7931のあたまんなか

テーマ:数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など。うつと生きる30代後半の男です。

連載「高校数学ではじめる整数論」~『数学セミナー』読書メモ

数学セミナーでは、2019年4月号から「高校数学ではじめる整数論(谷口隆)の連載が始まりました。

この記事では、この連載のメモを毎号追記していく予定です。

なお、問題の解答例は以下のサイトに掲載されています。 → 数学セミナー 編集部ブログ

【第1回 - 2019年4月号】素数のレース

「ある数以下の素数全体を与えられた自然数で割った余りで分類したときに、どの余りに属する素数が最も多いか」を観察することから始まります。

そして、リーマンのゼータ関数リーマン予想素数との関係、ディリクレの L 関数と最初の観察結果の関係へとつながっていきます。

リーマン予想は、リーマンのゼータ関数  \zeta(s) だけでなく、ディリクレの L 関数でも成り立つのではないか?」という予想は、数ヶ月前の『数学セミナー』に出ていた…と思いましたが見つけられず。

ちなみに、ディリクレの L 関数の定義  L(s,\chi_4) で関数  \chi_4 を常に 1 となる関数で置き換えると、リーマンのゼータ関数が得られますね。

【第2回 - 2019年5月号】関とベルヌーイの数列

関孝和が考えた数列と二項係数の観察から始めて、ベルヌーイ数 *1  B_n が現れる次のような数について調べています。

  •  j 乗数の和  S_j(n) := 1^j + 2^j + \dots + n^j の公式(べき和の公式)
    • ポイント:  \displaystyle \frac{xe^x}{e^x-1} = \sum_{k=0}^{\infty} B_k \frac{x^k}{k!}
  • 素数に関係する和
  • 余接関数  \cot(x) = \frac{1}{\tan \ x} の部分分数展開とゼータ関数  \zeta(2k) の値の公式

【第3回 - 2019年6月号】あまりたちのなすサイクル

素数  p についてのフェルマーの小定理 *2 とウィルソンの定理 *3 から話が始まります。

(大学数学風に書くと、)整数を素数で割ったあまりの性質を観察して、  (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} *4 が原始  p 乗根を生成元とする巡回群をなすことが説明されています。

【第4回 - 2019年7月号】素数は無数に

素数が無数に存在することの証明法を3つ紹介しています。

  • (1) (結論を否定して)有限個の素数全体の積 + 1 が素数になることを示す証明
  • (2) 任意の正の整数が平方数と無平方数の積で書けることを使う証明
    • この証明での矛盾の導出は、私は初めて見る手法でした。
  • (3)  x 以下の素数の個数  \pi(x) の評価を使う証明
    • 素数定理との関係が見えてきます。また、本文では明記されていませんが  v_p(nn') = v_p(n) + v_p(n') 素因数分解の一意性より)がよく使われています。

*1:関・ベルヌーイ数とも呼ばれます。

*2: a \in \mathbb{Z} p の倍数でないとき、  a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p} である。つまり、  a \in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} ならば、  a^{p-1} =1 である。

*3: (p-1)! \equiv -1 \pmod{p} 。つまり、  \prod_{a \in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}} a = -1

*4:本文では、  \mathscr{A}_p  \mathbb{F}_p^{\times} と書かれています。

連載「やわらかいイデアの話」 ~ 『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』2018年4月号から、藤田博司さんによる「やわらかいイデアのはなし」が連載されています。

位相空間の初歩の話をする連載です。

各月の内容を自分なりにまとめるのがこの記事の目的です。

なお、偶数月号で講義、奇数月号で前月の演習問題の解説をするスタイルの予定とのことです。

私の位相空間の思い出

連載の内容まとめの前に、私にとっての位相空間の思い出を書いておきます。

位相空間を初めて知ったのは大学1年の数学科の講義で、教科書は『集合・位相入門』(松坂和夫著)が指定されました。

集合・位相入門

集合・位相入門

位相空間の特徴づけとして、開集合系の公理から入りました。

その後、閉集合や近傍などの概念、写像の連続性、点列の収束、距離空間、コンパクト性などと進んだ記憶があります。

ユークリッド空間  \mathbb{R}^n での各概念のイメージはおおよそつかめましたが、一般の位相空間ではイメージができないまま卒業したという形です。

【第1回 - 2018年4月号】大きい数・近い点・近傍フィルター

まずは、集合の基本についての説明です。

次は、「十分大きな実数」「十分近い点」という一見すると不思議な言葉について考え、フィルター近傍フィルターの定義が説明されます。

この近傍フィルターを手がかりに、位相について学ぼうということです。

最初に書いた開集合系とは異なる導入なので、今後の展開が楽しみです。

【第2回 - 2018年5月号】大きい数・近い点・近傍フィルター(演習)

