7931のあたまんなか

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『現代解析の基礎 直観⇔論理』読書メモ (第1章~第4章)

大学の微分積分学の復習をするために、『現代解析の基礎 直観⇔論理』(荷見守助・堀内利郎 著)を読んでいます。

現代解析の基礎―直観から論理へ 論理から直観へ

現代解析の基礎―直観から論理へ 論理から直観へ

学生時代は、代数系が専門だったので、線形代数学や代数学はよく勉強してそれなりに頭に残っています。
しかし、微分積分学などの解析学は勉強してもあまり理解できないままでした。
なので、卒業して10年以上経った今、改めて教科書を読んでみようと思っているところです。

この本の特徴

微分積分学の教科書は非常にたくさんありますが、

  • 実数の定義付け
  • 数列の収束と連続関数の厳密な定義付け
  • 1変数および多変数関数の微分
  • 1変数および多変数関数の積分法(線積分を含む)
  • 級数の収束・発散

をコンパクトにまとめている本は比較的少ないという印象です。
ゴリゴリにまとめている有名な本はたくさんあります。

ブックオフにふらっと行ったときに、上記の5つがすべて書かれているこの本をたまたま見つけて、即買いしました。(しかも100円!)

第1章~第4章の読書メモ

第1章から第4章まで読んだので、気付いたことなどをメモしておきます。
なお、練習問題は解いておらず、本文に書かれている定義や定理とその証明を読む形で進めています。

第1章 - 集合

  • この本を読む上で(というよりも、数学をする上で)必要な「集合」についての準備をする。
  • 可算集合非可算集合についても記述あり。
    • 代数的数(整数係数多項式の根となる実数)全体の集合が可算であることを知った。

第2章 - 実数

  • 実数に関する基礎的な性質として、アルキメデスの公理や区画縮小法の原理などが提示されている。
    • コーシー列を使って有理数全体の集合から実数を構成する厳密な議論は、第6章の後半で展開されている。
  • 後半は、実数列の収束・発散の概念を、ε-N論法を使わずに直感的に導入している。
    • ε-N論法を使った収束の定義は第6章で導入されている。
    • 区画縮小法の原理と有界という概念が重要だということを改めて気づく。
    • 正の実数のn乗根がただ1つ存在することの証明は初めて知ったかもしれない。
  • 不慣れな議論のせいか、意外と読み解くのに時間がかかったのがこの章だった。

第3章 - 関数

  • 関数の連続性の定義は、ε-δ論法ではなく、点列の収束を用いて示されている。
    • ε-δ論法を使った連続性の定義は第5章で導入されている。
  • 後半は初等関数の説明。指数関数と逆三角関数が特に詳しく書かれている。e=\lim_{n \to \infty} (1+\frac{1}{n})^{n} から e^x=\lim_{n \to \infty} (1+\frac{x}{n})^{n} とその性質を導く過程をここまで意識したはなかった。

第4章 - 微分

  • 自信があまりない領域に入ってきて、じっくり読みこんだ。
  • 前半は通常の導関数の定義とその計算。以下の定理がよく使われ、正直なところあまり聞いたことがないが、有用である印象。

定理4.2 y=f(x)a \in \mathbb{R} の近くで定義された関数とする。定数 A\lim_{\Delta x \to 0} \varepsilon (\Delta x) = 0 となる \Delta xの関数 \varepsilon (\Delta x) が等式  f(x) = f(a) + A\Delta x + \varepsilon(\Delta x) \Delta x を満たすならば、関数 f(x)a微分可能でかつ f'(a)=Aである。

  • 定理4.2を使った合成関数の微分法則(連鎖律)の証明は、自分が知っているものの中で最も理解しやすかった。
  • 後半で印象が残っているのは、以下の内容。
    • テーラーの公式の剰余項の導出。剰余項には複数の種類があるようだ。
    • 極座標表示における接線と法線の方程式の導出(\tan \frac{x}{2}=\frac{1-\cos x}{\sin x} を使う)
    • 凸関数の微分の性質(連続性の性質は定理3.16に記載あり)
    • 方程式への数値解析への応用(ニュートンの反復法)
  • 全体的に、平均値の定理がキーポイントになることがわかった。
  • 一方、証明の一部でε-δ論法が暗に使われているように思える個所があり、少し気になっている。

まとめ、そしてこれから

具体的な計算はあまりできていませんが、どのような定理があったかを思い出すことができました。

また、自分が勉強した微分積分学の教科書よりは、深く書かれていることがわかり、改めて知ることができた内容もありました。

第5章以降は、1変数関数の積分からスタート。
積分などは道具として使っていたが、論理的な後ろ盾が弱いので、もう一度勉強したいです。