7931のあたまんなか

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『数学ガール/ポアンカレ予想』第10章 読書メモ

数学ガールポアンカレ予想』第10章の読書メモです。これが最後の章になります。


第10章のタイトルはポアンカレ予想

この本のタイトルであるポアンカレ予想を読み解きます。

これまでの幾何学を中心とした数学の準備がどのように結実するかが楽しみです。


なお、第9章の読書メモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com



【目次】

第10章のキーワード

ポアンカレ予想の主張からわかること

フェルマーの最終定理の主張は小学生でも十分に理解が可能ですが、これに比べるとポアンカレ予想の主張は少し難しいです。

でも、仮定と結論を正しく読み取れれば、3次元閉多様体の判定 *1 ができることがわかると書かれています。

このような主張の読み取りは、高校で習う必要条件や十分条件の練習問題として使えるのではないかと思いました。 *2

ペレルマンによるポアンカレ予想の証明と物理との関係

ポアンカレ予想ペレルマンにより肯定的に解決されました。

証明のいくつかのポイントは本文に書かれています。(サーストンの幾何化予想やハミルトンプログラムなど)

その証明の中では、リッチフロー方程式が使われています。

本文によると、次のように言えるようです。

  • 物理学の熱方程式に対応するものがリッチフロー方程式
  • 熱方程式の温度に対応するのが、リッチフロー方程式のリーマン計量(から計算されるリッチ曲率)

一見して無関係のように思えますが、本文を読んでいると「なるほど…」という気分になりました。

特に、曲率と温度の均一化をイメージさせる表現がある次の部分が印象的です。

  • 355ページ
  • 364ページ~367ページ
  • 376ページ

自分の修士論文も物理と関係があるらしい。

最近のTwitterのTLを見ていると、「私の修士論文の内容も物理との関係がありそう」ということがわかってきました。具体的には水素原子の挙動に関係するようです。

wed7931.hatenablog.com

いずれはその関係を理解してみたいと思い、関係するツイートをTwitterモーメントに集めています。

twitter.com

数学の論文検索はMathSciNetしか知らなかった

数学科の学生時代('00年代前半)は、論文検索でMathSciNetをよく使っていましたが、arXivは知りませんでした。

MathSciNetとarXivについては以下のサイトに詳しく書かれています。

blog.livedoor.jp

詳しい数学がわからなくても論文は「読める」

自分の場合、細部にこだわって数学書や論文を読む傾向があります。

本文で説明されているペレルマンの論文の「読み方」はとても参考になりました。

《知らないふりゲーム》の具体例がわかりやすい

数学ガール』シリーズでは、《知らないふりゲーム》がよく出てきます。

本文に書かれている例が非常にわかりやすいと感じました。

ただの集合にどんな構造を入れると、何が議論できるかをまとめておきます。

  • 位相を入れる → 連続性や連結性が議論できる
  • 多様体 → 次元
  • 微分多様体微分、接空間
  • リーマン計量(リーマン多様体にする) → 距離、角度、曲率

最初のポアンカレ予想ホモロジー群を使ったものだった

ポアンカレ予想変遷は、数学セミナー 2018年9月号』の特集「間違いから発展した数学」でも取り上げられていました。

おわりに

数学ガールポアンカレ予想』の全体まとめとして書く記事で説明する予定です。

*1:分類ではないことに注意!

*2:数学でよく使われる、主張の強い/弱いなどの表現を含めて。