特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(後編)
『数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2018/09/12
- メディア: コミック
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7つのうち前半3つの記事のメモはこちらです。
今回は後半4つの記事のメモです。
有限体の不思議な森
原始根
円分多項式
準備
すべての有限体は で尽くされる
- に実数で根を持たない の根を添加して を構成したのと同様に、 を拡大して新しい有限体を作れる。
- ここで、どのような でも、任意の について 係数の既約な 次多項式 が存在することを使う。
- の根を に添加した体は 個の元を持つ有限体で と書く。
- 最小分解体の理論から 個の元を持つ有限体は に限られる。
- 逆に、任意の有限体は必ずある の拡大で、元の個数はその の冪となる。
- 以上により、すべての有限体は で尽くされる。
進数体をめぐる冒険 ― 進距離が紡ぎ出す甘美な世界
有理数体 に入る2つの距離による完備化で作られる体について説明されています。
2つの距離とその完備化の特徴について、次のポイントを挙げて整理しました。数学的に適切ではない記述についてはご容赦ください。
なお、素数 を1つ取って固定します。
ポイント
いろいろな体 ― 体のレベルをつうじて
整域から体を作る
整域から作られる体
- 商体(分数体): からその商体 が得られる。これは を部分環として含む最小の体である。
- の商体はローラン冪級数体 である。これは完備離散付値体で とともに数論では重要な研究対象になる。
- の商体として、 変数有理関数体 が得られる。これは 上の超越次元が の体になる。
小さい体の例:素体
体からさらに大きい体を作る
斜体:乗法が非可換な体
体のレベル
- 体 上の代数方程式 が解を持つような最小の自然数 を のレベルといい、 と書く。
- このような が存在しないときは と定める。
- なる体を形式的実体または実体といい、実体ではない代数体を総虚という。
- 【疑問】虚2次体と総虚の関係は?
- 有限体 や2次体 のレベルは のいずれかになる。
- 体のレベルは有限である限りは2の冪であり、逆に任意の2の冪をレベルに持つ体が存在する(フィスター)ので、さらに“大きい”体の存在が示唆されている。
*1:以下、次の本を指す。 はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで
*2:本文では、最初に を研究している。
*3:分解の型についての探求問題あり。【疑問】分割数やヤング図形と関係あり?
*4:通常は で表すもの
*5:コーシー列と合わせて考える。
*7: を使う。
*9:ぼやかして書いています。
*10:きちんとした定義は本文参照
*11:志村五郎『数学をいかに使うか』の第1章~第5章で、ハミルトンの4元数体の記載あり。いつかまとめる予定。
特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(前編)
『数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。
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大学数学科時代に体論やガロア理論の講義を受けましたが、十分に理解できないままでした。
卒業後に『数学ガール/ガロア理論』を読んで、ガロア理論や方程式の可解性をようやく理解しました。
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2012/05/30
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今回の特集を読むことで、有限体やp進数体などの概要がわかりました。
ここでは、特集内の7つの記事のうち、前半の3つの記事の内容をメモします。
体とはなにか
体の歴史
四則演算と変数の記号化との関係
- ヴィエトの業績
- 森田真生『数学する身体』の第二章 計算する機械 - 2 記号の発見 に関連した内容が書かれている。
- 作者: 森田真生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/04/27
- メディア: 文庫
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ガロア理論で体をみる
代数方程式の分解体とガロア拡大
代数体
- 代数体:代数方程式の根をいくつか添加して得られる の拡大体
- 整数や有理数の問題を、代数体に一般化して考えると有効なことがある。
単位円上の有理点を求める問題から広げて考える
問題1: を満たす有理数 を求めよ。
解法3の説明
問題3:整数 について、 を満たす は存在するか。
- これは問題2の一般化。なお、代数体 は虚2次体と呼ばれる。
- の場合は問題2とほぼ同様に解けるが、他の では同様に解けない場合がある。
- (1)のように、ある整数で割った余りのように簡単に特徴づけできない。
- の場合は、(2)が成立しない。 *6
「類数」という概念からの広がり
参考にした本
学生時代に代数学で主に使用した永尾汎『代数学』を参考にしました。
- 作者: 永尾汎
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 1983/04
- メディア: 単行本
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*3:以下、次の本を指す。 はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで
*5:本文では、既約元分解の一意性と書かれている。
*6:例:
*9:この本に出てくるんだろうか?
