7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』読書メモ

加藤文元さんの『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』

IUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論は、ずーっと気になっていたテーマだったので発売後すぐに読み始めました。

IUT理論についてうっすら知っていたこと

この本の読書メモを書く前に、IUT理論について私がこれまでに知っていたことをまとめておきます。

原論文はもちろん読めなかったが、いくつか気になる用語があった。

IUT理論に関する論文は、提唱者である望月新一教授のサイトで公開されています。

www.kurims.kyoto-u.ac.jp

論文は試しに読んでみようと思いましたがダウンロードしてほぼ終わりという感じでした。(あたりまえ)
また、関連する講演資料などもざっと目を通しましてみましたが、何が何だかわからず…。

シアターや通信など、一見数学で使うとは思えない用語があるんだなというのはわかりました。

著者の加藤文元教授のIUT理論に関する講演を見た。

この本の著者の加藤文元教授が、MathPower2017というイベントで行ったIUT理論に関する講演の動画は見たことがありました。

www.nicovideo.jp

この講演で印象的だったのは「たし算とかけ算の関係は複雑すぎてよくわからない!」ということ。

言葉自体は非常に印象的でしたが、何を意味しているかはわかりませんでした。

ABC予想はIUT理論から得られる帰結の1つである。

ABC予想そのものはIUT理論が話題になるまでほとんど知りませんでした。

IUT理論が出てきたときに「ABC予想が解決された!」とニュースになりましたが、そのニュース自体はあまり注目していませんでした。

おそらくIUT理論から得られる系の1つなんだろうなと思っていました。
そして、ニュースになった理由は「ABC予想」という用語自体がキャッチーだったからだろうと。

この本でIUT理論の雰囲気はよくわかった!

上に書いたようにIUT理論についての断片的な知識がありましたが、この本を読んでそれらが頭の中でつながって、IUT理論の雰囲気がよくわかりました。

「たし算とかけ算の関係は複雑すぎてよくわからない!」という言葉のこころ *1 が理解できたことが理解の突破口になったように思えます。

IUT理論について、この本では中学数学+αの知識で読めるくらいに非常にやさしく書かれており *2「これで自分もIUT理論がわかるはずだ!」と錯覚してしまうほどでした。

数学とは?数学者は何をしているか?が効果的に書かれている。

この本では単にIUT理論という数学的内容だけを説明しているわけではなく、「数学とは?」「数学者は何をしているか?」がとても詳しく書かれています。
「詳しく」というよりも「効果的に書かれている」と言った方が適切かもしれません。

IUT理論の概要を解説するという道具を使って、「数学はどういう学問か?」を説明しているようにも思えます。

私は大学院まで数学を専門にして勉強してきましたが、数学はどういう学問かをうまく理解できないまま卒業したので、とてもいい気づきが得られました。

数学そのものに興味がある方におすすめの本です。

いろいろな数学の概念をわかりやすく説明している。

高校・大学で習うような数学の概念のわかりやすい説明も、この本の特徴です。
私にとっては既知の概念が多かったですが、こんなにわかりやすく説明できるのか!と感動しました。

特に、に関する説明は非常に素晴らしいです。

最後に:対称性は数学で本質的に重要?

この本の前に読んだのは、E.フレンケル教授の『数学の大統一に挑む』でした。
読書メモは以下のブログに書きました。

wed7931.hatenablog.com

『数学の大統一に挑む』では、量子物理学では対称性が重要な役割を果たすことが書かれています。

このブログで紹介した『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』でも、2つの数学の舞台の間で対称性を伝え合うことをベースにIUT理論が説明されています。

2冊連続で、対称性が重要なキーワードとして出てきました。

やはり数学では、「対称性」が本質的に重要なものなのかもしれません。

(2021/8/1追記) ABC予想とIUT理論のわかりやすい説明が『Newton』に

『Newton 2021年8月号』で、ABC予想とIUT理論が特集されました。

Newtonらしく、視覚的にとてもわかりやすく書かれています。

個人的には、ABC予想が成り立つことが“自然に思える”ことの説明が気に入っています。(27ページ)

