『数学セミナー 2018年6月号』の特集「複素関数の質問箱」をようやく読み終わりました。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2018/05/11
- メディア: 雑誌
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複素関数は数学科の講義でコーシー・リーマンの方程式くらいまではなんとかついていけました。しかし、複素積分や正則関数の性質などはよくわかりませんでした。
今回のまとめでは、当時よくわからなかった部分に入っていきます。
なお、前回のまとめはこちらです。
複素積分について
「複素積分とはなんですか.ふつうの積分とはどう違うのですか.」(村田玲音さん)のまとめです。
複素積分の定義
複素積分の定義を、実関数の定積分(リーマン和の極限)と対比した形で説明している。ポイントは以下の3点。
- 複素関数の場合は、始点と終点を結ぶ経路の取り方が無限にあるため、始点と終点だけでは積分値が一意に決まらない場合がある。
- 経路の取り方によらず積分値が決まれば、実関数の定積分のように扱える。
- その場合、実関数の微分積分学の基本定理と同様の結果が得られる。
正則関数のきれいな性質
「正則関数の“綺麗”な性質はなぜ…」(大野泰生さん)のまとめです。
実関数と似た性質と複素関数の個性的な性質
正則関数が持つ次の性質は、微分可能な実関数と似ている。つまり、実関数の自然な拡張として複素関数の正則性が定義されていて、その性質が受け継がれていると言える。
- 領域 上の正則関数は 上で連続である。
- 正則関数の和差積商(商は分母に注意)も正則関数である。つまり、 上の正則関数全体は環をなす。
- 微分についての線形性、ライプニッツ則(積の微分)、連鎖律が成り立つ。
次の性質は複素関数の個性的な特徴である。
なぜ個性的な性質が現れるか
複素関数 が正則であるとは、商 が のとき極限値を持つことであることを思い出すと、次のようなことがわかる。
- 商の分子と分母は実2次元。ふつうは2次元ベクトルで割ることは定義されないが、複素数と考えれば割ることができる。
- を に近づける方法は無限にあるが、あらゆる近づき方を通じて極限値は一意に定まることを表している。
つまり、正則関数は非常に強い制限がかけられた厳選された関数であると言える。そのため、個性的な特徴が現れると考えられる。
おわりに
個人的に勉強になったのは、以下の点でした。
- 複素積分を実積分と対比して説明していて、とても見通しがよかった。
- 正則関数が厳選された関数であるということが新しく理解できた。
- 実関数は1次元で複素関数は2次元というように、単に次元が上がっただけではなく、複素数という著しい特徴が重要だということに気付いた。
次回は、特集の最後の2つの記事に書かれている複素対数と解析接続をまとめる予定です。
*1:本文の例では、 。
*2:関連してこのような記事を書きました。 wed7931.hatenablog.com