく理解しました。

数学ガール/ガロア理論 (数学ガールシリーズ 5)

数学ガール/ガロア理論 (数学ガールシリーズ 5)

今回の特集を読むことで、有限体p進数体などの概要がわかりました。

ここでは、特集内の7つの記事のうち、前半の3つの記事の内容をメモします。

体とはなにか

体の歴史

四則演算と変数の記号化との関係

  • ヴィエトの業績
  • 森田真生『数学する身体』の第二章 計算する機械 - 2 記号の発見 に関連した内容が書かれている。

数学する身体 (新潮文庫)

数学する身体 (新潮文庫)

ガロア理論で体をみる

実数体を拡大した複素数体の考え方

  • 複素数体  \mathbb{C} :実数の中で解を持たない2次方程式  x^2 + 1 = 0 の根  i = \sqrt{-1} を、実数体  \mathbb{R} に添加して拡大した体
  • 体の拡大  \mathbb{C} / \mathbb{R} の拡大次数は2。(★1)
  • 複素共役写像  \sigma : \mathbb{C} \ni \alpha \mapsto \bar{\alpha} \in \mathbb{C} を考える。
    •  \mathbb{R} \sigma の不変体である。
    •  \sigma^2 は恒等写像なので、  \sigma の位数は2。
    •   \{ \sigma , \text{恒等写像} \} は位数2の群をなす。(★2)
  • 以上により、(★1)と(★2)が関係づけられる。

代数方程式の分解体とガロア拡大

  • 代数方程式有理数係数の多項式=0
  • 方程式の分解体:代数方程式を解くのに十分な拡大体
    • 言い換えると、方程式の根がすべて含まれる拡大体
    • 分解体までの拡大をガロア拡大という。 *1
  • 例えば、  x^3 - 2 = 0 の根は  \sqrt[3]{2}, \  \sqrt[3]{2} \omega, \ \sqrt[3]{2}\omega^2 の3つ。ここで、  \omega = (-1+\sqrt{3}i)/2 (1の3乗根の1つ)。
    •  \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}) はすべての根を含まない。
    •  \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}, \omega) はすべての根を含むので、  x^3 - 2 = 0 の分解体となる。
  • 根同士の置換全体がなす群 *2 の部分群の性質を調べることで、方程式の可解性(四則演算と冪根で解く)を調べることができる。
  • なお、拡大  \mathbb{C} / \mathbb{R} x^2+1=0 の根である虚数単位を具体的に与えられる必要を消し去った。
    • つまり、  \bar{i} = -i だが、 i -i のどちらかを考える配慮は不要になった。
    •  \omega \bar{\omega} = \omega^2 も同様。

ギリシャの三大作図問題と正多角形の作図問題

wed7931.hatenablog.com

  •  n 角形が作図できるためには、  n素数のときは  n=2^{2^m} +1 の形でなければならない(2次拡大の系列を作れなければならないから)。
  • 本文では、正17角形が説明されている(上の  m=2 の場合)。

代数体

  • 代数体:代数方程式の根をいくつか添加して得られる  \mathbb{Q} の拡大体
  • 整数や有理数の問題を、代数体に一般化して考えると有効なことがある。

