7931のあたまんなか

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『数学セミナー 2022年11月号』読書メモ

この記事は『数学セミナー 2022年11月号』の読書メモです。

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特集:私の選ぶ「推し図形」

メビウスの帯や結び目などというような比較的イメージしやすい図形から本格的な数学につながる話や、格子点や円周などを題材に高校数学の少し先を見せてくれる話、表現論やコホモロジーなど本格的な数学に直結する話など、多くのテーマが詰まっています。

ヤング図形と表現論

学生時代に表現論を勉強していたこともあり「表現論のあるき方,ヤング図形のあそび方」の記事が、個人的にはいちばんおもしろかったです。

ヤング図形が対称群  S_n の既約表現および一般線形群  \mathrm{GL}_m の既約表現に対応すること、標準盤および半標準盤によってそれぞれの表現の基底が構成されることなど、集中講義などで勉強したことが思い出されました。
2つの作用  \mathrm{GL}_m \curvearrowright (\mathbb{C}^m)^{\otimes n} \curvearrowleft S_n から得られるシューア・ワイルの双対性  (\mathbb{C}^m)^{\otimes n} \simeq \bigoplus_{\lambda \vdash n} V_{\lambda} \otimes U_{\lambda} については、紙に1つ1つ書きながら復習しました。
後半に書かれていた冪零軌道とジョルダン標準形の関連も、当時勉強したはずです(あまり記憶にない…)。

連載中の「組合せ論彷徨」の内容と重複するところがあり、連載とこの記事を合わせて読んで、理解を進めていきました。

記事の内容をまとめたメモはこういう感じです。
(全3ページをPDFファイルにしました → こちら

ちなみに、この記事の筆者である西山享先生が書かれた資料は、修士論文を書く際に参考にさせていただいたという思い出があります。懐かしいです。

結び目に関する話題

12本の記事のうち3本は、結び目に関する話題を扱っていました。
個人的にはあまりなじみがないテーマですが、いろいろなところで話題に出てきていて気になっています。

一筆書き、メビウスの帯クラインの壺、4次元立方体

特集の中には、一筆書き、メビウスの帯クラインの壺、4次元立方体が出てきます。
このテーマを扱っている本といえば、数学ガールポアンカレ予想です。
特に、4次元立方体の記事を読むときは、『数学ガールポアンカレ予想』の第5章がとても参考になりました。

幾何学を学ぶ上での考え方の軌道修正

この特集とは直接関係がないのですが、「三葉結び目」「Θグラフ」の記事の冒頭では、大学で幾何学を学ぶ上では図形を捉える考え方を軌道修正する必要があるということが書かれています。
このことは自分も苦しめられましたし、今も軌道修正しきれていないかもしれません。
その苦しさがうまく言語化されており、とても印象的です。

組合せ論彷徨 第8回

副題はリー環リー環もどき(1)」で、リー環とその表現論に関する話題の概要が書かれています。

この記事で扱われているキーワードを並べてみました:
 アフィンルート系 / カッツ-ムーディリー環 /
 ハイゼンベルク代数 / 頂点作用素代数 / スーパーリー環 / 可積分系

また、物理に関するキーワードも出てきます:
 弦理論 / ボゾンとフェルミオン*1 / 超対称性

まさに、E.フレンケル『数学の大統一に挑む』で読んだキーワードです。
個人的に興味を持っているラングランズプログラムに関係する話なのではないかとワクワクしました。

ちなみに、『数学の大統一に挑む』を読んだときのメモはこちらで公開しています。

wed7931.hatenablog.com

目で視る曲線と曲面 第8回

副題は「曲面の面積」です。

曲面の面積を曲線の長さと“同じような形”で定義しようとしてもうまくいかないこと、具体的には「氷結の缶の形のような三角形分割の極限では、曲面の面積がうまく定まらない」ことが説明されています。

そのために、「曲面に厚み  \varepsilon を持たせた体積を計算し、その体積を厚み  \varepsilon で割った量の極限  \varepsilon \to 0 を取ると曲面の面積が計算できる」という方法で、曲面の面積を定義しています。
私はこのような定義は見たことがなかったのですが、言われてみるとこういう定義が出てくるのは自然なことだと思いました。

ゲームに宿る数学の力—デジタルゲームをめぐる数学 第8回

副題は「理想の楽しさの式を求めて」
今回はRPGのキャラクターの攻撃力と防御力の“設定の仕方”がテーマです。

ドラクエの計算式」という言葉があることを初めて知りました。
中学生レベルの数学で十分読める楽しい記事です。

*1:スーパーリー環 L_0 \oplus L_1 について、 L_0 はボソンの世界、 L_1フェルミオンの世界に対応していると考えてよいという記述があります。