7931のあたまんなか

テーマ:数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など。うつと生きる30代後半の男です。

『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』のレビューを担当しました!

結城浩さん@hyuki)の著書数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が2018年10月に刊行されました。

レビューを担当しました!

このたび、執筆中の原稿を読ませていただいて感想や意見をお伝えするレビュアーを担当させていただきました!


私が最も好きな著者のまだ世に出ていない本の原稿を読ませていただくという、貴重であり少し不思議でもある体験をさせていただきました。

この本の発行に、少しでも力になっていればうれしいです。

そして、私をレビュアーに選んでいただいた結城浩さんには感謝の気持ちでいっぱいです!

初めて献本していただきました!

そして、刊行されたばかりの本が出版社より贈られてきました!

私にとって、初めて献本いただく本です。

あとがきには、私の名前も載せていただきました。

また、結城さんのサイン入りです。

この本は自分にとっての宝物なので、保存用としてカバーをかけて保管しておこうと思います。読む用はAmazonで予約済みです。


「行列」の最適な入門書

この本についての自分の経験はさておき、内容についても触れておこうと思います。

一言でいうと、行列の最適な入門書であると思います。


行列は、高校数学の指導要領から消えたり現れたりを繰り返し、2010年代の高校生の大半は学習していません。

一方で、大学1年で数学を学ぶときには必ず行列が出てきます。

行列は、高校までの数学の常識を超える”数”といえるので、扱うためにはある程度の構えが必要になります。

私は高校で行列を学んだ世代なので、行列への構えができた状態で大学数学に臨めましたが、もし行列を知らずに大学数学に入り込めたかというと自信はありません。


この本には行列への構えをするために必要なことが詳しく書かれていますし、この本を読めば大学数学にスムーズに入っていけると思います。

このような意味で、大学1年の講義が始まる前に読んでおくのに最適な行列の入門書です。

連載「やわらかいイデアの話」 ~ 『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』2018年4月号から、藤田博司さんによる「やわらかいイデアのはなし」が連載されています。

位相空間の初歩の話をする連載です。

各月の内容を自分なりにまとめるのがこの記事の目的です。

なお、偶数月号で講義、奇数月号で前月の演習問題の解説をするスタイルの予定とのことです。

私の位相空間の思い出

連載の内容まとめの前に、私にとっての位相空間の思い出を書いておきます。

位相空間を初めて知ったのは大学1年の数学科の講義で、教科書は『集合・位相入門』(松坂和夫著)が指定されました。

集合・位相入門

集合・位相入門

位相空間の特徴づけとして、開集合系の公理から入りました。

その後、閉集合や近傍などの概念、写像の連続性、点列の収束、距離空間、コンパクト性などと進んだ記憶があります。

ユークリッド空間  \mathbb{R}^n での各概念のイメージはおおよそつかめましたが、一般の位相空間ではイメージができないまま卒業したという形です。

【第1回 - 2018年4月号】大きい数・近い点・近傍フィルター

まずは、集合の基本についての説明です。

次は、「十分大きな実数」「十分近い点」という一見すると不思議な言葉について考え、フィルター近傍フィルターの定義が説明されます。

この近傍フィルターを手がかりに、位相について学ぼうということです。

最初に書いた開集合系とは異なる導入なので、今後の展開が楽しみです。

【第2回 - 2018年5月号】大きい数・近い点・近傍フィルター(演習)

第1回で出された4つの演習問題の解説です。

演習3の(5)の証明は私も試みましたが、議論が煩雑になり混乱してしまいました。本文中の記号でいうと、  r, \ \mathrm{P}, \ \mathrm{P'} , \ \mathrm{Q} を証明中で混乱して使ってしまったのが原因でした。

なお、本筋からずれますが、本文中の次の言葉が印象的でした。

大学の数学に初めて触れる人の中には,こうした「正解がひとつでない状況」に戸惑う人も多いようです。
(『数学セミナー 2018年5月号』46ページより引用)