単位円上の有理点を求める問題から広げて考える

問題1:  x^2 + y^2 =1 を満たす有理数  x,y を求めよ。
  • 解法1:代数的解法
    • 『はじめての数論』 *3 第2章参照
  • 解法2:幾何的解法
    • 『はじめての数論』第3章参照
  • 解法3:体論を使った解法
    • ガロア \mathrm{Gal}( \mathbb{Q}(\sqrt{-1}) / \mathbb{Q}) が位数2のアーベル群(つまり巡回群)であることから、巡回拡大に対して成り立つヒルベルトの定理90を使って解く。
問題2:有理数  r>0 に対して、  x^2 + y^2 =r を満たす有理数  x,y を求めよ。
  • 問題1を一般化した問題。
  • 解法1と2による回答は易しくないが、解法3では鮮やかに解決できる。
解法3の説明
  •  \alpha \in \mathbb{Q}(\sqrt{-1}) のノルム  N(\alpha) = \alpha \bar{\alpha} の性質を使って、方程式を満たす有理数が存在するための  r についての必要十分条件を導ける(定理3)。
  • 証明の鍵は次の(1)と(2)の2つ。
  • (1) フェルマーの2平方定理素数  p について、  p = x^2 + y^2 を満たす整数  x,y が存在する ⇔  p=2 または  p \equiv 1 (\mathrm{mod} \ 4)*4
    •  x^2 + y^2 = N(x+y\sqrt{-1}) に注意。
    • 『はじめての数論』第25章参照
  • (2) 素因数分解の一意性ガウス整数がガウス素数の積に(単元倍を除いて)一意的に分解できる。 *5
    • ガウス整数 x + y\sqrt{-1} \ (x,y \in \mathbb{Z})
    • 単元:乗法的逆元を持つガウス整数。ノルムが1であることと同値で  \pm 1, \pm \sqrt{-1} の4つ。
    • ガウス素数ガウス整数  \beta で、  \beta を割り切るガウス整数が単元と  \beta の単元倍のみのもの
    • 『初めての数論』第34章参照
問題3:整数  d > 1 について、  x^2 + dy^2 = r を満たす  x+y\sqrt{-d} \in \mathbb{Q}(\sqrt{-d}) は存在するか。
  • これは問題2の一般化。なお、代数体  \mathbb{Q}(\sqrt{-d}) は虚2次体と呼ばれる。
  •  d=2 の場合は問題2とほぼ同様に解けるが、他の  d では同様に解けない場合がある。
    • (1)のように、ある整数で割った余りのように簡単に特徴づけできない。
    •  d=5 の場合は、(2)が成立しない。 *6

「類数」という概念からの広がり

  • 代数体  K に対して、類数と呼ばれる不変量  H_K が定まる *7 。これは  K における素因数分解の一意性が成り立たない度合いを示す。
  • 問題1と2の背景には、  H_{\mathbb{Q}(\sqrt{-1})} = 1 (⇔素因数分解の一意性が成立)がある。
  • ここから円分体 *8 、素イデアル分解、岩澤理論、保型形式、類体論につながる。

その他の話題

  • 問題「どのような素数  p \neq 23 に対して、  p=6x^2+xy+y^2 を満たす整数  x,y が存在するか?」と類数3の虚2次体  \mathbb{Q}(-\sqrt{23}) と保型形式の関係
  • 虚2次体  \mathbb{Q}(\sqrt{-d}) の類数が1になるのは、  d=1,2,3,7,11,19,43,67,163 に限る。
  • ガロアの逆問題: 有限体  G に対して、ガロア \mathrm{Gal}(K/ \mathbb{Q}) G と同型になる代数体  K は存在するか?
    •  G が可解群やいくつかの有限単純群(モンスター群を含む)の場合は解決済み。
    • 幾何的ラングランズ対応を使った手法が駆使されている。 *9

参考にした本

学生時代に代数学で主に使用した永尾汎『代数学を参考にしました。

代数学 (新数学講座 4)

代数学 (新数学講座 4)

後編に続く

後編のテーマは以下の通りです。

  • 有限体
  • p進数体、p進整数環
  • 量化記号消去
  • 整域から作られる体
  • 小さい体(素体)と大きい体(代数閉包)
  • 斜体

wed7931.hatenablog.com

*1:有限体上の拡大はすべてガロア拡大になる。

*2:これがガロア群?

*3:以下、次の本を指す。

はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで

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*4:素数に関する相互法則の一例

*5:本文では、既約元分解の一意性と書かれている。

*6:例:  6 = 2 \cdot 3 = (1+\sqrt{-5}) (1-\sqrt{-5})

*7:イデアル類群というアーベル群の元の個数

*8:素数  p \ge 3 \zeta_{p} = \cos (2 \pi / p) + \sqrt{-1} \sin (2 \pi / p) について、代数体  \mathbb{Q}(\sqrt{\zeta_{p}}) のこと

*9:この本に出てくるんだろうか?