第1回で出された4つの演習問題の解説です。

演習3の(5)の証明は私も試みましたが、議論が煩雑になり混乱してしまいました。本文中の記号でいうと、  r, \ \mathrm{P}, \ \mathrm{P'} , \ \mathrm{Q} を証明中で混乱して使ってしまったのが原因でした。

なお、本筋からずれますが、本文中の次の言葉が印象的でした。

大学の数学に初めて触れる人の中には,こうした「正解がひとつでない状況」に戸惑う人も多いようです。
(『数学セミナー 2018年5月号』46ページより引用)

本文中の例とは異なりますが、「ε-δ式の証明で具体的にδを与えるときに複数の候補からどれを選ぶかで悩む」というようなことです。

私にも同じ経験があるので、この気持ちはよ~くわかります。

【第3回 - 2018年6月号】近傍フィルターを生み出すしくみ ― 距離関数と開集合系

これまでに導入された近傍フィルターと今回導入される開集合系が同等であることをが説明されています。

距離空間

  • 距離関数の定義
  • 距離空間の例
    •  \mathbb{R}^2 上の距離(通常とは異なる距離)
    •  \mathbb{N} のべき集合上の距離
      • 部分集合の対称差を使って定義する。
      • カントール空間のひとつの実現方法
    •  \mathbb{Z} 上の)  p 進距離
  • 距離空間であれば、近傍フィルターは定義される。
  • 逆に、近傍フィルターは必ずしも距離関数で与えられるわけではない。
    • 本文に具体例あり。
    • あらゆる距離関数について、具体例で示した近傍フィルターが得られないことを示している。

近傍フィルターと開集合系

  • 近傍フィルターの性質を吟味して、開集合を定義している。
  • 開集合の性質を吟味して、開集合系を定義している。
  • 近傍フィルターを定めることと開集合系を定めることは同等であることを示し、位相空間を定義している。

【第4回 - 2018年7月号】近傍フィルターを生み出すしくみ(演習)

第3回の演習問題の解答が書かれています。

初めて知った概念は超距離不等式でした。

距離空間  (X, d) 上の点  x, y, z \in X に対して、超距離不等式とは  d(x,z) \leq \max \{ d(x,y) , \ d(y,z) \} を言います。これは三角不等式よりも強い不等式です。

超距離不等式を満たす距離関数を満たす距離空間アルキメデス的な距離空間と言います。(例:  \mathbb{N} のべき集合上の距離、( \mathbb{Z} 上の)  p 進距離)

【第5回 - 2018年8月号】連続写像の概念

次のような順番で連続写像を定義しています。

(1) 通常の距離が入っている距離空間  \mathbb{R} について、関数  f: \mathbb{R} \to \mathbb{R} の連続性をε-δ式の議論で考える。
 
つまり、「  f a \in \mathbb{R} において連続であるとは、  f(a) の任意の  \varepsilon -近傍の逆像が  a のある  \delta -近傍になる」ことを確認する。ここで、  \varepsilon -近傍や  \delta -近傍が区間であることに注意。
 
(2) 開区間を、一般の近傍に拡張して考える。
 
(3) さらに一般化して、2つの位相空間  (X, \mathscr{O}_X) (Y, \mathscr{O}_Y) の間の写像が連続であることを、 X Y近傍を使って定義する。
 
(4) そして、近傍を開集合に拡張しても、連続性を特徴づけられることを確認する。

第1回から一貫して、近傍という概念を話の中心に据えて議論を展開していることがとても印象的です。

新しい位相空間の例

密着位相空間と離散位相空間
なぜこのような名前が付いているか、ようやくわかりました。
ゾルゲンフライ直線
実数全体の集合  \mathbb{R} にある位相を入れた空間。第1回の「十分大きな実数」の定義と関係していると直感しましたが、よく見ると違うもの?