*1:第4章までを読めばわかります。

*2:大学数学科の2年生くらいで習う「群」の知識もあるといいですが、第7章で非常にわかりやすく説明されているので大丈夫です。

『世にも美しき数学者たちの日常』読書メモ

二宮敦人さんの『世にも美しき数学者たちの日常』は、「小説幻冬」への連載開始から私のTwitterタイムライン上で話題になっていました。連載をまとめた単行本の出版直後に読んでみました。

世にも美しき数学者たちの日常

世にも美しき数学者たちの日常

数学者が考えていることが意外だった。

私は大学院まで数学科で数学の勉強をし、就職後約10年のブランクを経て、趣味として改めて数学の勉強を再スタートしました。

学生時代は周りに数学者はたくさんいましたが、数学を教えてもらう以外の接点はあまりなかったと思います。また、新しい定理を発見したことはなく、すでに構築済みの数学理論を追うことが精いっぱいでした。

この本を読むと、日常的に数学をして新しい定理を発見する数学者の意外な考え方が見えてきました。

  • 数学が難しくなりすぎているのかもしれない。
  • 問題を作る(良い予想を作る)ことの大変さ
  • 数学者どうしの交流で研究が進む一方で、孤独とのたたかいもある。
  • 研究内容や研究の仕方に独自性を出すということ

これらは学生時代に身近に数学者がいたにもかかわらず気付かなかったことでした。

「数学とともに生活をする」。自分にも経験があった。

この本に出てくる数学者の言葉を見ていると、机に向かって必死に勉強するというよりも、数学とともに生活をしている様子が見て取れます。

そういえば、私にもそういう経験があったなぁと思い出しました。

学生時代に付き合っていた彼女(現在の妻)と一緒にいるときの話。なかなか解けずに頭の中で引っ掛かっていた問題の解決への道筋がひらめき、その瞬間に彼女そっちのけで机に向かって計算を始めて答えを出すことが何度かありました。

最初はそんな私の様子を不審がって見ていましたが、そのうち慣れていったようです。

数学者ではない数学を愛する人たち

この本では数学者だけでなく、「在野の探求者たち」と題して、数学者ではない数学を愛する人たちのインタビューも書かれています。

私もそのような人たちの端くれとして、大いに共感しながら読み進めました。

TwitterFacebookを見ていると、このような人たちは意外とたくさんいることがわかります。人によっていろいろな数学との接し方があり、私もそのような方たちと交流を進めることで刺激を受けています。

ちなみに、私の数学の接し方は以下のツイートのように表現できます。



最後に:書籍以外にもWeb上の記事も

この本の著者の二宮敦人さんと数学者である黒川信重先生と加藤文元先生の鼎談のWeb記事もあります。くだけた感じでとても楽しいお話です。

【前半】
www.gentosha.jp

【後半】
www.gentosha.jp

『数学の大統一に挑む』の数学部分をまとめてみた

私が学生時代に専門にしていたリー群の表現論が書かれているということを聞き、エドワード・フレンケル『数学の大統一に挑む』を読みました。

この本は、大きく分けて2つのことが書かれています。

1つは、旧ソ連で生まれ育ったフレンケル教授の半生と数学の研究について。
もう1つは、数学と物理(特に量子力学)の関係性をラングランズ・プログラムの説明をしながら描いています。

数学と物理の関係については、かなり専門的な部分まで踏み込んで書かれていて非常に興味を持ちました。

その内容を少しでも理解したいと思い、ノートを取りながら読みました。本文や注釈の内容を自分なりに整理し、手元にある数学書を調べながら書いてまとめました。

数学部分をメモしたノート

数学部分に興味がある方がいるかもしれないので、ノートの内容をこちらで公開します。 *1
ダウンロードはこちらから。

【キーワード】 ラングランズ・プログラム / 群の表現 / フェルマーの最終定理 / ガロア群 / 保型関数 / 調和解析 / リーマン面 / リー群 / 基本群 / ループ群 / 圏 / 層 / ラングランズ双対群 / モノドロミー / ゲージ群 / ゲージ理論 / 場の量子論 / 超対称性 / 有効理論 / シグマモデル / ターゲット多様体 / ヒッチン・モジュライ多様体 / ミラー対称性 / 超ひも理論