数学の大統一に挑む

数学の大統一に挑む

外向きの評価と内向きの評価の変化

2018年9月4日発行の結城浩さん(@hyuki)のメルマガで、外向きの評価と内向きの評価について書かれていました。

これがとても印象的でこのようなツイートをしました。

この外向き/内向きの評価の図をもう少し細かく書いてみました。自分の経験をモデルに書いています。

内向きの評価が小さくなって、外向きの評価が急激に大きくなったことに、自分が耐えられなかったのかなということが見えてきました。

自分の状況を図や表にまとめると、自分のことがよく理解できるような気がします。

『数学ガール/ポアンカレ予想』を自分なりにまとめてみた

数学ガールポアンカレ予想を約5か月かけて読み終わりました。


頭の整理のために、第1章~第10章まで1章ごとにメモをブログに書いてきました。
例えば、第1章のメモはこちらから。

wed7931.hatenablog.com


数学ガール』シリーズの既刊5巻すべてを読んで、各章ごとの数学的内容は独立していて、非常にわかりやすく読みやすいと感じていました。

一方で、通読した後に各章の関連付けがどうなっているかがうまく整理できないことがありました。

というわけで、今回は通読後に各章の関連付けを整理しよう!と目標を立てて読みました。

自分なりにまとめてみた

この本を読むための目標設定を1つ立ててみて、それぞれの章の役割と関連付けてみたのが、下の図になります。 *1


目標設定をしてみる

この本を読むことの目的を、

  • (1) 今まで知っている幾何学を広げて、
  • (2) もっと広い幾何学を知って、
  • (3) ポアンカレ予想の主張を読み解いて
  • (4) 証明のアイディアに触れてみよう!

と設定してみました。

(1) 今まで知っている幾何学を広げて

中学・高校までで習う幾何学

の3つであると整理しました。

(2) もっと広い幾何学を知って

そこから先の幾何学(大学数学など)を

  • (a-2) (ユークリッド空間とは限らない)いろいろな空間
  • (b-2) やわらかい幾何学
  • (c-2) “同じような”図形をみつける

の3つと考えました。

そして、第1~6章と第8章は

  • (a-1)から(a-2)へ:計量と曲率
  • (b-1)から(b-2)へ:位相幾何学
  • (c-1)から(c-2)へ:位相不変量とその例(基本群が例の1つ)

を理解する役割があると見ました。

(3) ポアンカレ予想の主張を読み解いて

第6章で初めて提示され、第10章で再掲されるポアンカレ予想は、(2)に出てくる概念(図の(B)~(E))で読み解くことができます。

「理解する」というよりも「読み解く」がポイントです。

(4) 証明のアイディアに触れてみよう!

ポアンカレ予想証明のアイディアは、ハミルトンプログラムと呼ばれる考え方がポイントです。

その中に出てくる熱方程式の理解の助けとして、第7章と第9章の内容が使われています。

おわりに

この本を通じて、今まで苦手にしていた幾何学に歩み寄れた気がしました。

数学セミナー 2017年12月号』の特集でホモロジーについてもざっくり知ることができたので、大学数学の幾何学の初歩の初歩までは近づけたかなと思います。

wed7931.hatenablog.com

これを機会に、幾何学に対する否定的な先入観をなくして、数学を楽しみたいです!

*1:もちろん、いろいろな整理の仕方がありますので、これはあくまで私が作った一例にすぎません。

2018年9月19日で「7931のあたまんなか」開設から1周年!

2018年9月19日で当ブログ「7931のあたまんなか」をはてなブログに開設してから1周年になりました。

*1

前身の「7931のblog(仮称)」(ライブドアブログ)からカウントすると、ブログを書き始めて14年目になります。 *2


メンタル不調による休職中でも仕事をしている感覚を忘れないようにするため、意識して「書く」ということを続けるために、はてなブログにリニューアルしました。

数学のことや自分が考えたことなど、好きなことを書き連ねていますが、1日あたり100名以上の方に見ていただいています。

本当にありがとうございます!


まだ仕事への復帰の見通しは立ちませんが、リハビリを兼ねてこのブログを続けていこうと思います。

これからもよろしくお願いします!