ゾルゲンフライ直線の定義

この連載では、ゾルゲンフライ直線が毎回のように出てきます。備忘のため、その定義を書いておきます。

実数全体の集合を、ここでは  \mathbb{S} と書きます。

 p \in \mathbb{S} に対して、  \mathbb{S} の部分集合  A  p の近傍であることを次のように定義します:ある実数  q ( < p) が存在して、半開区間  ( q , p ]  A の部分集合になる。

これにより、  \mathbb{S} の各点に近傍フィルターが定まり、  \mathbb{S}位相空間になります。この位相空間ゾルゲンフライ直線と呼びます。

よって、  A \subset \mathbb{S} が開集合であることの必要十分条件は、「  p \in A のとき、ある正の数  r (p-r , p ] \subset A なるものが存在すること」です。

【第6回 - 2018年9月号】連続写像の概念(演習)

第5回で出てきた3つの演習問題の解答が書かれています。

非常に詳細に書かれていて、大学数学を初めて勉強する人にはとても参考になると思います。

特に、演習1の解答では、何を証明すべきかの考え方がわかりやすく書いてあります。

【第7回 - 2018年10月号】閉集合・境界・同相写像

前半は、閉集合について扱われています。

  • 触点・閉包・境界の定義
  • 閉集合の定義と開集合/閉集合の直感的イメージ
  • 位相空間(が定義された集合)  X の部分集合  A についての以下の4つの演算の関係
    • 補集合を取る演算  X \setminus A
    • 閉包を取る演算  \mathrm{Cl}(A)
    • 内部を取る演算  \mathrm{Int}(A)
    • 境界を取る演算  \mathrm{Bd}(A)

後半は、開写像を明確に意識させた上で、同相写像の定義が述べられています。

以下の文章は、写像 *1 の必要性を端的に示しています。

連続な全単射が開集合を開集合にうつすとは限らないという事実は,連続な全単射といえども,位相空間の構造を完全に保つわけではないことを意味します.群やベクトル空間などの代数系においては,準同型で全単射であれば同型写像になるのですが,位相空間の場合は,そうなっていません.
(『数学セミナー 2018年10月号』73ページより引用)

最後は位相不変量が説明されていて、位相不変量には“精緻さや粗さ”があることがほのめかされています。

【第8回 - 2018年11月号】閉集合・境界・同相写像(演習)

第7回の演習問題3問に加えて、写像の連続性に関する例題が挙げられています。

【第9回 - 2018年12月号】基本近傍系・開基・稠密性

第8回までで、位相空間を定義する方法として、開集合系や閉集合系などが説明されました。

今回はこれらに加えて、基本近傍系と開基による定義が説明されています。

これらすべての定義の方法が同値であるというのが、個人的にはとても美しいと感じます。

以下、個人的にあまり知らなかったことのメモです。

  • 第1可算公理を満たす:各点が可算な基本近傍系を持つ。
  • 第2可算公理を満たす:可算な開基を持つ。
    • ユークリッド空間は第2可算公理を満たす。
    • ゾルゲンフライ直線は第1可算公理も第2可算公理もどちらも満たさない。
  • 可分:可算な稠密部分集合を持つ。
  • これらはユークリッド空間の特徴の一部を抽出したものと言える。

【第10回 - 2019年1月号】基本近傍系・開基・稠密性(演習)

第7回の演習問題3問に加えて、以下の2つが書かれています。

  • 集合  X の任意の部分集合族  \mathscr{A} によって生成される位相  \mathscr{O}_{\mathscr{A}}
    •  \mathscr{O}_{\mathscr{A}} \mathscr{A} のメンバーをすべて開集合とするために必要なぎりぎり最小限の開集合のみからなる。(P68より引用)
  • 1つの集合に対して、入れる位相によって可分性は異なる。
    • 本文での例: \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} に入れる3種類の位相