本文中の例とは異なりますが、「ε-δ式の証明で具体的にδを与えるときに複数の候補からどれを選ぶかで悩む」というようなことです。

私にも同じ経験があるので、この気持ちはよ~くわかります。

【第3回 - 2018年6月号】近傍フィルターを生み出すしくみ ― 距離関数と開集合系

これまでに導入された近傍フィルターと今回導入される開集合系が同等であることをが説明されています。

距離空間

  • 距離関数の定義
  • 距離空間の例
    •  \mathbb{R}^2 上の距離(通常とは異なる距離)
    •  \mathbb{N} のべき集合上の距離
      • 部分集合の対称差を使って定義する。
      • カントール空間のひとつの実現方法
    •  \mathbb{Z} 上の)  p 進距離
  • 距離空間であれば、近傍フィルターは定義される。
  • 逆に、近傍フィルターは必ずしも距離関数で与えられるわけではない。
    • 本文に具体例あり。
    • あらゆる距離関数について、具体例で示した近傍フィルターが得られないことを示している。

近傍フィルターと開集合系

  • 近傍フィルターの性質を吟味して、開集合を定義している。
  • 開集合の性質を吟味して、開集合系を定義している。
  • 近傍フィルターを定めることと開集合系を定めることは同等であることを示し、位相空間を定義している。

【第4回 - 2018年7月号】近傍フィルターを生み出すしくみ(演習)

第3回の演習問題の解答が書かれています。

初めて知った概念は超距離不等式でした。

距離空間  (X, d) 上の点  x, y, z \in X に対して、超距離不等式とは  d(x,z) \leq \max \{ d(x,y) , \ d(y,z) \} を言います。これは三角不等式よりも強い不等式です。

超距離不等式を満たす距離関数を満たす距離空間アルキメデス的な距離空間と言います。(例:  \mathbb{N} のべき集合上の距離、( \mathbb{Z} 上の)  p 進距離)

【第5回 - 2018年8月号】連続写像の概念

次のような順番で連続写像を定義しています。

(1) 通常の距離が入っている距離空間  \mathbb{R} について、関数  f: \mathbb{R} \to \mathbb{R} の連続性をε-δ式の議論で考える。
 
つまり、「  f a \in \mathbb{R} において連続であるとは、  f(a) の任意の  \varepsilon -近傍の逆像が  a のある  \delta -近傍になる」ことを確認する。ここで、  \varepsilon -近傍や  \delta -近傍が区間であることに注意。
 
(2) 開区間を、一般の近傍に拡張して考える。
 
(3) さらに一般化して、2つの位相空間  (X, \mathscr{O}_X) (Y, \mathscr{O}_Y) の間の写像が連続であることを、 X Y近傍を使って定義する。
 
(4) そして、近傍を開集合に拡張しても、連続性を特徴づけられることを確認する。

第1回から一貫して、近傍という概念を話の中心に据えて議論を展開していることがとても印象的です。

新しい位相空間の例

密着位相空間と離散位相空間
なぜこのような名前が付いているか、ようやくわかりました。
ゾルゲンフライ直線
実数全体の集合  \mathbb{R} にある位相を入れた空間。第1回の「十分大きな実数」の定義と関係していると直感しましたが、よく見ると違うもの?

【第6回 - 2018年9月号】連続写像の概念(演習)

第5回で出てきた3つの演習問題の解答が書かれています。

非常に詳細に書かれていて、大学数学を初めて勉強する人にはとても参考になると思います。

特に、演習1の解答では、何を証明すべきかの考え方がわかりやすく書いてあります。

【第7回 - 2018年10月号】閉集合・境界・同相写像

前半は、閉集合について扱われています。

  • 触点・閉包・境界の定義
  • 閉集合の定義と開集合/閉集合の直感的イメージ
  • 位相空間(が定義された集合)  X の部分集合  A についての以下の4つの演算の関係
    • 補集合を取る演算  X \setminus A
    • 閉包を取る演算  \mathrm{Cl}(A)
    • 内部を取る演算  \mathrm{Int}(A)
    • 境界を取る演算  \mathrm{Bd}(A)

後半は、開写像を明確に意識させた上で、同相写像の定義が述べられています。

以下の文章は、写像 *1 の必要性を端的に示しています。

連続な全単射が開集合を開集合にうつすとは限らないという事実は,連続な全単射といえども,位相空間の構造を完全に保つわけではないことを意味します.群やベクトル空間などの代数系においては,準同型で全単射であれば同型写像になるのですが,位相空間の場合は,そうなっていません.
(『数学セミナー 2018年10月号』73ページより引用)

最後は位相不変量が説明されていて、位相不変量には“精緻さや粗さ”があることがほのめかされています。

*1:本文では、「開集合であるという性質を前向きに保つ写像」と説明されています。

連載「眠れぬ夜の確率論」 ~ 『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』2018年4月号から、原啓介さんによる「眠れぬ夜の確率論」の連載が始まりました。

