射影表現と表現群~『表現論入門セミナー』読書メモ その2
『表現論入門セミナー―具体例から最先端に向かって』の読書メモ第2回です。
- 作者: 平井武,山下博
- 出版社/メーカー: 遊星社
- 発売日: 2003/11/01
- メディア: 単行本
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いろいろな表現(§1.2)
群 のいろいろな表現が、誕生した経緯とともに説明されている。
置換表現
有限群 の置換表現とは、 から 次対称群 への準同型のことをいう。
線形表現
ベクトル空間 上の可逆な線形変換全体がなす群を と書く。
のときは と書き、これは正則な 次正方行列全体である。
群 の線形表現とは、準同型 のことをいう。
線形表現の指標
線形表現 の指標 は、各 で で定義される。これは の1次元表現になる。
分数変換と表現
次正方行列 に対して、分数変換 を次のように定義する:
に対して、 の第 成分が と書かれる。
ここで、 に注意する。
すると、 は の表現に見える。これが 次元の複素射影空間上の表現になるようだ。 *1
射影表現を線形表現に直せるか?
表現論で最も重要な数学者であるシューア *3 が考えたのは、「任意の射影表現をスカラー倍で修正して、線形表現に直せるか?」ということだったという。
つまり、射影表現 について、 を に置き換えて線形表現が得られるかということである。
この答えを、中心拡大という概念を使って得た。
シューアの問題の答え
有限群 の適当な中心拡大 を取れば、 の任意の射影表現が の線形表現になる。
表現群
中心拡大のうちで最も‘効率的’なものはすべて有限群で、同型を除いて有限個のみであることが知られている。
これを の表現群という。
表現群の具体例
次対称群と交代群の表現群は§1.2.4~§1.3.2で説明されている。
*1: の定義の分母が0になるときの対処に関係する。
*2:定数倍を同一視している形なので、まさに「射影」という言葉がぴったりだと思った。
*3:本書では、「シュア」と綴っている。
*4:『数学セミナー 2018年11月号』 P76で完全系列について言及されている。(連載「双対と表現」第2回)