【第11回 - 2019年2月号】点と点を区別する:分離公理

5つの分離公理 \mathrm{T}_i 分離公理」  (i=0,1,2,3,4) を中心に話が進められています。

ちなみに、  \mathrm{T}_2 分離公理を満たす位相空間ハウスドルフ空間と呼ばれています。 *2

各種分離公理が成り立たない例、位相の強弱、直積空間への分離公理の継承について、イメージ図や証明を使ってわかりやすく説明されています。

位相空間フィルターを使った点列の収束の定義は、個人的に初めて知りました。
連続性の性質を含めて、距離空間での定義の自然な拡張になっています。

これまでは分離公理をほとんど意識せずに数学をしてきたので、以下の言葉がとても勉強になりました。

解析学位相幾何学で出会う位相空間の多くはハウスドルフ空間なのですから,ハウスドルフでない空間が一見奇妙に見えるのも無理はありません.しかし,ハウスドルフ空間でない位相空間にも代数幾何学におけるザリスキ位相や,コンピュータ・プログラムの理論におけるスコット位相など,応用上重要な例があります.(67ページから引用)

【第12回 - 2019年3月号】点と点を区別する:分離公理(演習)

第11回の演習問題の解答に加えて、無限個の空間の直積への位相の定め方が書かれています。

直積空間は元の位相空間たちが満たす分離公理を保存しますが、可算性・可分性は必ずしも保存されないようです。

【第13回 - 2019年4月号】離れていることとつながっていること

冒頭は、これまでの連載について振り返りと今後の見通しです。
連載中で漏れていたという、内点の定義も書かれています。

今回のテーマは連結性です。

まずは、離れている(不連結である)という概念について観察をしてから、連結であることの定義をしています。

私が学生時代に教科書に指定された 『集合・位相入門』(松坂和夫) では、連結であることの定義がいきなり書かれていて理解が難しかった記憶があるので、今回のような説明はとてもわかりやすく感じました。

そして、以下の内容について説明されています。

  • 連結な集合の性質
  • 同相写像により連結性が保たれること(位相不変性)
  • 実数直線  \mathbb{R}^1区間、半直線の連結性
  • 弧状連結
    • 弧状連結⇒連結は成り立つが、逆が成り立たないことに注意。
  • 連結成分

最後に、微積分学に出てくる中間値の定理が、より一般化された主張から導かれています。 *3

連結性の証明が難しいと感じていた理由

連結であることは「~を満たす開集合が存在しないこと」と特徴づけられます。

連結性の証明は難しいと思っていましたが、「存在しないこと」を示すことに困難を感じていたのかもしれません。

【第14回 - 2019年5月号】離れていることとつながっていること(演習)

前半は第13回の演習問題の解答です。

後半は直積空間の連結性/弧状連結性についてです。
(定理:2つの連結な位相空間の直積は連結である。逆も成り立つ。)

【第15回 - 2019年6月号】コンパクト性をめぐって

この連載では、フィルターを使って位相空間のいろいろな概念を説明することが多くあります。

今回のテーマのコンパクト性でも、まずフィルターを使った定義をして、いくつかの同値な条件を導いています。

同値な条件の中には、「任意の開被覆が有限部分被覆を持つ」ことが含まれます。

私がコンパクト性を習ったときは有限開被覆で定義されましたが、「なぜそのように定義するか?」を疑問に思っていました。

フィルターを使った議論でスタートすることで、その疑問が自然と解消できたように感じました。

また、ボルツァーノ・ワイエルストラスの定理や最大値原理といった微分積分学における基本的な定理との関係もよくわかります。

【第16回 - 2019年7月号】コンパクト性をめぐって(演習)

第15回の3つの演習問題の解答が書かれています。

主なテーマは有限交叉性、準フィルター、コンパクトなハウスドルフ空間の性質です。

*1:本文では、「開集合であるという性質を前向きに保つ写像」と説明されています。

*2:他に、正則空間(  \mathrm{T}_1 かつ  \mathrm{T}_3 )、正規空間(  \mathrm{T}_1 かつ  \mathrm{T}_4 )もあります。

*3:中間値の定理は、閉区間上の実数値連続関数についての主張である。一般化された主張は、閉区間の代わりに連結な位相空間について述べられている。

特集「微分方程式の質問箱」~『数学セミナー2019年6月号』読書メモ

数学セミナー 2019年6月号』の特集は微分方程式の質問箱」です。

大学2年時に常微分方程式の講義があり、いろいろな解法を勉強しましたが、なかなか頭に入らなかった記憶があります。

頭に入らなかった理由は「解ける微分方程式は非常に少ないのに、特殊な形 *1微分方程式の解き方を勉強して、どんな意味があるんだろう?」という疑問があったからだと思います。