タイトルのとおり、テーマは確率論です。

高校で、場合の数、確率、条件付き確率を勉強しますが、自分にとってはどれも苦手な分野でした。

大学入試の2次試験では、

  • 場合の数の簡単な問題(碁盤の目の問題)で計算ミスをして、自己採点でへこむ。
  • 本番で確率は出ないでほしい!と思っていたら、その通りになってホッとした。

というような思い出があり印象的です。

確率論は苦手な分野ではありますが、高校数学よりも少し高い視点から確率論を見直してみて、何か得ることがあればと思っています。

【目次】

【第1回 - 2018年4月号】どうやら確からしい話

副題は「ある高校生,近江の君,ラプラス,その他の物語」です。

中学・高校で学習した「同様に確からしい」 *1 というちょっと不思議な言葉をたよりに、確率論の歴史が説明されています。

そして、「同様に確からしい」式の確率論はラプラスが提示した確率の原理がもとになっていることが説明されています。現代の言葉でいうと、次のようなものです。

  • 第一原理:確率の定義
  • 第二原理:和の法則(ここがポイント!)
  • 第三原理:積の法則
  • 第四~第七原理:条件付き確率、ベイズの公式、ベイズ推定
  • 第八~第十原理:期待値

ちなみに、この内容は数学ガール乱択アルゴリズム第4章で古典的確率として紹介されているものです。

数学ガール/乱択アルゴリズム (数学ガールシリーズ 4)

数学ガール/乱択アルゴリズム (数学ガールシリーズ 4)

【第2回 - 2018年5月号】あなたの人生の期待値

副題は「心の代数,千両みかん,ホームズ最後の事件,その他の物語」です。

未来の行動を選択するための期待値的な考え方について、過去に論じられた例を使って説明しています。

ポイントは以下の内容でしょうか。(本文より引用します)

ラプラスは確率の定義とベイズ推定について述べた第七原理までに続いて,第八から第十原理の三つで期待値の基本的性質を述べます.興味深いことは,既にこの時点で,人間の問題に期待値を応用するには絶対的な値の他に相対的な値も加味して,「精神的期待値」を考える必要がある,と書かれていることです.

【第3回 - 2018年6月号】確率・長さおよび面積

副題は「キャロルの三角形,並行宇宙,確率変数の謎,その他の物語」です。

学生時代に確率論の講義を受講していました。詳細な内容はほとんど覚えていませんが、測度論確率を関連付けて議論していたということは覚えています。

なぜこの2つを関連付けるかはよくわかりませんでしたが、この記事を読んで納得しました。一部を引用します。

「重なりのない図形に点を選ぶ確率は各図形に点を選ぶ確率の和である」と「確率はたかだか1である」の二つを守る限り,我々は「一様」には点を選べないことになります.(略)結論から言えば,確率は面積や長さと同じものだ,という直観は正しかったのですが,「長さ」や「面積」自体に徹底的な反省と再構築が必要だったのです.

その結果として得られたコルモゴロフによる確率の定義が書かれています。σ-加法族を定義した上で、確率空間確率が定義されています。

続いて、確率変数が定義されます。確率変数は高校以来、いまだによくわかっていないです…。

なお、コルモゴロフによる確率の定義の易しい形 *2数学ガール乱択アルゴリズム第4章に書かれています。

【第4回 - 2018年7月号】天才フォン・ミーゼス閣下の蹉跌

副題は「謎のコレクティヴ,ポワソンのごまかし,ミッシングリンク,その他の物語」

前回説明があったコルモゴロフによる確率の定義が固まる前に提唱されたミーゼスの確率の「定義」についてのお話です。

そのベースとなる考え方は、コルモゴロフの確率空間に対して、ミーゼスはコレクティヴでした。これは実験データを表す無限列を集めたものと言えます。

本文に書かれているコレクティヴの定義を読んだとき、わかりやすくて正当性がありそうと自分は思いました。

しかし、コイン投げなどの例を使って掘り下げていくと、現代の確率論とはズレがあり、数学的には筋が悪そうだということが見えてきます。

(私の説明では循環論法のきらいがありますが、)それを解消したのがコルモゴロフの確率空間の定義だと言えます。

一方、本文の最後に書かれている内容を読むと、ミーゼスの考え方をもっと汲み出すと現在も議論が続く確率と統計のミッシングリンクを埋められるかもしれないと思えてきます。