フレンケル教授の講義をYouTubeで見ることができます

NHKで放送されたフレンケル教授の講義『数学ミステリー白熱教室~ラングランズ・プログラムへの招待』YouTubeで見ることができます。

【第1回】
www.youtube.com

【第2~4回】
Mysteries of Math and the Langlands Program - Episode 2 - YouTube
Mysteries of Math and the Langlands Program - Episode 3 - YouTube
Mysteries of Math and the Langlands Program - Episode 4 - YouTube

これから読んでみたい本

『数学の大統一に挑む』を読んでから、数理物理学に興味が出てきました。

関連する本として、これから読んでみたい本がこちらです。私の本棚にはすでに並んでいます。

*1:本当はもっとまとめてから公開しようと思っていましたが、予想以上に負荷がかかりそうなので、手書きノートの段階で公開します。

特集「大学数学のキーポイント」~『数学セミナー 2019年4・5月号』読書メモ

数学セミナー 2019年4月号』数学セミナー 2019年5月号』には、特集「大学数学のキーポイント」が前篇・後篇に分けて書かれています。

大学数学の勉強の心構えや仕方、いろいろな数学分野のポイントが書かれています。

特に印象に残った内容について、この記事でまとめます。

数学書の選び方・読み方 *1

  • 教科書スタイルと自由形スタイルの使い分け *2
  • 同じテーマの複数の本を手に取って、自分に合うものを探してみる。
  • 読んでわからなければ、いったん寝かせることもあり。

線形代数微分積分を学ぶ理由 *3

数学的対象を「よくわかる」ものに近似して考えたい。

代数学をどう理解していくか *4

(1) 群・環・体の例は、小中学校から学んできた数(実数、整数など)で触れている。

  • 例:剰余環(例えば  \mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z} )の最も身近な例は「奇数+偶数=奇数」「奇数×偶数=偶数」などの関係。

(2) 代数的対象の具体例を考えると、解析学の命題を代数学の言葉で言い換えることができ、代数学や層の理論で考察を進めることができる。

  • 例:領域上の正則関数全体をなす環を考えると、複素関数論での一致の定理の言い換えができる。

解けない微分方程式との付き合い方 *5

様々な現象をモデル化して微分方程式で定式化することはよく行われるが、具体的に解ける微分方程式はきわめて少ない。そのため、「具体的な解を構成できないからあきらめる」ではなく、微分方程式の解の性質を知ることが目標になる。
そのアプローチはいくつかある。

  • (1) 力学系理論=“幾何学的に”解く
  • (2) 数値解法=“計算機で”解く
  • (3) 解が存在する関数空間を考える。

確率変数の見方 *6

高校までで学んだ数を「固い数」と考えると、確率変数で指定される1点はゆらぎを持った「やわらかい数」と考えることができる。

そう考えると、確率統計で扱う内容が見通しよく見えるかもしれない。

複素関数での様々な定義や定理の見方 *7

(1) 実関数の微分可能性と比較すると、複素関数の正則性は非常に強い条件である。

(2) 複素関数では「任意の点で連続だが、任意の点で微分不可能な関数」を得ることは容易(例:  f(z) = \overline{z} )。実関数では難しい(例:ワイエルシュトラスの関数、高木関数)。

(3) コーシー-リーマンの方程式の導出:実軸上の点  h h \to 0 とした極限と、虚軸上の点  ih h \to 0 とした極限が一致することを考えればよい。

(4)  e^{iz} = \cos  z + i \sin  z を考えると、実関数では指数関数が単調増加関数だったが、複素関数では周期  2 \pi i周期関数になる。

(5) ある条件で単純閉曲線上での積分値が 0 になることを主張するコーシーの積分定理は、閉曲線上の1点  a から  a までの積分が 0 であると考えると、実関数では当然に成り立つ  \int_{a}^{a} f(x) dx = 0 との類似に見える。

(6) リュービルの定理 *8 の見方:実関数では  \sin  x 有界だが、複素関数  \sin z は非有界である(虚軸上の値  \sin  (iy) は非有界 *9 )。