今回の記事を読んで、微分方程式を解く」の意味を広く解釈することで、疑問が少し解消できたように感じています。

常微分方程式の求積

この記事で、私の中の「微分方程式を解く」という概念が変わりました。

本文では、変数分離形の微分方程式  \frac{dy}{dx} = \frac{f(y)}{g(x)} を解くことを考えています。

主題は、「  \frac{1}{f(y)} dy = \frac{1}{g(x)} dx というように  dx dy を分離する形で変形して両辺を積分して解くこと(求積法)が、なぜ正当性を持つか?」です。

それに対する答えとして「求積法は探すときの方法であると理解して,それが正しいことの証明は別途行うのである.」(10ページより引用)と書かれています。
私にとって、非常に納得感がありました。

微分方程式 解ける?解けない?

この記事の冒頭は、私が疑問に思っていた「解ける微分方程式は非常に少ないのに、…」と全く同じ質問から始まります。

ポイントは以下の4点です。

  • (0) 解の存在と一意性の定理を証明する。
  • (1) 解を構成する関数を初等関数より広げて考える。
    • 例:リウヴィルの操作による解の構成、特殊関数、(梅村の)古典関数
  • (2) (0)の保証のもとで、関数列の構成や冪級数などを使った解をとにかく作る。
    • 例:ピカールの逐次近似法、コーシーの折れ線の方法
  • (3) 解を書き下せない場合は、解関数の性質を調べる。
    • 「本当は何を知りたいか」を考える。

C は原始関数につくアクセサリーじゃない

不定積分を求めると必ずついてくる積分定数  C に関する話題です。
改めて問われると、積分定数が何かはきちんと答えられないなと考えさせられました。

私がハッとさせられたのは、積分定数区間上で一定値をとる定数関数である *2 ということです。

不定積分が関数であることを考えると、本文に書かれている「不定積分=原始関数+定数関数」という式のほうがしっくりきます。

このことを理解するために、  \int \frac{1}{x} dx = \log |x| + C \ (x \neq 0) の絶対値記号が意味するところが詳しく説明されています。

後半では、  C= \infty を許して微分方程式の解を記述するという、私は考えたことがなかった議論が出てきます。

微分方程式の解の存在と一意性

リプシッツ連続性と解の一意的存在定理 *3 の関係が書かれています。

微分積分学の基本定理平均値の定理の重要性が改めてよくわかります。 *4

偏微分方程式の導出と解法 ― 熱方程式を例として

これまでは常微分方程式の話でしたが、この記事は偏微分方程式について書かれています。

熱方程式をテーマとして、以下の2つが書かれています。

微分方程式は身の回りにどのように活かされているか

微分方程式が使われる以下のような例が説明されています。

  • 放射性物質半減期
    • 放射性炭素による年代測定、(応用例として)人口減少
  • 共振現象
    • 水風船、建築物の耐震設計、アナログ式ラジオとRLC回路
  • 弦の振動

ちょっと寄り道ですが、式を見るときに次元を意識するという指摘も気に入りました。

*1:変数分離形、同次/非同次線形微分方程式など。

*2:19ページより引用

*3:定理の呼び名は本文からの引用です。非常にうまい言い方だなと感心しました。

*4:平均値の定理の重要性を感じたときのことは、以下の記事でも書いています。 wed7931.hatenablog.com

*5:数学ガールポアンカレ予想』第10章に出てくる熱方程式がどのように導出されるかが詳しく書かれています。 wed7931.hatenablog.com

*6:フーリエ級数についての過去の記事です。 wed7931.hatenablog.com

『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』読書メモ

加藤文元さんの『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』

IUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論は、ずーっと気になっていたテーマだったので発売後すぐに読み始めました。

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

IUT理論についてうっすら知っていたこと

この本の読書メモを書く前に、IUT理論について私がこれまでに知っていたことをまとめておきます。

原論文はもちろん読めなかったが、いくつか気になる用語があった。

IUT理論に関する論文は、提唱者である望月新一教授のサイトで公開されています。

www.kurims.kyoto-u.ac.jp

論文は試しに読んでみようと思いましたがダウンロードしてほぼ終わりという感じでした。(あたりまえ)
また、関連する講演資料などもざっと目を通しましてみましたが、何が何だかわからず…。

