7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

連載「高校数学ではじめる整数論」~『数学セミナー』読書メモ

数学セミナーでは、2019年4月号から「高校数学ではじめる整数論(谷口隆)の連載が始まりました。

この記事では、この連載のメモを毎号追記していく予定です。

なお、問題の解答例は以下のサイトに掲載されています。 → 数学セミナー 編集部ブログ

【第1回 - 2019年4月号】素数のレース

「ある数以下の素数全体を与えられた自然数で割った余りで分類したときに、どの余りに属する素数が最も多いか」を観察することから始まります。

そして、リーマンのゼータ関数リーマン予想素数との関係、ディリクレの L 関数と最初の観察結果の関係へとつながっていきます。

リーマン予想は、リーマンのゼータ関数  \zeta(s) だけでなく、ディリクレの L 関数でも成り立つのではないか?」という予想は、数ヶ月前の『数学セミナー』に出ていた…と思いましたが見つけられず。

ちなみに、ディリクレの L 関数の定義  L(s,\chi_4) で関数  \chi_4 を常に 1 となる関数で置き換えると、リーマンのゼータ関数が得られますね。

【第2回 - 2019年5月号】関とベルヌーイの数列

関孝和が考えた数列と二項係数の観察から始めて、ベルヌーイ数 *1  B_n が現れる次のような数について調べています。

  •  j 乗数の和  S_j(n) := 1^j + 2^j + \dots + n^j の公式(べき和の公式)
    • ポイント:  \displaystyle \frac{xe^x}{e^x-1} = \sum_{k=0}^{\infty} B_k \frac{x^k}{k!}
  • 素数に関係する和
  • 余接関数  \cot(x) = \frac{1}{\tan \ x} の部分分数展開とゼータ関数  \zeta(2k) の値の公式

【第3回 - 2019年6月号】あまりたちのなすサイクル

素数  p についてのフェルマーの小定理 *2 とウィルソンの定理 *3 から話が始まります。

(大学数学風に書くと、)整数を素数で割ったあまりの性質を観察して、  (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} *4 が原始  p 乗根を生成元とする巡回群をなすことが説明されています。

【第4回 - 2019年7月号】素数は無数に

素数が無数に存在することの証明法を3つ紹介しています。

  • (1) (結論を否定して)有限個の素数全体の積 + 1 が素数になることを示す証明
  • (2) 任意の正の整数が平方数と無平方数の積で書けることを使う証明
    • この証明での矛盾の導出は、私は初めて見る手法でした。
  • (3)  x 以下の素数の個数  \pi(x) の評価を使う証明
    • 素数定理との関係が見えてきます。また、本文では明記されていませんが  v_p(nn') = v_p(n) + v_p(n') 素因数分解の一意性より)がよく使われています。

【第5回 - 2019年8月号】ベルトランの仮説

ベルトランの仮説とは、「任意の正の整数  n に対して,  n < p \le 2n となる素数  p が存在する」という主張です。

この主張は正しいことが証明されており、いろいろな証明が知られているようです。

この記事では、二項係数  {}_{2n} \mathrm{C}_{n}素因数分解を用いた証明が紹介されています。加えて、上のような素数  p の個数の評価について説明されています。

高校レベルを越える数学は使われておらず、二項係数や対数などの数学Ⅱ・Bを知っている高校生なら、証明の大部分を追いかけることができると思います。

*1:関・ベルヌーイ数とも呼ばれます。

*2: a \in \mathbb{Z} p の倍数でないとき、  a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p} である。つまり、  a \in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} ならば、  a^{p-1} =1 である。

*3: (p-1)! \equiv -1 \pmod{p} 。つまり、  \prod_{a \in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}} a = -1

*4:本文では、  \mathscr{A}_p  \mathbb{F}_p^{\times} と書かれています。