*1:はてなブログさんからのメールを引用しました。

*2:前身のブログの内容は、当ブログに移行しています。

「それでも、人生は続く。」はまさにその通り! ~ 『一発屋芸人列伝』読書メモ

山田ルイ53世一発屋芸人列伝』の読書メモです。 *1

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝


一発屋と呼ばれる11組の芸人について、髭男爵山田ルイ53世の取材をもとに書かれた本。

この本の帯には「それでも、人生は続く。」と書かれている。
まさにその通り!と思える内容だった。


一発屋になる前にそれぞれの考え方で行動していて、一発の後もそれぞれの人生を生きている。
それも各人が三者三様であることがよくわかった。

芸人という厳しい世界の中でどう生きてきたかを読んで、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」という問いが、頭の中に常に浮かんでくる。

この本に書かれている人たちに共通するのは、自分の周囲の変化にどう対応してどう生きるかを真剣に考えているんだと思った。
これについても、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」。

山田ルイ53世さんのラジオや文章が好きで、お笑い番組が好きでこの本を読んだ。
それにしては、予想以上に考えさせられる本だった。


もちろん、お笑いネタのこともいろいろ書いてある。
どの芸人さんも(1人は存じ上げない芸人さんですが)、やっぱりおもしろいと再確認した。

特に、テツandトモは、数年前に地元の住宅展示場でのライブを見て、ものすごくおもしろかったことを思い出した。
テレビによく出ていた頃を知らない息子たちもすごく楽しかったようだ。

https://lh3.googleusercontent.com/zGN1EzQzPf1Bi0JpG-EfkVtXLmqLEI-l2RETpNcwQJ4rJJgignRXbdknufj_-juhjaWgOHORxtQ6k-nzvFMkTwFNSxzwrR0E2W_LlDxdDBr_HH7ZP_wX48u3B9rZAarEAuwEPN76b2EtM7M__U2Os5LE756tZBcdwLwMw6KOmrAs5w8RFlnde8zBPQ5eDd4GxqW4jcO_3wT4I5pRu4EIq-kqXeJSa8OZs365gTkRa45M3GvvSjpNk03bG-dFPwYilJrc9sdThWOR3EBMc_9KQVLwJCEd1Zy2MHBtiRgW_6kr_YsOXQd7HwTe0912FG02DaJGUWWBbgIDD7CyvCOgsAxh4F7MWkUmcshtfD1CcTqq3dMIpkWMdjaMhAhphRFNtH9tEkDZo_kRWgv1nvOyYFAijQn1RsR0ssykmI7t4uBXNbyg26uwhPsNRMw9xiLUiAbmM-W531i_SZ1gR1v-T3WvVdhBw5s-6JFrIexZFtp2f5p8PVi3yvRcyFja4jg5g8sMRIqAdH9R_oEzgH0iTrwNorSKRSDY2yF7S7rYQn7AWtZPB4bCrULiOjWOinX5SryeaDDPX9QXDAy5L2-6vCOiDnj8jeIBb5uVN06kBTMxPPyRdSSc5QjCK30g-eRT=w1170-h631-no

*1:ブクログにも同様の内容を記載しています。 booklog.jp

齋藤正彦『線型代数入門』の自分用インデックス

大学1年の線形代数学の講義での教科書は齋藤正彦『線型代数入門』でした。

線型代数入門 (基礎数学)

線型代数入門 (基礎数学)

当時は講義に追いつくのに必死でこの教科書をじっくり読んでいませんでした。

それから20年、ブックオフでたまたま見かけて、懐かしくて購入しました。

じっくり読んでみると、「今の方が理解できるなぁ」と過信してしまうほど、すいすいと読めました。

読みっぱなしではもったいないので、メモというか自分用のインデックスを作りました。

冗長にならないように書き方が正確ではない部分もありますので、ご認識ください。

第1章 平面および空間のベクトル

  • 高校数学で学ぶベクトルの基礎【§1~2】
  • 行列を使った線型変換:回転、折り返し、正射影【§3~4】
  • 行列式とベクトル積(外積)【§5】
  • 第2章 §7で、合同変換(直交変換と平行移動の合成)とアフィン変換が扱われている。
  • 第4章 §1の例1で、ベクトルの概念をある商集合として見直す。

