『数学セミナー 2018年6月号』の特集は「複素関数の質問箱」です。
複素関数は学生時代に講義を通して勉強しましたが、理解不足で終わってしまった分野です。
印象として残っているのは、実関数とは違って複素関数は「定義域内のある部分集合上での性質がわかれば定義域全体での関数の様子がわかる」ということでした。ですので、今回の特集で改めて複素関数を知ることができると期待しています。
この特集の7つの記事のうち、最初の2つの記事を読みましたので、その内容をまとめます。
「複素数ってそもそも何なの?」(須川俊幸さん)
複素数の定義と様々な特徴づけについて書かれています。
「複素数は存在するか?」
上のような特徴づけから、「実数が存在するのであれば、それと同時に複素数も存在する」と答えられるのではないかと述べられています。
奇しくも、2018年6月号の発売直前に次のようなブログを書きましたので、興味があればご覧ください。
wed7931.hatenablog.com
「複素関数論の中の実関数」(中村弥生さん)
この記事では、複素関数の特徴的な性質と複素関数に拡張したことで見えてくる実関数の性質について書かれています。
実関数を複素関数に拡張することの例として、 の導出を扱っています。また、この式から三角関数の加法定理が得られます。
初等超越関数と特殊関数
本文中で説明されている関数についてのいくつかの用語を挙げます。
- 解析関数(または正則関数)
- 収束するべき級数で定義される関数(例: )
- 初等関数
- 代数関数、指数関数、三角関数、対数関数たちの線形結合、積、商、合成関数、逆関数をとる操作で得られる関数
- 初等超越関数
- 初等関数のうち、特に代数関数ではないもの
楕円積分と楕円関数
不定積分が初等超越関数で表せない例として、楕円積分(例: )とそこから得られる楕円関数が説明されています。*5
特殊関数
特殊関数について、ガンマ関数 、ゼータ関数 、超幾何関数が挙げられています。実関数との関係として、次のことが説明されています。
複素関数では という関数の での振る舞いが大きな興味の対象だそうです。
実関数ではテイラー展開がありましたが、複素関数では負べきの項も込めたべき級数展開であるローラン展開が扱われます。展開の中心点について、負べきの項の個数によって次のような名前が付けられます。
- 極
- 負べきの項が有限個
- 真性特異点
- 負べきの項が無限個
- 除去可能特異点
- 負べきの項がない
また、 次の項の係数を留数と呼びます。留数解析という言葉があるほど重要な数です。
感想
2つ目の記事にある無限遠点の考え方が初めて理解できました。
無限遠点というものがあることは知っていましたが、なぜそれを考える必要があるかがわかっていませんでした。
「原点からの離れ方は偏角に応じて無数にあるが、最終的に行き着く先を方向の概念を持たない無限遠点という1点とする」。
これが理解できたのが大きいです。
続きの記事の内容
複素微分と複素積分、正則関数の性質、複素対数関数の多価性、解析接続と続きます。
まずは正則関数の性質まで読むのを目標としたいと思います。