シアターや通信など、一見数学で使うとは思えない用語があるんだなというのはわかりました。

著者の加藤文元教授のIUT理論に関する講演を見た。

この本の著者の加藤文元教授が、MathPower2017というイベントで行ったIUT理論に関する講演の動画は見たことがありました。

www.nicovideo.jp

この講演で印象的だったのは「たし算とかけ算の関係は複雑すぎてよくわからない!」ということ。

言葉自体は非常に印象的でしたが、何を意味しているかはわかりませんでした。

ABC予想はIUT理論から得られる帰結の1つである。

ABC予想そのものはIUT理論が話題になるまでほとんど知りませんでした。

IUT理論が出てきたときに「ABC予想が解決された!」とニュースになりましたが、そのニュース自体はあまり注目していませんでした。

おそらくIUT理論から得られる系の1つなんだろうなと思っていました。
そして、ニュースになった理由は「ABC予想」という用語自体がキャッチーだったからだろうと。

この本でIUT理論の雰囲気はよくわかった!

上に書いたようにIUT理論についての断片的な知識がありましたが、この本を読んでそれらが頭の中でつながって、IUT理論の雰囲気がよくわかりました。

「たし算とかけ算の関係は複雑すぎてよくわからない!」という言葉のこころ *1 が理解できたことが理解の突破口になったように思えます。

IUT理論について、この本では中学数学+αの知識で読めるくらいに非常にやさしく書かれており *2「これで自分もIUT理論がわかるはずだ!」と錯覚してしまうほどでした。

数学とは?数学者は何をしているか?が効果的に書かれている。

この本では単にIUT理論という数学的内容だけを説明しているわけではなく、「数学とは?」「数学者は何をしているか?」がとても詳しく書かれています。
「詳しく」というよりも「効果的に書かれている」と言った方が適切かもしれません。

IUT理論の概要を解説するという道具を使って、「数学はどういう学問か?」を説明しているようにも思えます。

私は大学院まで数学を専門にして勉強してきましたが、数学はどういう学問かをうまく理解できないまま卒業したので、とてもいい気づきが得られました。

数学そのものに興味がある方におすすめの本です。

いろいろな数学の概念をわかりやすく説明している。

高校・大学で習うような数学の概念のわかりやすい説明も、この本の特徴です。
私にとっては既知の概念が多かったですが、こんなにわかりやすく説明できるのか!と感動しました。

特に、に関する説明は非常に素晴らしいです。

最後に:対称性は数学で本質的に重要?

この本の前に読んだのは、E.フレンケル教授の『数学の大統一に挑む』でした。
読書メモは以下のブログに書きました。

wed7931.hatenablog.com

『数学の大統一に挑む』では、量子物理学では対称性が重要な役割を果たすことが書かれています。

このブログで紹介した『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』でも、2つの数学の舞台の間で対称性を伝え合うことをベースにIUT理論が説明されています。

2冊連続で、対称性が重要なキーワードとして出てきました。

やはり数学では、「対称性」が本質的に重要なものなのかもしれません。

*1:第4章までを読めばわかります。

*2:大学数学科の2年生くらいで習う「群」の知識もあるといいですが、第7章で非常にわかりやすく説明されているので大丈夫です。

『世にも美しき数学者たちの日常』読書メモ

二宮敦人さんの『世にも美しき数学者たちの日常』は、「小説幻冬」への連載開始から私のTwitterタイムライン上で話題になっていました。連載をまとめた単行本の出版直後に読んでみました。

世にも美しき数学者たちの日常

世にも美しき数学者たちの日常

数学者が考えていることが意外だった。

私は大学院まで数学科で数学の勉強をし、就職後約10年のブランクを経て、趣味として改めて数学の勉強を再スタートしました。

学生時代は周りに数学者はたくさんいましたが、数学を教えてもらう以外の接点はあまりなかったと思います。また、新しい定理を発見したことはなく、すでに構築済みの数学理論を追うことが精いっぱいでした。

この本を読むと、日常的に数学をして新しい定理を発見する数学者の意外な考え方が見えてきました。

  • 数学が難しくなりすぎているのかもしれない。
  • 問題を作る(良い予想を作る)ことの大変さ
  • 数学者どうしの交流で研究が進む一方で、孤独とのたたかいもある。
  • 研究内容や研究の仕方に独自性を出すということ