第2章 行列

行列の基本変形と階数(ランク)【§4】

  • 基本変形の操作にあたる3種類の基本行列はすべて正則であることに注意。
  • 一次方程式系の拡大係数行列の左基本変形と係数行列の階数の関係【[5.1]】

内積とユニタリ行列・直交行列【§6】

  • 随伴行列:  A^* := {}^t \bar{A}
    •  (A \mathbf{x}, \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, {}^t \bar{A} \mathbf{y}) に注意。
  • エルミート行列:  A=A^*
    •  (A \mathbf{x}, \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, A \mathbf{y}) を満たす。
  • ユニタリ行列:  A^* A = E
    •  (A \mathbf{x}, A \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, \mathbf{y}) を満たす。内積を変えない。
  • 実行列の場合はそれぞれ転置行列、対称行列、直交行列。

いろいろな行列【問題】

  • 正規行列:  A^* A = A A^*
    • つまり、エルミート行列とユニタリ行列は正規行列。
  • 交代行列:  {}^t A = -A
  • 冪零行列:  \exists k \ \ \text{s.t.} \ \ A^k = O
  • 確率行列:各行の成分の和が1
  • 交換子積:  [ X,Y ] = XY-YX

第3章 行列式

  • 多重線型性かつ交代性を持つ関数は、定数倍を除いて行列式をとる写像 det に一致する。【定理[2.6]】
  • 行列の階数は、0でない小行列式の最大次数に等しい。【定理[2.10]】
  • 余因子展開【定理[3.1]】
  • クラメルの公式:係数行列が正則な一次方程式系の唯一解の記述【定理[3.5]】
  •  A \in M_n(\mathbb{Z}) が正則かつ  A^{-1} \in M_n(\mathbb{Z}) であることの必要十分条件 |A| = \pm 1 。【問題10】

第4章 線型空間

用語と記号など

  • 一対一写像単射、上への写像全射、一対一対応は全単射のこと。【§1】
  • 線型空間  \mathbf{V} の部分集合  \mathbf{S} から生成される部分空間は  \mathrm{Span} \ \mathbf{S} などと書く。【[4.2]】
  • 線型写像  T について、 T(\mathbf{V}) \mathrm{Im} \ T T^{-1}(\mathbf{o}') \mathrm{Ker} \ T なとど書く。【[4.4]】
  • 線型部分空間の直和  \mathbf{W}_1 \dot{+} \mathbf{W}_2 \mathbf{W}_1 \oplus \mathbf{W}_2 なとど書く。【[4.8]の前】
  • 線型写像  T に対する行列  A は表現行列と呼ばれる。【§5の冒頭】
  • 線型写像の階数は  \mathrm{rank} \ T  = \mathrm{dim}(\mathrm{Im} \ T ) と書かれる。【[5.1]の後】

線型空間の例

  • 斉次一次方程式系、隣接n項間漸化式、斉次線型微分方程式など【§2 例1~10】
    • 基底と次元の計算【系[3.11]の後】
  • 双対空間と双対基底【問題12】
  • 商空間【問題13】

線型空間の次元と基底

  • (1) 一次方程式系の理論での証明【[3.8]】
  • (2) 極大線型独立系を使った証明【[3.10]】
  • 基底の変換行列【§3の後半】

線型写像

  • 次元定理【[5.1]の後】
  • 行列の階数の特徴付け【[5.3]の後】
  • 基底変換による表現行列の変化: \exists \  P \  \text{正則 s.t.} \  B=P^{-1}AP【[5.3]の後】

 n 次以下の実係数多項式空間  \mathbf{P}_n (\mathbb{R}) の正規直交基底の例

第5章 固有値固有ベクトル

固有値と行列の対角化

  • 行列の対角化ができるための必要十分条件と構成方法【[1.2]'】
  • 行列の対角化が可能 ⇔ 各特性根の固有空間の次元=根の重複度【[1.4]】
  • 固有空間分解と漸化式および微分方程式の解の関係【§1 例8~9】
  • 可換な行列の和と行列の冪の固有値【[2.3]】

