2乗すると -I になる行列 ~ 『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』読書メモ
『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』を読みました。
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: 単行本
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次の記事にも書きましたが、大学で線形代数を学ぶ人にとっては絶好の入門書です。
この本の第3章では、実数を成分にもつ2×2行列で2乗して ( は単位行列) になる虚数単位のような行列 について書かれています。
このような行列について、いろいろと自由に考えたことをまとめておきます。 *1
行列 の成分表示
このような行列 の成分表示について、119ページに以下のように書かれています。
解答3-1 (虚数単位 に類似した行列)
成分がすべて実数の2×2行列 で、 を実数、 を0以外の実数として、 とすれば、 を満たす。ただし、 とする。
証明は3.8節にあります。
を累乗すると、 となり、確かに虚数単位に似ています。
とすると、 は (以下、この行列を と置きます)と書けます。
に他の値を代入してみる。
を代入すると、 は と書けます。 *2
この行列を と の一次結合で書けないかを考えてみました。
つまり、 となる実数 が存在するかを調べます。
右辺を具体的に成分表示して比較すると、このような が存在しないことがわかります。
一方、 が成り立ちます。
ということは、 の値によっては が と の一次結合で書けない場合があることがわかります。 *3
それでは、 と の一次結合で書ける はどのようなものでしょうか。
と は一次独立か?
その前に、 と は一次独立かを調べてみます。 *4
実数 について、 であるとします。
行列成分を書き下して連立方程式を解く証明方法もありますが、ここでは行列成分に頼らない方法で証明します。 *5
に を掛けて両辺を -1 倍すると、 となります。
を計算すると、 。
両辺に を掛けると で、 から が得られます。
したがって、 と は一次独立であることがわかりました。 *6
と の一次結合で書ける
元の話に戻って、 と の一次結合で書ける がどのようなものかを考えてみます。
( は実数で )として、実数 を使って と書けたとします。
行列成分で書き下して計算すると、 のとき、つまり のときに限ることがわかります。 *7
おわりに
この記事では一次結合という視点で と を見てみました。
他にどのような視点での考察があるか。時間があれば調べてみようと思います。