【第5回 - 2018年8月号】でたらめという名の規則

副題は「反規則性,コルモゴロフ再び,ポーの少年と緋牡丹のお竜,その他の物語」です。

規則性のアンチとしての「ランダム」は、コルモゴロフの確率空間で捉えられていないのではないかという問題提起で、この記事は始まります。

前回出てきたミーゼスは、コレクティヴでランダムを捉えようとしましたが、うまくいきませんでした。

その後、計算そのものの定義づけなどの発展により複雑度が定義され、そこからランダムであることが定義されました。

最後に、「確率」と「複雑度」という関係がありそうに見える概念を結び付けるものが極限定理であると締めくくられています。

おまけですが、本文では「計算とは何か」という節で計算可能性やアルゴリズムなどの概念 *3 が説明されています。これを読んでいて、森田真生『数学する身体』第2章を思い起こしました。

数学する身体 (新潮文庫)

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【第6回 - 2018年9月号】主観確率のあやしくない世界

副題は「DL2号機事件,一貫性,ダッチブック論法,その他の物語」です。

今回の内容を一言でまとめるとすると、確率に課す仮定確率を定める主観性になるでしょうか。

前半は、確率の考え方をめぐる様々な葛藤が書かれています。

後半は、主観確率を最も首尾一貫した完成された形で提出したデ・フィネッティの理論を説明しています。

ポイントは、以下の2つと言えます。

  • 期待値を基礎に置いた確率の概念
  • 確率を合理的に定めるダッチブック論法

ここからコルモゴロフの確率の定義の一部が導かれるのが、デ・フィネッティの理論の合理性かと思いました。

【第7回 - 2018年10月号】余は如何にして確率論者となりし乎

副題は「梯子酒,秘密の通路,5と7の理由,その他の物語」です。

前回までは、確率をめぐる思想に関する話題が多くありました。

今回は、筆者の確率論との出会いのエピソードをもとにして、具体的な事象の確率について書かれています。

酔歩ランダムウォーク)を出発点にして、次のような拡張を試みます。

  • 歩数を無限回に拡張する。
  • 境界値条件を課す。(梯子酒問題)
  • 1次元である酔歩を多次元化する。
  • 歩数という離散的な値を連続化する。(ブラウン運動*4

そうすると不思議なことに、2階微分作用素であるラプラシアンが出てきます。

そして、熱方程式や伊藤の公式との関係が出てきます。

さらにリーマン多様体偏微分方程式の関係が出てくることが書かれています。

これは、リー群の表現論を専門にしていた私の修士論文と関係するテーマで驚きを隠せませんでした! *5

*1:「同様に確からしい」を初めて聞いたのは、小学生のときに見た「平成教育委員会」だったことをはっきり覚えています。

*2:可算加法性というより、有限加法性で書かれている。

*3:本文での脚注にある「枚挙」については『数学セミナー 2017年10月号』の記事「ヒルベルトの第10問題」に書かれています。当ブログでのまとめはこちら

*4:差分と微分の関係が出てくる。

*5:私の修士論文はこちらで公開しています。 wed7931.hatenablog.com

MATH POWER 2018に参加してきました。 #Mathpower

2018年10月6日~7日にわたって行われた数学イベント「MATH POWER 2018」に参加してきました。

mathpower.sugakubunka.com

このイベントは今回が3回目。

2016年の第1回から気になっていたイベントで、第2回はニコニコ動画で生放送を見ていました。

そして、今回は現地に行ってみよう!と思い、参加することにしました。

イベント時間約30時間のうち、初日の12:00~19:00のセッションに参加しました。


数学の講演を7時間聴きっぱなしで大満足!

大学院数学専攻を卒業して13年間、数学の講演や講義を聴くことはほとんどありませんでした。

13年のブランクの後に、ゴリゴリの本気の数学の講演を7時間!

