7931のあたまんなか

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『現代解析の基礎 直観⇔論理』読書メモ (第7章)

昨年末まで『現代解析の基礎 直観⇔論理』(荷見守助・堀内利郎 著)の第6章まで読んでいました。

現代解析の基礎―直観から論理へ 論理から直観へ

現代解析の基礎―直観から論理へ 論理から直観へ


第6章までには、1変数関数の微積分が書かれています。

wed7931.hatenablog.com

今回のテーマは2変数関数の微積

最後の第7章のテーマは2変数関数の微積です。

多変数関数の微積分を大学時代に勉強したときには、計算の仕方の理解を優先し、理論的な裏付けは後回しにしていた記憶があります。
特に、重積分や線積分は理解が追い付いていませんでした。

微積分を振り返るために手に取ったこの本では、理論的な裏付けがとても詳細に書いてある印象を持ちました。
その分、具体的な計算は練習問題に回っています。


ちなみに、学生時代に指定された教科書(以下の2冊)は具体的な計算に重きを置いている印象です。 *1

微分 改訂版

微分 改訂版

積分 改訂版

積分 改訂版

第7章 - 2変数関数の微分積分

 \mathbb{R}^2 上の集合と2変数関数
  • ベクトルの性質
    • 本文中では平面ベクトルを扱っているが、一般の  n 次元空間でも成り立つ。
  • 座標平面内の部分集合の性質と各種定義
    • 集合の内部、外部、境界など
    • 開集合と閉集合の定義、連結性など
  • 連続な2変数関数の性質
2変数関数の偏微分
  • まずは方向微分偏微分可能性を定義し、次に座標軸方向の偏微分を定義する。
  • 次の定理が成り立つ。(定理4)
    •  f を開集合  D \subset \mathbb{R}^2 上で定義された偏微分可能な関数とする。もし偏導関数  f_x(x,y), \ f_y(x,y) が連続ならば、任意の方向  \mathbf{u}=(\alpha,\beta) \neq 0 に対して偏導関数  f_{\mathbf{u}} が存在し、  f_{\mathbf{u}} (x,y) = \alpha f_x (x,y) + \beta f_y (x,y) が成り立つ。したがって、   f_{\mathbf{u}} も連続である。
  • 1変数と同様に、高階の偏導関数が定義できる。
  • 偏微分の順序交換が可能(つまり、  f_{xy}=f_{yx} )なのは、  f_{xy} f_{yx} がどちらも連続な場合である。(定理8)
  • 2変数関数のテイラーの公式では、2通りの剰余項の表し方が書かれている。
偏微分の応用
  • 3次元空間内の曲面  \{(x,y,z) \in \mathbb{R}^3 \ | \ z=f(x,y) \} 上の点における接平面と法線
  • 接平面の方程式の導出過程を反省し、関数  f の全微分可能性と傾き  \mathrm{grad} \ f = (f_x, f_y) を定義する。
    •  \mathbf{p} \in \mathbb{R}^2 に対して、  (\mathrm{grad} \ f)(\mathbf{p}) は曲面の最大傾斜の方向を表し、これに直交する方向は等高線が走る方向になる。
  • 陰関数定理
  • 極値問題
  • ヤコビ行列とヤコビアン
2変数関数の重積分
  • 2次元閉区間の分割とリーマン和を使って、重積分を定義している。
    • 7ページにわたって細かく丁寧に説明されている。私がこれまでに見た本の中では非常に細かい。
  • 有界な平面図形の面積の測り方
    • これも精緻な議論をしている。ジョルダン可測の定義など。
  • 積分可能条件
    • 不連続点の集合の面積が0の関数は積分可能である。(定理23)
    • ルベーグ積分を意識した書き方?
  • 変数変換(定理24)
    • ヤコビアンや陰関数定理などを使った精緻な議論をしている。
    • 極座標変換では、逆写像が1価にならないために局所座標を入れている。(例11)
  • 広義積分
    • 例13~14に出てくる  J, \ B, \ \Gamma はそれぞれガウス積分、ベータ関数、ガンマ関数と呼ばれる。
積分

まとめ

ざっくりとした理解で終わっていた部分なので、とてもいい復習になりました。

紙とペンを使いながら読む形はとれませんでしたが、微積分で困ったときはこの本に立ち返ろうと思わせてくれる本でした。

ブックオフで100円のたまたま見つけた本でしたが、非常にいい買い物をしました!

*1:ここでは改訂版を紹介していますが、私の学生時代はまだ改訂版は出ていませんでした。