『数学セミナー 2019年6月号』の特集は「微分方程式の質問箱」です。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2019/05/13
- メディア: 雑誌
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大学2年時に常微分方程式の講義があり、いろいろな解法を勉強しましたが、なかなか頭に入らなかった記憶があります。
頭に入らなかった理由は「解ける微分方程式は非常に少ないのに、特殊な形 *1 の微分方程式の解き方を勉強して、どんな意味があるんだろう?」という疑問があったからだと思います。
今回の記事を読んで、「微分方程式を解く」の意味を広く解釈することで、疑問が少し解消できたように感じています。
常微分方程式の求積
この記事で、私の中の「微分方程式を解く」という概念が変わりました。
本文では、変数分離形の微分方程式 を解くことを考えています。
主題は、「 というように と を分離する形で変形して両辺を積分して解くこと(求積法)が、なぜ正当性を持つか?」です。
それに対する答えとして「求積法は探すときの方法であると理解して,それが正しいことの証明は別途行うのである.」(10ページより引用)と書かれています。
私にとって、非常に納得感がありました。
C は原始関数につくアクセサリーじゃない
不定積分を求めると必ずついてくる積分定数 に関する話題です。
改めて問われると、積分定数が何かはきちんと答えられないなと考えさせられました。
私がハッとさせられたのは、積分定数は区間上で一定値をとる定数関数である *2 ということです。
不定積分が関数であることを考えると、本文に書かれている「不定積分=原始関数+定数関数」という式のほうがしっくりきます。
このことを理解するために、 の絶対値記号が意味するところが詳しく説明されています。
後半では、 を許して微分方程式の解を記述するという、私は考えたことがなかった議論が出てきます。
微分方程式は身の回りにどのように活かされているか
微分方程式が使われる以下のような例が説明されています。
ちょっと寄り道ですが、式を見るときに次元を意識するという指摘も気に入りました。
広がる微分方程式の世界
※『数学セミナー2019年7月号』に書かれていますが、こちらのブログ記事で紹介します。
前半では、簡単な微分方程式の例として、2つが挙げられています。
- 力の釣り合い
- 例:回転中の液体、懸垂線
- 統計的量の記述(膨大な離散量を連続量で近似する)
- 例:放射性物質、人口増加モデル
後半は変分問題について書かれています。
微分方程式を満たす関数を動かして、汎関数(関数に実数を対応させる写像)が最大最小になる関数を求める問題です。
具体例として、フェルマの原理から導かれる光の屈折(スネルの法則)などが挙げられています。
*2:19ページより引用
*3:定理の呼び名は本文からの引用です。非常にうまい言い方だなと感心しました。
*4:平均値の定理の重要性を感じたときのことは、以下の記事でも書いています。 wed7931.hatenablog.com
*5:『数学ガール/ポアンカレ予想』第10章に出てくる熱方程式がどのように導出されるかが詳しく書かれています。 wed7931.hatenablog.com
*6:フーリエ級数についての過去の記事です。 wed7931.hatenablog.com