数学の内容はもちろん、プレゼンや演出の上手さなどにとても感動しました。

本物の数学の講義のように、ノートにメモを取りながら聴き入りました。

それぞれの講演の簡単なメモを書きます。

なお、講演中に取ったノートや詳細なメモは、私のツイートを集めたTwitterモーメントをご覧ください。

twitter.com

インテジャーズ イン 仮面ライダービルド

講演者の関真一朗さんと辻順平さんのブログはよく読んでいるので、とても楽しみにしていました。

今年8月まで放送されていた、物理学者が主人公の仮面ライダービルド』の話数表示に出てくる1~50にちなんだお話をしてくれました。

お2人とも整数論を専門にされているようなので、素数完全数ゼータ関数などの話が多く出てきました。

私が知っている話もいくつかありましたが、その先のいろいろな広がりや数学の他の分野との関係が見えて、とても興味深い講演でした。

そして、どうやったらここまで数学を深く深く知れるんだろう?と感じました。

これまで以上に、素数や整数への興味が湧いてきました。

仮面ライダービルドの物理学

仮面ライダービルド』の物理学アドバイザーだった白石直人さんによる、番組に登場したシーンの物理学的背景の説明です。

これを聴いて、物理学の見方が変わりました

具体的にはこの2点です。

  • 物理法則とは、あらゆる世界(魔法が使えるような空想の世界を含めて)から一定の原理を満たすあり得る世界を選び取ったものであると言える。
  • 物理現象を数式で表すときに、研究する物理の対象をどのように捉えるかが大事である。
    • 例えば、水の流れを数式で表すときに、「水」を分子1個1個でミクロに捉えるか、もっとマクロに捉えるか?

レムニスケートから楕円関数へ

上の2つと比べて、より深く数学に入り込んだ講演です。

相加相乗平均(算術幾何平均)や積分を使って求める曲線の長さといった高校数学でおなじみの話題で始まり、楕円積分や楕円関数といったその先の数学に、自然と連れて行ってくれるわかりやすい講演でした。

意欲的な中高生に贈る数学の話題 ~数理空間トポスより~

中高生のために教科書より先の数学を提供する「数理空間 “τόπος“(トポス)」のチューターと顧問の方による講演です。

テーマは「楕円関数と楕円曲線、それに関係する合同数について」です。

前半は群や同一視、トーラスなどの大学数学での用語が出てきてやや難しいかもしれません。

後半の合同数については、定義は中学生なら十分に理解できる内容です。

定義だけを見れば簡単そうな合同数が予想以上に深いのが印象的でした。フェルマーの最終定理にもつながってきます。

ビブリオマテマティカ ~数学に目覚めるための数学書

数学書を出版する4つの出版社の方によるプレゼンです。

この講演を聴くためにイベントに参加したといってもいいくらいです。

もっとも印象的だったのが、編集者のみなさんの数学に対する思いです。

講演を聴く前は、数学や科学が好きとは限らない本好きの方が編集者になって、業務上でたまたま数学書に携わっていると、勝手に思い込んでいました。

しかし、講演を聴いて、みなさんの数学に対する思いに感銘を受けました。

  • 大学で数学科に所属していて、数学書の仕事をしている。
  • 化学を専攻していたが、友人宅にあった数学書を読んで数学に目覚めた。
    • その本が自分が学生時代に最も読み込んだといってもよい、永尾汎『代数学だったのが印象的。
  • 高専から編入した大学で表現論を専門にして、高専時代に勉強したフーリエ解析などを扱っていた。
    • 表現論が専門というのは自分と同じ!

数学書の編集者の方に対してなんて失礼なことを思っていたんだと反省しました。

参加者の方々との交流

Twitterでフォローしているや~まださん(@iipod)にお会いして、1時間ほどお話ししました。

初めてお会いする方でしたが、自分と似ている部分がとても多くて、一気に打ち解けました。数学に対する熱意もすごいです!


講演者の方やほかの方ともお話をしてみたかったのですが、なかなかお声をかけられず…。名刺も準備していましたが、ほとんど渡すことができませんでした。

他の数学イベントに参加するときには、もうちょっと積極的にアプローチしようかと思います。

やっぱり数学は楽しい!

このイベントに参加して、改めて数学の楽しさを実感しました。

やっぱり数学が大好きで一生離れられないと再確認し、数学熱がさらに高まりました!

今後も数学イベントに積極的に参加していきたいと思います!