これらは学生時代に身近に数学者がいたにもかかわらず気付かなかったことでした。

「数学とともに生活をする」。自分にも経験があった。

この本に出てくる数学者の言葉を見ていると、机に向かって必死に勉強するというよりも、数学とともに生活をしている様子が見て取れます。

そういえば、私にもそういう経験があったなぁと思い出しました。

学生時代に付き合っていた彼女(現在の妻)と一緒にいるときの話。なかなか解けずに頭の中で引っ掛かっていた問題の解決への道筋がひらめき、その瞬間に彼女そっちのけで机に向かって計算を始めて答えを出すことが何度かありました。

最初はそんな私の様子を不審がって見ていましたが、そのうち慣れていったようです。

数学者ではない数学を愛する人たち

この本では数学者だけでなく、「在野の探求者たち」と題して、数学者ではない数学を愛する人たちのインタビューも書かれています。

私もそのような人たちの端くれとして、大いに共感しながら読み進めました。

TwitterFacebookを見ていると、このような人たちは意外とたくさんいることがわかります。人によっていろいろな数学との接し方があり、私もそのような方たちと交流を進めることで刺激を受けています。

ちなみに、私の数学の接し方は以下のツイートのように表現できます。



最後に:書籍以外にもWeb上の記事も

この本の著者の二宮敦人さんと数学者である黒川信重先生と加藤文元先生の鼎談のWeb記事もあります。くだけた感じでとても楽しいお話です。

【前半】
www.gentosha.jp

【後半】
www.gentosha.jp

『数学の大統一に挑む』の数学部分をまとめてみた

私が学生時代に専門にしていたリー群の表現論が書かれているということを聞き、エドワード・フレンケル『数学の大統一に挑む』を読みました。

数学の大統一に挑む

数学の大統一に挑む

この本は、大きく分けて2つのことが書かれています。

1つは、旧ソ連で生まれ育ったフレンケル教授の半生と数学の研究について。
もう1つは、数学と物理(特に量子力学)の関係性をラングランズ・プログラムの説明をしながら描いています。

数学と物理の関係については、かなり専門的な部分まで踏み込んで書かれていて非常に興味を持ちました。

その内容を少しでも理解したいと思い、ノートを取りながら読みました。本文や注釈の内容を自分なりに整理し、手元にある数学書を調べながら書いてまとめました。

数学部分をメモしたノート

数学部分に興味がある方がいるかもしれないので、ノートの内容をこちらで公開します。 *1

【キーワード】 ラングランズ・プログラム / 群の表現 / フェルマーの最終定理 / ガロア群 / 保型関数 / 調和解析 / リーマン面 / リー群 / 基本群 / ループ群 / 圏 / 層 / ラングランズ双対群 / モノドロミー / ゲージ群 / ゲージ理論 / 場の量子論 / 超対称性 / 有効理論 / シグマモデル / ターゲット多様体 / ヒッチン・モジュライ多様体 / ミラー対称性 / 超ひも理論

フレンケル教授の講義をYouTubeで見ることができます

NHKで放送されたフレンケル教授の講義『数学ミステリー白熱教室~ラングランズ・プログラムへの招待』YouTubeで見ることができます。

【第1回】
www.youtube.com

【第2~4回】
Mysteries of Math and the Langlands Program - Episode 2 - YouTube
Mysteries of Math and the Langlands Program - Episode 3 - YouTube
Mysteries of Math and the Langlands Program - Episode 4 - YouTube

これから読んでみたい本

『数学の大統一に挑む』を読んでから、数理物理学に興味が出てきました。

関連する本として、これから読んでみたい本がこちらです。私の本棚にはすでに並んでいます。

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

*1:本当はもっとまとめてから公開しようと思っていましたが、予想以上に負荷がかかりそうなので、手書きノートの段階で公開します。

特集「大学数学のキーポイント」~『数学セミナー 2019年4・5月号』読書メモ

数学セミナー 2019年4月号』数学セミナー 2019年5月号』には、特集「大学数学のキーポイント」が前篇・後篇に分けて書かれています。

大学数学の勉強の心構えや仕方、いろいろな数学分野のポイントが書かれています。

特に印象に残った内容について、この記事でまとめます。

数学書の選び方・読み方 *1

  • 教科書スタイルと自由形スタイルの使い分け *2
  • 同じテーマの複数の本を手に取って、自分に合うものを探してみる。
  • 読んでわからなければ、いったん寝かせることもあり。

