7931のあたまんなか

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特集「幾何の概念のアイデア」~『数学セミナー2018年12月号』読書メモ その2

数学セミナー 2018年12月号』の特集は「幾何の概念のアイデアです。

前回のまとめ記事はこちらです。

wed7931.hatenablog.com

今回は、6個の記事のうち中盤の2個のメモを紹介します。

ファイバー束

キーワード

ファイバー束の概念
  • 空間の族や、各点ごとに値域が変わるような一般化された関数を記述するための1つの手法
ファイバー束
  • いわば、「ねじれた直積」を記述する手法
  • ファイバーと局所自明化
ファイバー束の例
  • (1) アニュラス
    • 直積空間であり、大域的な自明化が成り立つ積束の例でもある。
  • (2) メビウスの帯
  • (3) ホップ束
    • 複素射影直線  \mathbb{C}P^1 = \mathbb{C} \cup \{ \infty \} と2次元球面  S^2 の同一視
    • 1点コンパクト化 *1
  • (4) 主  U(1) -束
    • ホップ束の一般化
ファイバー束の構造群
  • 複数のファイバー束の関連を考えるための概念
  • 変換関数
  • 例:ベクトル束、接束、主束
ファイバー束の切断
  • 各点ごとに取る値の空間が変わるような一般化された関数を記述する手法
  • 例:滑らかな多様体上の連続ベクトル場
ファイバー束の分類問題
  • 引き戻し、分類空間、分類写像

イメージしやすいアニュラスとメビウスの帯

今回の連載で、初めてファイバーという概念を知りました。

本文にはアニュラスやメビウスの帯を平行や垂直に切った図が書かれていて、ファイバーの定義と照らし合わせて考えると、非常にわかりやすいのが特徴でした。

私としては、ホップ束や構造群を図としてイメージするのは難しかったですが、数式で追いかけるのはそれほど難しくありませんでした。

接空間をすべて集めた集合の意味合いがわかった

多様体を勉強していくと、滑らかな多様体  M の各点  p \in M における接空間  T_p(M) をすべて集めた集合  TM = \bigcup_{p \in M} T_p M というものが出てきます。

これまで、  TM という集合がどのような場面で使われるかがわからず、なかなか理解しがたいものでした。

ファイバーという概念を「各点ごとに値域が変わるような一般化された関数を記述するための手法」と認識することで、理解を進めることができました。

コホモロジー

キーワード

特異単体とチェイン
  • 標準  k 単体  \Delta^k
    •  \Delta^k = \{ (x_i, \dots, x_k) \in \mathbb{R}^{k+1} \ | \ 0 \le x_i , \ \sum_{i=0}^{k} x_i = 1 \}
  • 特異  k 単体
  • (特異)  k チェイン
    • 特異  k 単体の  \mathbb{R} -係数の形式的な線形結合
    • 特異  k チェイン全体の集合を  C_k(M) と書く。
特異コチェインの性質
  • (特異)  k コチェイン
    •  C_k(M) から  \mathbb{R} への線形写像
    •  k コチェイン全体の集合を  C^k(M) と書く。
  •  C_k(M) C^k(M) の双対空間と言える。
  •  M n-k 次元部分多様体  N を使って  M k コチェイン  N^{*} を作る方法
    • 特異  k 単体の像と有限個の点で交わる  N の交点の符号を足しあげる。
ポアンカレ双対
  •  k コチェイン  N^{*}微分形式で特徴づけられ、これを  Nポアンカレ双対という。
    • 本文では、  M N を特別な場合で説明しているが、一般の多様体でも定義される。
ド・ラームコホモロジー群と特異ホモロジー

1年前の特集でもホモロジーがあった

数学セミナー 2017年12月号』の特集で、ホモロジーが扱われていました。

図形的イメージは、2017年12月号でより詳しく書かれています。

そのときのまとめはこちらです。

wed7931.hatenablog.com
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ド・ラームコホモロジーとド・ラームの定理について、今回の記事では数式を使って詳しく書かれています。

*1:松坂和夫『集合・位相入門』 第5章 定理17

*2:いつか、このブログできちんと書いておきたい。