7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

『数学セミナー 2023年1月号』読書メモ

数学セミナー 2023年1月号』を読んでいて気づいたことをまとめます。

偶然なのか、前月号〜前々月号に関連する内容がいくつかあったことが印象的です。

www.nippyo.co.jp

特集:国際数学者会議2022

2022年に開催された国際数学者会議の内容に加えて、フィールズ賞などの各賞受賞者の業績が紹介されています。

ここでは、フィールズ受賞者4名の業績紹介の記事をみてみます。

ホ・ジュニ氏の業績紹介

グラフの彩色多項式超平面配置に関する内容が書かれています。

グラフの彩色多項式は、2023年大学入試共通テストの数学Ⅰ・A 第3問に関係するテーマとしてTwitterで話題になりました。

超平面配置やマトロイドは、『数学セミナー』の連載「組合せ数学の雑記帳」で扱われていました。(2019年4月〜2020年3月)
このブログで、この連載のメモを書いていました。(途中で中断していますが…)
wed7931.hatenablog.com

メイナード氏の業績紹介

双子素数予想に関係する素数列の有界間隙についての内容です。

この中で、セメレディの定理が扱われています。

『数学セミナー 2022年12月号』でセメレディの定理が扱われたときには、「素数の重み付き密度」という用語が出てきますが、あまり突っ込んだ議論がされていませんでした。
この記事では、「重み」について、より詳しい議論が行われています。

ヴィアゾフスカ氏の業績紹介

 n 次元ユークリッド空間に同じ大きさの球を詰め込むとき、球に入っている部分の割合が一番大きくなるときのその割合  \Delta_n は?」という球充填問題について書かれています。

ヴィアゾフスカ氏は、8次元の場合にそれを求めることに成功しました。(  \displaystyle{\Delta_8 = \frac{\pi^4}{384} \approx 0.25367}

なお、

  • 1次元の場合:  \Delta_1 = 1
  • 2次元の場合:六方格子による充填(  \displaystyle{\Delta_2 = \frac{\pi}{\sqrt{12}} \approx 0.90960}
  • 3次元の場合:〈ケプラー予想〉面心立方充填など(  \displaystyle{\Delta_3 = \frac{\pi}{\sqrt{18}} \approx 0.74048}

となることが知られており、4次元以上の場合は未解決とされていました。

デュミニル=コパン氏の業績

授賞理由に関連して、この記事では統計物理について扱われています。
なお、同じ特集の中の記事である、ガウス賞を受賞したリーブ氏の業績紹介のテーマも統計力学です。

連載:組合せ論彷徨 第10回

副題は「シューア函数再び(1)」」で、シューア-ワイルの双対性が紹介されています。
こちらは前々月号(2022年11月号)で扱われており、このブログの読書メモでも取り上げました。

連載:古典力学と変分問題 第10回

変分問題の例として、極小曲面が扱われています。
身近な例では、2つの針金の間に張られる石鹸膜の形状が関係します。

石鹸膜の形状についてはいろいろな本などで読んできましたが、「あるパラメータの値を大きくすることは、2つの針金を徐々に離していくことを意味していて、いずれ弾けて消えることを記述できる」というような説明はあまり見たことがなく、新鮮に感じました。