線形代数微分積分を学ぶ理由 *3

数学的対象を「よくわかる」ものに近似して考えたい。

代数学をどう理解していくか *4

(1) 群・環・体の例は、小中学校から学んできた数(実数、整数など)で触れている。

  • 例:剰余環(例えば  \mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z} )の最も身近な例は「奇数+偶数=奇数」「奇数×偶数=偶数」などの関係。

(2) 代数的対象の具体例を考えると、解析学の命題を代数学の言葉で言い換えることができ、代数学や層の理論で考察を進めることができる。

  • 例:領域上の正則関数全体をなす環を考えると、複素関数論での一致の定理の言い換えができる。

解けない微分方程式との付き合い方 *5

様々な現象をモデル化して微分方程式で定式化することはよく行われるが、具体的に解ける微分方程式はきわめて少ない。そのため、「具体的な解を構成できないからあきらめる」ではなく、微分方程式の解の性質を知ることが目標になる。
そのアプローチはいくつかある。

  • (1) 力学系理論=“幾何学的に”解く
  • (2) 数値解法=“計算機で”解く
  • (3) 解が存在する関数空間を考える。

確率変数の見方 *6

高校までで学んだ数を「固い数」と考えると、確率変数で指定される1点はゆらぎを持った「やわらかい数」と考えることができる。

そう考えると、確率統計で扱う内容が見通しよく見えるかもしれない。

複素関数での様々な定義や定理の見方 *7

(1) 実関数の微分可能性と比較すると、複素関数の正則性は非常に強い条件である。

(2) 複素関数では「任意の点で連続だが、任意の点で微分不可能な関数」を得ることは容易(例:  f(z) = \overline{z} )。実関数では難しい(例:ワイエルシュトラスの関数、高木関数)。

(3) コーシー-リーマンの方程式の導出:実軸上の点  h h \to 0 とした極限と、虚軸上の点  ih h \to 0 とした極限が一致することを考えればよい。

(4)  e^{iz} = \cos  z + i \sin  z を考えると、実関数では指数関数が単調増加関数だったが、複素関数では周期  2 \pi i周期関数になる。

(5) ある条件で単純閉曲線上での積分値が 0 になることを主張するコーシーの積分定理は、閉曲線上の1点  a から  a までの積分が 0 であると考えると、実関数では当然に成り立つ  \int_{a}^{a} f(x) dx = 0 との類似に見える。

(6) リュービルの定理 *8 の見方:実関数では  \sin  x 有界だが、複素関数  \sin z は非有界である(虚軸上の値  \sin  (iy) は非有界 *9 )。

(7) 一致の定理 *10 の見方:正則関数は正則性を保ったまま一部分の値だけを変えることは不可能である。実関数では容易に得られる。

物理で使う数学 *11

(1) 物理学の習得に向けては「物理現象の記述に必要な数学」をあらかじめ学ぶ。 *12

(2) 物理を理解するためには、分野によっては偏微分方程式微分形式/微分幾何学リー代数など多岐にわたる。すべてを詳しく知らなければならないというわけではない。

*1:数学セミナー 2019年5月号』の「数学書の選び方・読み方」より

*2:個人的には、自由形スタイルの数学書を多く読みたいという思いがある。

*3:数学セミナー 2019年4月号』の「線形代数」と「微分積分で学ぶこと」より

*4:数学セミナー 2019年5月号』の「群と環 ― 透き通った言葉として」より

*5:数学セミナー 2019年5月号』の「「微分方程式論」の道しるべ」より

*6:数学セミナー 2019年5月号』の「時代が求める確率統計」より

*7:数学セミナー 2019年5月号』の「複素関数論入門」より

*8:[tex: \mathbb{C} 全体で有界な正則関数は定数関数である。

*9: y \ge 0 では  | \sin  (iy) | \ge e^y / 2 で、  y \to \infty とするとわかる。

*10:定義域内に集積点を持つような可算点列上で値が一致すれば、定義域全体で関数が一致する。

*11:数学セミナー 2019年5月号』の「物理数学」より

*12:私は数学科出身なので、実態はよくわかりません。