外向きの評価と内向きの評価の変化
2018年9月4日発行の結城浩さん(@hyuki)のメルマガで、外向きの評価と内向きの評価について書かれていました。
これがとても印象的でこのようなツイートをしました。
結城浩メルマガ感想。「外向き/内向きの評価」が胸に刺さった。学生時代は内向きの評価だけでよかったが、社会人になって外向きの評価を気にするようになった。それも急激に。自分はこれにうまく対応できなかったのかな。
— 7931 (@wed7931) September 4, 2018
結城浩メルマガ 2018/9/4 Vol.336|note(ノート) https://t.co/O3FTXO65dg pic.twitter.com/2CPuWmM1ga
この外向き/内向きの評価の図をもう少し細かく書いてみました。自分の経験をモデルに書いています。
内向きの評価が小さくなって、外向きの評価が急激に大きくなったことに、自分が耐えられなかったのかなということが見えてきました。
自分の状況を図や表にまとめると、自分のことがよく理解できるような気がします。
『数学ガール/ポアンカレ予想』を自分なりにまとめてみた
『数学ガール/ポアンカレ予想』を約5か月かけて読み終わりました。
頭の整理のために、第1章~第10章まで1章ごとにメモをブログに書いてきました。
例えば、第1章のメモはこちらから。
『数学ガール』シリーズの既刊5巻すべてを読んで、各章ごとの数学的内容は独立していて、非常にわかりやすく読みやすいと感じていました。
一方で、通読した後に各章の関連付けがどうなっているかがうまく整理できないことがありました。
というわけで、今回は通読後に各章の関連付けを整理しよう!と目標を立てて読みました。
自分なりにまとめてみた
この本を読むための目標設定を1つ立ててみて、それぞれの章の役割と関連付けてみたのが、下の図になります。 *1
目標設定をしてみる
この本を読むことの目的を、
と設定してみました。
(2) もっと広い幾何学を知って
そこから先の幾何学(大学数学など)を
の3つと考えました。
そして、第1~6章と第8章は
- (a-1)から(a-2)へ:計量と曲率
- (b-1)から(b-2)へ:位相幾何学
- (c-1)から(c-2)へ:位相不変量とその例(基本群が例の1つ)
を理解する役割があると見ました。
(3) ポアンカレ予想の主張を読み解いて
第6章で初めて提示され、第10章で再掲されるポアンカレ予想は、(2)に出てくる概念(図の(B)~(E))で読み解くことができます。
「理解する」というよりも「読み解く」がポイントです。
(4) 証明のアイディアに触れてみよう!
ポアンカレ予想の証明のアイディアは、ハミルトンプログラムと呼ばれる考え方がポイントです。
その中に出てくる熱方程式の理解の助けとして、第7章と第9章の内容が使われています。
おわりに
この本を通じて、今まで苦手にしていた幾何学に歩み寄れた気がしました。
『数学セミナー 2017年12月号』の特集でホモロジーについてもざっくり知ることができたので、大学数学の幾何学の初歩の初歩までは近づけたかなと思います。
これを機会に、幾何学に対する否定的な先入観をなくして、数学を楽しみたいです!
*1:もちろん、いろいろな整理の仕方がありますので、これはあくまで私が作った一例にすぎません。
2018年9月19日で「7931のあたまんなか」開設から1周年!
2018年9月19日で当ブログ「7931のあたまんなか」をはてなブログに開設してから1周年になりました。
前身の「7931のblog(仮称)」(ライブドアブログ)からカウントすると、ブログを書き始めて14年目になります。 *2
メンタル不調による休職中でも仕事をしている感覚を忘れないようにするため、意識して「書く」ということを続けるために、はてなブログにリニューアルしました。
数学のことや自分が考えたことなど、好きなことを書き連ねていますが、1日あたり100名以上の方に見ていただいています。
本当にありがとうございます!
