7931のあたまんなか

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特集「微分方程式の質問箱」~『数学セミナー2019年6月号』読書メモ

数学セミナー 2019年6月号』の特集は微分方程式の質問箱」です。

大学2年時に常微分方程式の講義があり、いろいろな解法を勉強しましたが、なかなか頭に入らなかった記憶があります。

頭に入らなかった理由は「解ける微分方程式は非常に少ないのに、特殊な形 *1微分方程式の解き方を勉強して、どんな意味があるんだろう?」という疑問があったからだと思います。

今回の記事を読んで、微分方程式を解く」の意味を広く解釈することで、疑問が少し解消できたように感じています。

常微分方程式の求積

この記事で、私の中の「微分方程式を解く」という概念が変わりました。

本文では、変数分離形の微分方程式  \frac{dy}{dx} = \frac{f(y)}{g(x)} を解くことを考えています。

主題は、「  \frac{1}{f(y)} dy = \frac{1}{g(x)} dx というように  dx dy を分離する形で変形して両辺を積分して解くこと(求積法)が、なぜ正当性を持つか?」です。

それに対する答えとして「求積法は探すときの方法であると理解して,それが正しいことの証明は別途行うのである.」(10ページより引用)と書かれています。
私にとって、非常に納得感がありました。

微分方程式 解ける?解けない?

この記事の冒頭は、私が疑問に思っていた「解ける微分方程式は非常に少ないのに、…」と全く同じ質問から始まります。

ポイントは以下の4点です。

  • (0) 解の存在と一意性の定理を証明する。
  • (1) 解を構成する関数を初等関数より広げて考える。
    • 例:リウヴィルの操作による解の構成、特殊関数、(梅村の)古典関数
  • (2) (0)の保証のもとで、関数列の構成や冪級数などを使った解をとにかく作る。
    • 例:ピカールの逐次近似法、コーシーの折れ線の方法
  • (3) 解を書き下せない場合は、解関数の性質を調べる。
    • 「本当は何を知りたいか」を考える。

C は原始関数につくアクセサリーじゃない

不定積分を求めると必ずついてくる積分定数  C に関する話題です。
改めて問われると、積分定数が何かはきちんと答えられないなと考えさせられました。

私がハッとさせられたのは、積分定数区間上で一定値をとる定数関数である *2 ということです。

不定積分が関数であることを考えると、本文に書かれている「不定積分=原始関数+定数関数」という式のほうがしっくりきます。

このことを理解するために、  \int \frac{1}{x} dx = \log |x| + C \ (x \neq 0) の絶対値記号が意味するところが詳しく説明されています。

後半では、  C= \infty を許して微分方程式の解を記述するという、私は考えたことがなかった議論が出てきます。

微分方程式の解の存在と一意性

リプシッツ連続性と解の一意的存在定理 *3 の関係が書かれています。

微分積分学の基本定理平均値の定理の重要性が改めてよくわかります。 *4

偏微分方程式の導出と解法 ― 熱方程式を例として

これまでは常微分方程式の話でしたが、この記事は偏微分方程式について書かれています。

熱方程式をテーマとして、以下の2つが書かれています。

微分方程式は身の回りにどのように活かされているか

微分方程式が使われる以下のような例が説明されています。

  • 放射性物質半減期
    • 放射性炭素による年代測定、(応用例として)人口減少
  • 共振現象
    • 水風船、建築物の耐震設計、アナログ式ラジオとRLC回路
  • 弦の振動

ちょっと寄り道ですが、式を見るときに次元を意識するという指摘も気に入りました。

広がる微分方程式の世界

※『数学セミナー2019年7月号』に書かれていますが、こちらのブログ記事で紹介します。

前半では、簡単な微分方程式の例として、2つが挙げられています。

  • 力の釣り合い
    • 例:回転中の液体、懸垂線
  • 統計的量の記述(膨大な離散量を連続量で近似する)

後半は変分問題について書かれています。

微分方程式を満たす関数を動かして、汎関数(関数に実数を対応させる写像)が最大最小になる関数を求める問題です。

具体例として、フェルマの原理から導かれる光の屈折(スネルの法則)などが挙げられています。

多くの変分問題に適用できるオイラー-ラグランジュ方程式に関する記載もあります。

*1:変数分離形、同次/非同次線形微分方程式など。

*2:19ページより引用

*3:定理の呼び名は本文からの引用です。非常にうまい言い方だなと感心しました。

*4:平均値の定理の重要性を感じたときのことは、以下の記事でも書いています。 wed7931.hatenablog.com

*5:数学ガールポアンカレ予想』第10章に出てくる熱方程式がどのように導出されるかが詳しく書かれています。 wed7931.hatenablog.com

*6:フーリエ級数についての過去の記事です。 wed7931.hatenablog.com