ユニタリ空間における正規変換の特徴【§2】

  • 可換な行列がユニタリ行列で同時上三角化可能な条件【[2.2]'】
  • 正方行列がユニタリ行列で対角化可能 ⇔ 正規行列【定理[2.4]'】
  • 正規変換のスペクトル分解(部分空間への射影子を利用)【[2.6]の後】
  • エルミート変換 ⇔ 固有値はすべて実数【系[2.8]】
  • ユニタリ変換 ⇔ 固有値はすべて絶対値1の複素数【系[2.8]】*1
  • 正値行列 *2 と半正値行列の特徴【[2.9]~定理[2.11]】

実計量空間における対称変換の特徴

  • 実計量空間では対称変換に着目して、§2と類似した結果を得る。【§3】
  • 実正規行列の実数の範囲内での標準形【§6】
  • 3次元空間での原点周りの回転(オイラー角)【§6】

二次形式、二次曲線、二次曲面【§4~5】

  • 実対称行列とそれを対角化する直交行列に注目する。

第6章 単因子およびジョルダンの標準形

  •  \mathbb{K} -係数の1変数多項式を成分とする正方行列を考える。本文ではこれを  x -行列と呼んでいる。
  • 基本変形によって、成分である多項式にある整除関係が成り立つ対角行列に変形する。【定理[1.2]】
  • ここから議論を進めて、任意の正方行列がジョルダン細胞の並べ方を除いてただ1つのジョルダン行列に相似であることを示す。【定理[2.2]】*3
  • 行列の冪を線型結合した多項式を考え、最小多項式の性質とハミルトン・ケイリーの定理を導く。【§3】

第7章 ベクトルおよび行列の解析的取扱い

行列値関数【§1】

  •  \mathbb{R} 上のある区間  I で定義された、 m \times n 型実行列をとる写像  A(t) = (a_{ij}(t)) を行列値関数という。
    • つまり、各  a_{ij}(t) I から  \mathbb{R} への関数。
  • 通常の関数と同じように極限や連続性が定義され、微分、さらにテイラー級数を考えることができる。

行列の冪級数とノルム【§2】

  • 行列  X の冪級数  \sum_{p=0}^{\infty} a_p X^p を考えることができて、  X固有値によって収束・発散がわかる。【§2 1°、定理[2.1]】
  • 指数級数  \exp \ X = \sum_{p=0}^{\infty} X^p / p! はすべての行列  X で収束する。さらに、対数級数や等比級数を考えられる。【§2 2°】
  •  \mathbb{R}^n にいろいろなノルムが入れられるように、  M_{m,n}(\mathbb{R}) にもノルムを入れることができ、解析学と同じような概念が考えられる。【§2 3°】

非負行列の性質【§3】

  • ペロン・フロベニウスの定理【定理[3.1]】
  • フロベニウス根【定理[3.3]】

『齋藤正彦 数学講義 行列の解析学』に詳細が書いてあった(2020/6/15追記)

齋藤正彦 数学講義 行列の解析学

齋藤正彦 数学講義 行列の解析学

  • 作者:齋藤正彦
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 単行本
この本の前半部分に、第7章を詳細に説明した内容が書かれていました。
その内容をメモしてみました。
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附録

附録1 多項式

附録2 ユークリッド幾何学の公理

附録3 群および体の公理

おわりに

大学4年で表現論を勉強することになり、線形代数をよく使うようになりました。

このときは佐武一郎『線型代数学』を参考にしていました。

線型代数学(新装版) (数学選書)

線型代数学(新装版) (数学選書)

時間があれば、この本についても自分用インデックスを書いてみようと思います。

*1:問題3に冪零行列、問題5に実交代行列の固有値の性質が書かれている。

*2:正定値行列とも言う。

*3:定理[2.2]の直前に書かれている「  n 次行列  A の特性行列  xE-A x -行列としての階数は  n である」がわかりませんでしたが、その前まではついていけました。