連載「試験のゆめ・数理のうつつ」 ~ 『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』では、2017年4月号から、時枝正さんによる「試験のゆめ・数理のうつつ」が連載されています。

いろいろな分野の重要定理やそれを使った問題を俯瞰できる連載で、とても気に入っています。
各月でどのような内容が紹介されているかを記録するのが、この記事の目的です。

この連載の概要

ケンブリッジ大学の数学専攻の試験にトライポスというものがあります。

この連載では、各月のテーマごとにトライポスの雰囲気を感じられる問題が紹介されています。

各月で紹介される問題は10問前後で、簡潔な解答がつけられています。

複数分野が融合された問題も見られ、意外な発見があるのが楽しみです。

【第1回 - 2017年4月号】ケンブリッヂの入試

イントロダクションとして、ケンブリッジの数学専攻に入るための口頭試験のサンプル問題が紹介されています。

「口頭」と言いながらも、このような試験のようです。

座るやいなや,問題を与える.「口頭」とは名ばかり,その場でペンと紙をどしどし使わせ,つまづくようす,解くようす,あきらめるようす,巻き返すようす,を観察する.すぐ解けるようなら問題を難しくし,なかなか解けぬようなら易しくし,初めの2~3分でその人がこなせるぎりぎりの水準を探り当て,30分間6つ~7つ問題をやらせるのである.
(『数学セミナー 2017年4月号』45ページより引用)

紹介されている12問から2問を引用します。

問3 100! のしっぽにはいくつ 0 が連なるか?

問6 すべすべな面に静止したおはじきAに,同質量のおはじきBをぶつけると,散乱角は 90° になる.これを導け.正面衝突させると何がおこるか?

【第2回 - 2017年5月号】確率:逆説あれこれ,条件付けて考える

一般的な確率の問題から、標本調査、ベイズ統計、条件付確率/期待値、幾何確率、積分確率などに関する問題が紹介されています。

印象的だったものは、 調和平均 ≦ 幾何平均 ≦ 算術平均 の関係を確率論的にとらえた問題(題5)です。

確率や期待値を積分を使って評価する問題もいくつかあります。
あまりやったことがないので、とても新鮮に見えました。

【第3回 - 2017年6月号】力学:保存量やりとり,次元解析

運動量、遠心力、ケプラーの三法則、エネルギーなど、数学というより物理の内容です。

高校物理+αしか学んでいない私にとって、新鮮味がある問題ばかりでした。

例えば、こんな問題。

題5 片面バターを塗ったトーストがテーブルの縁から落ちると,えてしてバター面がうつぶせに着地しますよね.くるりとフル回転してあおむけに着地させるためにはテーブルの高さを何倍にすべきか?即答しなさい.

題8 川床にグラフ  B=B(x) で与えられるこぶを築いたとき,川面の高低はどう変わるか?

【第4回 - 2017年7月号】群:対称性をみぬき,作用してほぐす

タイトルにあるとおり、群の作用に着目した問題が紹介されています。

問題に対する解答の帰結として、基本群の例やフェルマーの小定理が得られる問題もあります。

考えたことがなかった!と思ったのが、次の2つの問題です。

題7 群から2元をランダムに抽出したとき,それらが可換な確率は何か?

(題8の後に書かれた内容の抜粋)
群,群というけれど,群ってありふれた存在なのでしょうか?それとも稀なのかな?
定理 位数  n の群の数は高々  n!^{\log_2 n} である。
―結合律はかくも厳しい要請なのであった。

【第5回 - 2017年8月号】1変数の微積分:テレスコープ原理,連続と離散

この回は、以下の3つの部分に分類されます。

ディガンマ関数とは、ガンマ関数の対数微分を取ったものとのこと。

ガンマ関数が乗法的とすると、ディガンマ関数は加法的と考えられ、無限級数との相性がよさそうです。

余談ですが、「連続と離散」というと、微分積分と差分・和分の関係を初めて知った数学ガール』を読んだときの衝撃が印象に残っています。

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

この連載と同じく『数学セミナー』で連載中の梅田亨さんの「計算するたのしみ―スターリング数のいる風景」でも、差分・和分が扱われており、いずれじっくり読んでみたいと思っています。

【第6回 - 2017年9月号】ベクトル解析:ラプラシアンの意味,球の調和場

前半は調和関数(ラプラス方程式  \triangle \varphi = 0 の解)に関する問題が紹介されています。

後半はベクトル解析を使って、重力ポテンシャルなどの話が出てきます。
(後半の内容は知識がほとんどないので、私の力では説明できません…)

調和関数は、私の修士時代の研究内容に関係してきます。
時間があれば、改めて勉強したいと思っています。

印象に残った次の問題は、複素関数論のリュウビルの定理の一般化とのこと。
具体的にどういう関係なんだろう?

