7931のあたまんなか

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ホモロジーがおもしろかった!(後編)/『数学セミナー 2017年12月号』読書メモ

数学セミナー 2017年12月号』のホモロジーに関する特集についての読書メモの後編です。

前編では、以下の内容を説明しました。

wed7931.hatenablog.com

この記事では、印象に残ったホモロジーの応用例(ホモロジーを使ってデータの形を捉える)についてを中心に、自分が理解した内容を説明します。

ホモロジーを使ってデータの形を捉える

データの形をとらえる1つの方法は相関関係

例えば、2次元のデータをxy平面に散布図としてプロットして、データがどのように分布しているかを調べることを考えます。

1つの調べ方として、相関関係を調べるという方法があります。
プロットされたデータの「見た目」で、正もしくは負の相関がありそう、もしくは相関がなさそうということがわかります。
数学的に判断しようとすると、相関係数を計算してすることになります。
(※データ分析は得意ではないので、正しくないかもしれませんが…)

相関関係以外のデータの形を数学的にとらえる

「見た目」ということに着目すると、

  • データがいくつかのかたまりに分かれている。
  • データが円状に分布している。

など、相関関係や相関係数という概念では表現できないことがあります。

このような分布を数学的に分析できるようにするために、パーシステントホモロジーという概念を使います。

データを膨らませてみる

パーシステントホモロジーのアイディアは、プロットされた各点にある半径の球rを描き、データを「膨らませる」ことです。

rが十分小さいと、元のプロットしたデータを見ているのと変わりません。
rを徐々に大きくすると、データ間がつながってきます。
rを十分大きくすると、すべてのデータがつながった状態になります。

【ここからは、自分はよくわかっていません】
このrの増大列に応じて、データのつながりを示すČech(チェック)複体と呼ばれる単体複体の増大列(フィルトレーション)が得られます。
フィルトレーションの一般論を用いて、パーシステントホモロジーを構成します。
これにより、rを大きくしてつながったデータによってできる「穴」の大きさがわかるということのようです。

クイーバーの表現論

パーシステントホモロジーをクイーバー(Quiver)の表現論を用いて拡張することについても書かれています。

クイーバーの表現とは、有向グラフの頂点と有向辺にそれぞれベクトル空間と線形写像を割り当てたものです。

クイーバーの表現…どこかで聞いたことがあるなぁと思って調べると、代数系かつ表現論というゆるいくくりで一緒に勉強していた、修士課程時代の同期の修士論文のテーマでした。

意外なところにホモロジーにつながるネタがありました。

コホモロジーホモロジーの双対的な概念

滑らかな多様体  M 上の  kド・ラームコホモロジー H_{\mathrm{DR}}^{k}(M) M k 次特異ホモロジー  H_{k}(M) のベクトル空間としての双対空間を  H_{k}(M)^{*} とします。
(詳細はかなり省いています)

このとき、  H_{\mathrm{DR}}^{k}(M) H_{k}(M)^{*} がベクトル空間として同型であることが、ド・ラームの定理の主張です。

 H_{\mathrm{DR}}^{k}(M) を定義するのに必要なものは、微分形式と外微分作用素および線積分です。つまり、解析的に定義されるものです。
一方、  H_{k}(M)幾何学的に定義されたものです。
つまり、多様体上の解析学トポロジーを結び付ける重要な結果…だそうです。

おわりに

今回の連載を読んで、ホモロジー(だけでなく幾何学)にとっつきやすくなったように思えます。
コンピュータでの計算の実装も進んでいる分野のようなので、興味を持ってみていきたいと思います。

なお本連載には、Stiefel-Whitney類やポアンカレ双対性、交叉形式、サーストンノルムについても書かれています。