7931のあたまんなか

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『数学ガール/ポアンカレ予想』第8章 読書メモ

この記事は数学ガールポアンカレ予想』第8章の読書メモです。

第8章のタイトルは「驚異の定理」

「驚異の定理」は著名な数学者・ガウスが発見した定理です。 *1

この定理の名前は聞いたことがありましたが、主張は知りませんでした。微分幾何学の講義で出てきたというくらいの印象です。


この章の内容をざっくり説明するとこう言えます。

  • 平面上の三角形球面上の三角形の面積を、三角形の内角の角度に焦点を当てて考える。
  • この考察でキーになるのが、曲面の曲がり具合を表すガウス曲率という量である。

個人的には、これまでほとんど知らなかった(球面を含む)曲面上の三角形に関する知見が得られたのが収穫でした。


なお、第7章の読書メモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com


【目次】

第8章のキーワード

  • 球面の2つの大円によってできる「ルーン」 *2
  • 球面三角形の面積の公式
    • 半径  R の球面上の三角形  \mathbf{T} の3つの内角が  \alpha, \beta, \gamma であるとき、  \mathbf{T} の面積は  R^2 ( \alpha + \beta + \gamma - \pi) と書ける。
  • 曲線上の点における)曲率
  • 曲面上の点における)ガウス曲率
  • 曲面の内在的な量と外在的な量
  • 驚異の定理
  • 等質性と等方性
  • ガウス・ボンネの定理
    • ガウス曲率が関数  K(p) \ (p \in \mathbf{T}) で表せるとき、  \alpha + \beta + \gamma - \pi = \iint_{\mathbf{T}} K(p)dS となる。 *3

球面上の三角形とその内角って?

第8章を読んで、まず引っ掛かったのが、「球面上の三角形とその内角の定義は?」ということでした。

思い起こすと、学生時代にも引っ掛かっていて、そのままの状態になっていました。

検索するといくつかのページが出てきますが、以下のサイトの「球面上の三角形,角度とは」がわかりやすかったです。

mathtrain.jp

第4章に出てくる大円の説明を読んで、次の2つに気付いて球面上の三角形の内角を理解しました。

  • 球面上の大円が断面となる、球の中心を通る平面で球面が2等分されて、
  • 2つの大円によって作られるそれぞれの平面がなす角を考える。

ガウス曲率を自分なりに理解する

まずは、この理解が必要かと思います。曲線と曲面を明確に意識します。

  • 曲率:曲線について定義されるもの
  • ガウス曲率:曲面について定義されるもの

本文の説明を読んで、ガウス曲率を次のように理解しました。

 \mathcal{K}(p) の最大値・最小値が取れるかどうかは横に置いています。

この後はガウス曲率が主役

第8章の後半はほとんどがガウス曲率に関する主張です。

読みながら取ったメモの中からいくつかをピックアップします。

ガウス曲率は曲面を伸び縮みさせない限り不変である。

つまり、ガウス曲率が異なる曲面は伸び縮みさせない限り変形できないと言えます。

これは何らかの同相性を意味しているんでしょうか?

ちなみに、紙を筒状にしたり波打たせたりすることは、「伸び縮みさせない」に含まれます。

驚異の定理

次の2つの概念を定義します。

内在的な量
曲面の中の長さと角度から得られる量 *4
外在的な量
曲面が空間の中にどのように埋め込まれているかを調べないとわからない量 *5

驚異の定理は、本文で次のように表現されています。

ガウス曲率は外在的な量で定義されているのに、内在的な量で表現できる。

最初はこの定理のありがたみがよくわからない中、第8章の末尾にあるこの文章を読んで少し理解できました。

「外の世界」がなくても、我々の宇宙についてその「曲がり方」を語ることができることを強く示唆したのだ。
― 砂田利一『曲面の幾何』

ガウス曲率が0の2つの曲面

一方で、まだ理解が追い付いていないことが1つ。

3次元空間における平面と円筒上にたわめた曲面の関係。どちらもガウス曲率は0。

おそらく、埋め込まれるという概念が理解できればわかりそうです。

おわりに:学生時代に理解できなかった微分幾何学だけど

微分幾何学の講義では、小林昭七『曲線と曲面の微分幾何が教科書でした。

この教科書の該当箇所を参照しながら、第8章を読み進めました。

学生時代は全くと言っていいほど理解できませんでしたが、今なら少しは理解できるかもしれません。

*1:「定理を発見する」という言葉はやや微妙かもしれませんが、ここではこの言葉を使います。

*2:Google検索では、spherical lune で検索するとよさそうです。

*3:特に曲面が半径  R の球面の場合、  K(p) \equiv 1/R^2 から球面三角形の面積の公式が得られます。

*4:後述の小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』では、第一基本形式(接ベクトルを使って定義される)に該当する?

*5:同様に、第二基本形式(法線ベクトルを使って定義される)に該当する?