(7) 一致の定理 *10 の見方:正則関数は正則性を保ったまま一部分の値だけを変えることは不可能である。実関数では容易に得られる。

物理で使う数学 *11

(1) 物理学の習得に向けては「物理現象の記述に必要な数学」をあらかじめ学ぶ。 *12

(2) 物理を理解するためには、分野によっては偏微分方程式微分形式/微分幾何学リー代数など多岐にわたる。すべてを詳しく知らなければならないというわけではない。

*1:数学セミナー 2019年5月号』の「数学書の選び方・読み方」より

*2:個人的には、自由形スタイルの数学書を多く読みたいという思いがある。

*3:数学セミナー 2019年4月号』の「線形代数」と「微分積分で学ぶこと」より

*4:数学セミナー 2019年5月号』の「群と環 ― 透き通った言葉として」より

*5:数学セミナー 2019年5月号』の「「微分方程式論」の道しるべ」より

*6:数学セミナー 2019年5月号』の「時代が求める確率統計」より

*7:数学セミナー 2019年5月号』の「複素関数論入門」より

*8:[tex: \mathbb{C} 全体で有界な正則関数は定数関数である。

*9: y \ge 0 では  | \sin  (iy) | \ge e^y / 2 で、  y \to \infty とするとわかる。

*10:定義域内に集積点を持つような可算点列上で値が一致すれば、定義域全体で関数が一致する。

*11:数学セミナー 2019年5月号』の「物理数学」より

*12:私は数学科出身なので、実態はよくわかりません。

d次元ルベーグ測度~『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)の読書メモ第4回です。

第Ⅰ部「面積とは何か」の最後のまとめです。

これまでの読書メモはこちらです。

今回は第6章「d次元ルベーグ測度」のまとめです。

一般の次元のルベーグ測度

第5章までで議論されてきた2次元実数空間  \mathbb{R}^2ルベーグ測度を拡張して、第6章では一般の  d 次元実数空間  \mathbb{R}^dルベーグ測度を定義します  (d = 1,2,\dots)

2次元で成立する各命題は、  d 次元でも同様に成立することが説明されています。

第6章の主張と第1~5章の主張の対応

第6章で説明されているいろいろな定義や定理は、第1~5章の定義や定理に対応しており、証明も同様にできます。

ここではその対応をまとめます。

第6章の主張 対応する第1~5章の主張 備考
定義6.1 定義1.2 基本直方体、基本立方体
定義6.2 定義2.1 ルベーグ外測度
定理6.3 定理2.16
定理6.4 定理3.2 ルベーグ外測度の劣加法性
定義6.5 例2.2 有界閉集合
定義6.6 定義2.7 ルベーグ内測度
定義6.7 定義2.10, 定義3.18 ルベーグ可測集合、ルベーグ測度
定義6.8 定義3.10 開集合
定理6.9 定理3.16'
開集合はルベーグ可測 系3.15'
閉集合ルベーグ可測 系3.9'
定理6.10 (1) 定理4.1
定理6.10 (2) 定理3.1' ルベーグ測度の完全加法性
定理6.11 (2)の条件 定義5.1 カラテオドリの可測性
定理6.11 定理5.5 ルベーグ可測とカラテオドリ可測が同値
系6.12 系4.3 等測核、等測核
定義6.13 命題2.11 (2) 零集合
系6.14 系4.4
定理6.15 定理4.5

カラテオドリの意味での可測性~『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)の読書メモ第3回です。

これまでの読書メモでは、 ジョルダンとルベーグの2つの方式での面積の定義ルベーグ測度の性質 について整理しました。

今回は第5章のまとめです。

カラテオドリによるルベーグ可測性の特徴づけ

上にあるこの節の見出しは、第5章のタイトルそのものにしました。

第2章で定義されたルベーグ可測性と同値なものとして、カラテオドリによる可測性の定義があることが、この章を通じて説明・証明されています。

ルベーグ測度は「ルベーグ外測度=ルベーグ内測度」で定義されました。

カラテオドリの意味で可測であることは、ルベーグ外測度のみで記述されます。(定義5.1)