題8  \mathbb{R}^n 全体で有界な調和関数は定数である。

【第7回 - 2018年4月号】数論:素数のたちい,合同式のふるまい

6ヶ月間の休載を経て、次は素数合同式の話題です。
学部時代に勉強した内容でとても懐かしい思いがしました。

内容は次のように分類されます。

素数定理を使った次の問題が印象的です。(本文と記述は変えています)

題17 素数/素数の形の有理数全体は、正の実数全体の集合で稠密である。*3

【第8回 - 2018年5月号】微分方程式:デルタとグリーン,指数函数百面相

微分方程式の解をグリーン関数と呼ばれる関数で記述する問題などが出てきます。

グリーン関数は初めて知りました。ディラックデルタ関数で記述する関数です。

ですので、たたみ込みやフーリエ変換がからむ話も出てきます。先日書いたこの記事の続きにあたる内容です。(続きを書きたいけど、手が出てません)
wed7931.hatenablog.com

ほかにも、調和振動、強制減衰振動、うなり、共鳴、シュレディンガー方程式、特異摂動といった物理関係の話題が出てきます。

【第9回 - 2018年6月号】確率:エントロピーでえらび,母函数できわめる

前半はエントロピーと確率の関係、後半はまさに確率に関する話です。

…が、今回は畑違いすぎてお手上げです。エントロピーは学部1年の物理の講義で聞いたことがあるなぁという程度です。

解答の内容は理解できませんでしたが、おもしろそうな問題を2つ挙げておきます。

題5 塩漬・糖漬が食品を長持ちさせるのはなぜか?

題11 1990年代GPSは軍事用チャネルと民間用チャネルが併存し,米国防省はわざと雑音を混ぜて民の精度を落としていた.ところが,あっけない工夫のおかげで,民のみ受信してなお軍の精度を達成する人が続出したので,雑音を廃した,という伝説がある.どんな工夫だったでしょうか?

キーワード:ボルツマン分布、確率変数の列の収束の概念いろいろ、大数の法則中心極限定理の証明、ワイエルシュトラスの近似定理など

【第10回 - 2018年7月号】力学:まわる剛体,いたずらな接点

タイトルにあるように、剛体の力学がテーマです。

自分でも多少は理解できたので、高校程度の物理の知識(慣性モーメント、摩擦係数、回転運動など)があればざっと読めるかと思います。

扱われている問題も生活に即したものが多く、イメージしやすく楽しいです。

  • 氷上の回転椅子に座って回転するには?(題1)
  • 長さが同じ4本脚の机を床に置くと、ガタガタすることがあるのはなぜか?それを直すにはどうすればいいか?(題2)
  • ビリヤード玉にバックスピンやトップスピンをかけるにはどこを打つべきか?(題8)
  • 逆立ち独楽はなぜ逆立ちするか?(題11)

【第11回 - 2018年8月号】群:位数をよりあわせ,構造をつむぐ

第4回(2017年7月号)に続いて、「群」は2回目です。

前半はあみだくじに代表される対称群置換の符号について。

 n 次対称群  S_n交代群  A_n の生成系、正多面体群と同型な群などがまとめられています。

次の問題は初めて見ました。確率と期待値を使って解かれています。

題5  S_n の置換の転倒数の平均は  \frac{1}{2} \binom{n}{2} = \frac{n(n-1)}{4}

記事内で言及されている15パズルの可解性は、『数学セミナー 2017年10月号』で取り上げられています。

wed7931.hatenablog.com

後半は元の位数に関する問題です。

印象的なのはこの問題です。

題8  S_9 に位数20の元は存在するか?位数18の元はどうか?  S_n の元の最大位数はどのくらいか,みつもれ.

最後には、スピンの実験が説明されています。群の準同型と2重被覆、ホモトピー類を体現する実験とのこと。 *4

【第12回 - 2018年9月号】線形代数:自由度の勘定,行列の分解

ガウスの消去法や次元定理などの線形代数の基本から、ラグランジュ補完、ホモロジー、離散フーリエ変換などの話題に展開していきます。

線形代数の教科書でよく見る問題が多い中、次の2つの問題が印象的です。前者は計算量、後者は固有値に関する問題。

題3 四則演算を1ステップと数えて,未知数  n 個,式  n 本の消去法のコストをみつもれ.クラメールの規則と比べよ.

