7931のあたまんなか

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ホモロジーがおもしろかった!(前編)/『数学セミナー 2017年12月号』読書メモ

数学セミナー 2017年12月号』の特集は「ホモロジーがおもしろい!」でした。

学生時代にホモロジー論の講義を受けましたが、あまりにも理解できずに途中で脱落しました。知っていることは、アーベル群の知識を使うことくらい。断片的すぎますね。
ですが、この特集を読んで、ホモロジーってこういうものだったんだ!とわかり、知識が増えてうれしくなりました。

この記事では、自分が理解した内容をメモしていきます。

ホモロジーでは「図形のつながり方」を調べる

高校までのユークリッド幾何学では、合同や相似によって変わらない図形の性質(長さ、面積、角度など)を調べました。

もう1つの幾何学の分野である位相幾何学トポロジーでは、図形をゴム膜のようにぐにゃぐにゃと変形したときに保たれる図形の性質を調べます。
その性質の1つが「図形のつながり方」です。

例えば、「輪ゴム」をぐにゃぐにゃと変形させても「1本のゴム紐」にはならないので、位相幾何学ではこの2つは別の物と考えます。
「球面」と「ドーナツの表面」(数学ではトーラスという)も別の物です。

これをもう少し進めて、

  • 輪ゴムにはさみを入れて、チョキンと切る
  • 球面にはさみを入れて、ぐるっと一回りの線(閉曲線)でチョキチョキと切る

という作業をして、

  • つながったままか
  • 2つの部分に分かれてバラバラになるか

を調べることにします。

よく調べてみると、

  • 球面は、どんな閉曲線で切ってもバラバラになる
  • トーラスは、閉曲線の取り方によって、つながったままか、バラバラになるかが変わる

ことがわかります。

このように、与えられた図形にはさみを入れてもつながったままの状態になる閉曲線の取り方が本質的に何本あるか?を、図形のつながり方を表していると考えて調べるのがホモロジー論のスタートです。

なお、ここまでの内容については、佐野さんが以下のブログでわかりやすく書かれていますので、ぜひご覧ください。

taketo1024.hateblo.jp

ホモロジー群を使って閉曲線の取り方を計算する

上記の「閉曲線の取り方が本質的に何本あるか」を表すのがホモロジー群です。
詳細は『数学セミナー 2017年12月号』や数学書を見ていただくとして、ホモロジー群の導入のイメージを書いておきます。

図形を簡単な図形に分割して、形式的なアーベル群を作る

  • 図形  X をいくつかの単体(0次元単体:点、1次元単体:線分、2次元単体:三角形、3次元単体:四面体など)に分割する。
  • 分割したもののうちで、  q 次元の各単体  \{\sigma_{i}\}_{i=1}^{r} を基底とする自由アーベル群を  q 次元鎖群  C_{q}(X) := \bigoplus_{i=1}^{r} \mathbb{Z} \sigma_{i} と定義する。

図形の境界を取る写像を定義する

  •  q 次元の図形に対してその境界に現れる  q-1 次元の図形を対応させる準同型写像  \partial_{q}: C_{q}(X) \to C_{q-1}(X) (境界作用素)を考える。
  •  C_{q}(X) の部分加群として、次の2つを考える。
    •  q 次元輪体群  Z_{q}(X) := \mathrm{Ker}(\partial_{q})
    •  q 次元境界輪体群  B_{q}(X) := \mathrm{Im}(\partial_{q+1})

ホモロージー群を定義する

  • また、  \partial_{q} \circ \partial_{q+1} = 0 がわかる。これは、 「  q+1 次元の図形の境界は、境界のない  q 次元の図形である」ことを表している。
  • これより、  B_{q}(X) \subset Z_{q}(X) \subset C_{q}(X) がわかるので、図形  X qホモロジー群を  H_{q}(X) := Z_{q}(X)/B_{q}(X) で定義する。

ホモロジー群の幾何学的解釈を考える

  •  Z_{q}(X) は「境界のない閉じた  q 次元の図形の集まり」と言える。
  •  B_{q}(X) は「  q+1 次元の図形の境界となる図形の集まり」、つまり「境界のない閉じた  q 次元の図形のうちで、本質的に穴でないものの集まり」と言える。
  • 商群  Z_{q}(X)/B_{q}(X) は「  Z_{q}(X) において  B_{q}(X) を無視して得られる群」なので、ホモロジー H_{q}(X) は「境界のない閉じた  q 次元図形のうちで、本質的に穴であるものの集まり」とみなせる。

なお、『数学セミナー』では、円周  S^1ホモロジー群の具体的な計算が説明されています。

まとめ

これまでに書いた内容が、ホモロジー群の初歩になるかと思います。
私なりの理解でまとめましたので、誤りなどありましたら、ご指摘いただけると幸いです。

ホモロジー群について、学生時代よりは多くのことがわかるようになりました。
これで幾何学に対する壁は少し低くなったかと思います。

なお、『数学セミナー』ではこれ以外のトピックも書かれています。
興味がある内容がいくつかありましたので、後編としてまとめようと思います。