これまでに説明されているジョルダン可測性やリーマン可積分性との関係をまとめると、次のような図で表現できます。


補足

命題5.1について

  • 主張:定理4.1との類似性に注目する。
    • 定理4.1の  \mathfrak{M} \mathfrak{M}^* に置き換えたものが命題5.1の主張である。
  • 証明:定理4.1の位相空間論を使った証明とは異なる。

定理5.5の証明

  • 81ページ6行目:定理3.1'を使う。
  • 81ページ8~9行目:開集合  G と集合  G \cup A, \ G \cap A^c ルベーグ可測であること(系3.15と定理4.1より)と定理3.1'より、8行目の最右辺を得る。また、ルベーグ可測集合  B に対して  m(B) = m^* (B) であることと  E \cap A \subset G \cap A 、および補題2.9より、9行目を得る。
  • (2)⇒(1)の証明で開集合  G U をとれる理由:補題3.17の(i)と(ii)を繰り返し適用すればよい。
  • (2)⇒(1)の  m^*(A) = \infty の場合の証明の結末:  A_nルベーグ可測であることと  A= \bigcup_{n=1}^{\infty} A_n および定理4.1 (4)から、  Aルベーグ可測になる。

ルベーグ測度の性質〜『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)の読書メモ第2回です。

前回の読書メモでは、ジョルダンルベーグの2つの方式での面積の定義について整理しました。

wed7931.hatenablog.com

今回は、第3〜4章に書かれているルベーグ測度の性質をまとめます。

第3〜4章を読む上で注意すること

  • 各主張がルベーグ測度 or ルベーグ測度のどちらに関することか?
  • ルベーグ測度が有限 or 一般の場合(有限とは限らない)か?
    • 全般的に、前半で有限の場合、後半で一般の場合を示している。

2つの加法性

  • ルベーグ測度は完全加法性(または σ-加法性)を持つ。
    • 有限の場合:定理3.1、一般の場合:定理3.1’
  • ルベーグ外測度は劣加法性を持つ。
    • 一般の場合:定理3.2(有限の場合を含む)
  • ルベーグ外測度が完全加法性を満たすかは難しい問題
    • 選択公理を仮定すると、完全加法性を満たさない例が作れる。(40ページ)
    • 相異なる任意の2つの集合の距離が正となる集合族では、ルベーグ外測度の完全加法性が成り立つ。(定理3.3)

2つの可測性の関係

リーマン積分と2つの方式の面積の関係

  • リーマン積分の定義は46〜47ページ参照。
  • 区間上でリーマン積分可能な関数について、x軸と閉区間上のグラフが囲む領域はルベーグ可測であり、その領域の定積分ルベーグ測度は一致する。(定理3.7)
  • 言い方を変えると、リーマン積分で求められない図形の面積がルベーグ積分で求められる可能性がある。


どんな集合がルベーグ可測集合か? *1

  • 空集合、全体集合
  • 閉集合
    • 有限の場合:定理3.9、一般の場合:系3.9'
  • 開集合
    • 有限の場合:系3.15(平面の2進分解と2進正方形を使う)、一般の場合:系3.15'
  • 可算個のルベーグ可測集合の和集合と共通部分
  • ルベーグ可測集合の補集合
    • 上の2つは定理4.1より。また、差集合も同様。
  • 等測包 *2 と零集合による特徴付け(系4.4)
    • 等測包と等測核 *3 の差を零集合にできることがポイント(系4.3)
    • 定理3.16'を使って証明する。


ルベーグ測度の計算

  • 差集合のルベーグ測度の計算(系4.2)
  • 包含関係について単調性を持つ集合族が収束する集合のルベーグ測度を極限値で求める。(定理4.5)
  • ルベーグ測度は平行移動・裏返し・回転に関して不変である。(定理4.8~4.10)

その他:補題3.8の証明の補足

  • 49ページの証明3行目:定理A.10を使う。
  • 50ページの上から2行目:収束列がコーシー列であることを使う。

*1:ルベーグ可測集合は定義3.18で定義されている。

*2:等測包:ルベーグ可測集合を含む、ある開集合たちの共通部分

*3:等測核:ルベーグ可測集合に含まれる、ある閉集合たちの和集合