題14 一年中雨季のケンブリッヂでは,  k 日目の降水量  r_k \frac{r_{k-3} + r_{k-2} + r_{k-1} }{3} と予報する.  r_1, r_2, r_3 は天気予報史初期の観測値,三日坊主で以来観測はやめてしまった.この数列は収束するか?収束先の極限は?

【第13回 - 2018年10月号】多変数微積分:渦巻く場,秘法 εε=δδ-δδ

前半はラグランジュ乗数やヘッセ行列、ストークスの公式などが扱われています。

後半はベクトル積とナブラ  \nabla の関係式と物理との関係です。ビオ-サバールの法則、マクスウェル方程式、ナビエ-ストークス方程式など、物理関係の用語が並びます。

次の問題は一見とっつきにくいですが、解答を見て「なるほど!」と思いました。

題5 閉多角形各辺にその辺のサイズの外向き垂ベクトル  \mathbf{n}_i を植える.  \sum_{i} \mathbf{n}_i = 0 である(各  \mathbf{n}_i を90°捻った和は閉 =0.捻る前の和も =0).閉多面体の類似はいかに?アルキメデスの浮力を説明しなさい.

*1:素因数分解をしたときに(1以外の)平方因子を持たない数のこと。つまり、素因数分解が相異なる素数の積になる。

*2:フェルマーの小定理の一般化

*3:つまり、 \alpha < \beta を満たす任意の正の実数  \alpha, \ \beta に対して、  \alpha < p/q < \beta を満たす素数  p, \ q が存在する。

*4:あまり理解できていないです…。

現場復帰への活動が参考になる ~ 『うつ病九段』読書メモ

先崎学さんの『うつ病九段』

うつ病患者の一人として、とても気になり手に取ってみました。

なぜこの本が気になったか?

「自分がしていた仕事と似ている部分が多いのでは?」と直観的に思ったのが、この本が気になった理由です。


著者の先崎さんはプロ棋士

頭をフル回転させて対局をこなすことはもちろん、将棋界の発展のための活動もされていました。


自分の休職前の仕事はシステムインフラの設計プロジェクト管理

システムインフラの設計には技術力が不可欠で、技術力を日々磨いて実際の業務システムに適用するため、頭を使う業務です。

設計業務と並行して、複数のプロジェクトのマネジメントをしていました。

こちらもマネジメントスキルという技術を持って、複数の関係者との調整をはじめとする人間対人間のかなり泥臭い業務をこなします。


ひとことで言えば、プレイングマネージャーとしての活躍が求められる立場です。

頭を使う仕事人を動かす仕事を両立させている中で精神的に参ってしまったというのが共通しているように思えました。

初期症状と回復に向かう過程での症状が似ている

この本を読むと、先崎さんと私の初期症状と回復に向かう過程がとても似ていることに気付きました。

入院有無の違いは大きな違いですが、それ以外は似ているところが多くありました。

これに気付いて、この本にどんどん引き込まれました。

ちなみに、31ページに書かれている先崎さんの経験は非常に共感しました。うつ病あるあるなのかもしれません。

先崎さんの現場復帰の過程はリワークそのもの?

現時点(2018年10月時点)の私の目標は、職場復帰に向けてリワークの通所を始めることです。

リワークとは、精神疾患により休職している人の職場復帰に向けたトレーニンを指します。

いろいろな形態がありますが、私が通所を目指しているリワークでは、平日週5日で施設に通い(通勤トレーニング)、疑似的な職場での業務を行います。復職や再発防止に向けた自己分析のようなカリキュラムなども含まれます。


先崎さんは、仲間と将棋を打ったり、多くの人がいる場に顔を出すなどして、徐々に現場復帰に向けた活動を進めました。

その結果、約1年の休養を経て、現場復帰されています。

この過程が、サラリーマンの私にとってのリワークそのものだと感じました。


それでは、

  • 自分はどのような心構えでリワークに臨むか?
  • もう少し先を見て、復職~再発防止に向けてどう活動するか?

を、先崎さんの活動と対応付けて考えようと考えるようになりました。

この本の後半の復帰過程についてはメモを取り、自分なら何をするかを考えながら読みました。

中間管理職の人におすすめの本

私と同じように、中間管理職でプレイングマネージャーとして活動している中で精神的に疲れてしまった人におすすめの本です。

私はまだ現場復帰の途中ですが、この本のことをたまに思い起こしながら活動していきたいと思います。