まだ仕事への復帰の見通しは立ちませんが、リハビリを兼ねてこのブログを続けていこうと思います。
これからもよろしくお願いします!
「それでも、人生は続く。」はまさにその通り! ~ 『一発屋芸人列伝』読書メモ
- 作者: 山田ルイ53世
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/05/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (10件) を見る
一発屋と呼ばれる11組の芸人について、髭男爵・山田ルイ53世の取材をもとに書かれた本。
この本の帯には「それでも、人生は続く。」と書かれている。
まさにその通り!と思える内容だった。
一発屋になる前にそれぞれの考え方で行動していて、一発の後もそれぞれの人生を生きている。
それも各人が三者三様であることがよくわかった。
芸人という厳しい世界の中でどう生きてきたかを読んで、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」という問いが、頭の中に常に浮かんでくる。
この本に書かれている人たちに共通するのは、自分の周囲の変化にどう対応してどう生きるかを真剣に考えているんだと思った。
これについても、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」。
山田ルイ53世さんのラジオや文章が好きで、お笑い番組が好きでこの本を読んだ。
それにしては、予想以上に考えさせられる本だった。
もちろん、お笑いネタのこともいろいろ書いてある。
どの芸人さんも(1人は存じ上げない芸人さんですが)、やっぱりおもしろいと再確認した。
特に、テツandトモは、数年前に地元の住宅展示場でのライブを見て、ものすごくおもしろかったことを思い出した。
テレビによく出ていた頃を知らない息子たちもすごく楽しかったようだ。
*1:ブクログにも同様の内容を記載しています。 booklog.jp
齋藤正彦『線型代数入門』の自分用インデックス
大学1年の線形代数学の講義での教科書は齋藤正彦『線型代数入門』でした。
- 作者:齋藤 正彦
- 発売日: 1966/03/31
- メディア: 単行本
当時は講義に追いつくのに必死でこの教科書をじっくり読んでいませんでした。
それから20年、ブックオフでたまたま見かけて、懐かしくて購入しました。
じっくり読んでみると、「今の方が理解できるなぁ」と過信してしまうほど、すいすいと読めました。
読みっぱなしではもったいないので、メモというか自分用のインデックスを作りました。
冗長にならないように書き方が正確ではない部分もありますので、ご認識ください。
第1章 平面および空間のベクトル
第2章 行列
いろいろな行列【問題】
- 正規行列:
- つまり、エルミート行列とユニタリ行列は正規行列。
- 交代行列:
- 冪零行列:
- 確率行列:各行の成分の和が1
- 交換子積:
- ヤコビの恒等式:
第3章 行列式
第4章 線型空間
用語と記号など
線型空間の次元と基底
- (1) 一次方程式系の理論での証明【[3.8]】
- (2) 極大線型独立系を使った証明【[3.10]】
- 基底の変換行列【§3の後半】
線型写像
- 次元定理【[5.1]の後】
- 行列の階数の特徴付け【[5.3]の後】
- 基底変換による表現行列の変化:【[5.3]の後】
第5章 固有値と固有ベクトル
固有値と行列の対角化
ユニタリ空間における正規変換の特徴【§2】
実計量空間における対称変換の特徴
- 実計量空間では対称変換に着目して、§2と類似した結果を得る。【§3】
- 実正規行列の実数の範囲内での標準形【§6】
- 3次元空間での原点周りの回転(オイラー角)【§6】
二次形式、二次曲線、二次曲面【§4~5】
- 実対称行列とそれを対角化する直交行列に注目する。
第6章 単因子およびジョルダンの標準形
第7章 ベクトルおよび行列の解析的取扱い
行列値関数【§1】
行列の冪級数とノルム【§2】
非負行列の性質【§3】
- ペロン・フロベニウスの定理【定理[3.1]】
- フロベニウス根【定理[3.3]】