7931のあたまんなか

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特集「複素関数の質問箱」まとめ(その4)~『数学セミナー 2018年6月号』読書メモ

数学セミナー 2018年6月号』の特集「複素関数の質問箱」のまとめの最終回です。

テーマは複素対数解析接続です。

今回の記事を読んで、数学的内容の理解は十分にできたとは言えませんが、数学の考え方のおもしろさが印象に残りました。

なお、前回のまとめはこちらです。

wed7931.hatenablog.com

複素対数の多価性

「複素対数とは何か パラドックスをこえて」高瀬正仁さん)のまとめです。

話の始まりは、実定数  a に対して実変数  z をもつ指数関数  a^z です。

さまざまな  a に対して  a^z がどのような値を取るかについて、オイラーの考察をたどる形で書かれています。

具体的には、次のような考察です。

  •  a が正数の場合は、現代の高校数学で学習する内容である。
  •  a=0 の場合は、 z の正負によって値を定義した。
  •  a が負数の場合は、状況が変わってくる。
    • 例えば、 a=-2 のときは  (-2)^{-2}=\frac{1}{4}, \ (-2)^{-1}=-\frac{1}{2}, \ (-2)^{0}=1, \ (-2)^{1}=-2 のように、正負の数が交互に出てくる。
  • さらに、  a が負数で  z有理数とすると、  a^z は実数になったり虚数になったりする。  z無理数の場合はさらに難しい。

書き換えると、(  a が正数のときと同様に考えた)対数関数  z= \log_{a} y の性質を考察したということになります。

ベルヌーイの考察を合わせて、「どの数  b にも無限に多くの対数  x= \log b (底は  e )が存在する」という結論に達しました。

現代ではこのような性質を「対数関数は多価関数である」と言いますが、当時はオイラー自身も受け入れがたいものだったようです。

その原因が「対数はただひとつしかない」という想定があったためだと書かれています。

この記事の最後では関数の多価性について、次のような記述があります。私はこの2つの記述が非常に印象に残りました。

今日の数学の語法では複素対数ははじめから無限多価関数として定義される(略).あるいはまた,まず切れ目の入った複素平面上で一価関数として定義し,それから解析接続を経て対数関数のリーマン面を構成するのも有力な手段であり,1価性がこれで回復する.だが,1価性に寄せるこだわりは何に由来するのであろうか.

複素対数関数の無限多価性を目の当たりにしていぶかしく思うのは,今日の関数概念で課されている1価性の印象が強いために,多価性を拒絶したい心情へと誘われるからである.だが,関数の本来の姿は多価性において現れるのである.

解析接続について

「解析接続の意味と意義について」(小山信也さん)のまとめです。

話の始まりは、   \displaystyle 1 - s + s^2 - s^3 + \cdots = \frac{1}{1+s} という式です。

左辺は  |s| < 1 のときのみ収束するのに対して、右辺は  s \neq 1 で定義されます。

そこで、「両辺は関数としては等しいのに、両辺の定義域が異なるのはどういうことか?」という疑問が出てきます。

そのために  s を実数から複素数に広げて考えると、解析接続により「左辺と右辺は1つの関数を異なる表示法で表したものである」と考えることができます。

詳しくは下の手書き資料で説明します。

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記事の中では、「すべての自然数の和  1+2+3+\cdots \displaystyle - \frac{1}{12} になる」*1という有名な式の意味が解析接続を使って説明されています。

また、解析接続されない例として、すべての素数の和を考えることを通して書かれています。なお、本文で考えた「関数」で考察すると、和は無限大に発散すると結論されています。

そして、次の3つのことで締めくくられています。

  • どちらの和も  L 関数の具体例である。
  • 乗法的な生成元である素数を加法的に扱うことの難しさ
  • 自然数全体の和は有限値(  -1/12 )なのに、この和から項を減らした素数全体の和は無限大になる。数の大小よりも、自然数全体や素数全体の集合がどんな意味があるかが重要なのでは?

個人的には、自然数全体の和は有限値なのに、この和から項を減らした素数全体の和は無限大になる」ことの意味が気になります。

おわりに

これまで全4回の記事で、複素関数をおさらいしました。

私にとって、複素関数は言葉は聞いたことがあるものの、その意味や主張がわからなかったものが多い分野でした。

証明はほとんど追えていませんが、どういう問題意識からスタートしたかがわかっただけでも収穫でした。

*1:オイラーは冒頭の式とそれを微分した式に  s=1 を代入したものを使って計算したようです。