7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

連載「組合せ数学の雑記帳」~『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』では2019年4月から、連載「組合せ数学の雑記帳」(八森正泰)が始まりました。

この記事では、連載の内容のメモを毎号追記していきます。

私は学生時代に組合せ論に興味を持った時期があり、この連載はとても楽しみです。 *1

【第1回 - 2019年4月号】超平面の切り分ける領域の個数はいくつ?

d 次元空間を n 枚の超平面で切り分けるときにできる領域の個数  f_d(n) を考えるのが今回のテーマです。

d=3 の場合が、2019年度の東京工業大学の入試問題で扱われています。

amathnojaku.livedoor.blog

いくつかの専門用語が出てきますが、高校生でも十分理解できる内容だと思います。

頭の中で超平面を少しずつ動かすイメージができて楽しい記事です。

キーワード

  • 空間上のいくつかの点が一般の位置にある/縮退している
  • 超平面:d-1 次元のアフィン部分空間
  • 直線配置/平面配置/超平面配置(それぞれ d=2 / d=3 / 一般の d の場合)
  • シュレフリの式:  f_d(n) を d と n で書いた式

【第2回 - 2019年5月号】包除原理,半順序集合,そして再び超平面配置

高校数学でベン図とともに出てくる  |A \cup B| = |A| + |B| - |A \cap B| を一般化した公式(包除原理)からスタートします。

包除原理を部分集合どうしの包含関係(半順序関係の一例)を使って見直し、メビウスの反転公式を導きます。

最後に、前回の超平面配置について再考します。超平面( d-1 次元アフィン部分空間)とその交わりがなす頂点などのアフィン部分空間を、半順序集合の元と見ることになります。

キーワード

  • 包除原理(包含排除の原理とも呼ばれる)
  • 集合 E のべき集合  2^E : E の部分集合すべてからなる集合
  • 順序関係と半順序集合(poset)
  • ハッセ図:順序関係を図式化したもの
  • ランク n のブール束  B_n : n 元集合のべき集合のなす半順序集合
  • 階層的な半順序集合に定められるランク関数:集合の位数  | \cdot | の拡張に見える。
  • メビウス関数とメビウスの反転公式
  • ザスラフスキーの定理:超平面配置がなす領域数を与える公式
    • 超平面配置から半順序集合が得られ、アフィン空間の次元を加味すると得られる。

【第3回 - 2019年6月号】マトロイドと有向マトロイド

マトロイドとは、有限集合上の集合族で、ある3つの条件を満たすものを言います。

この条件を読むと、「集合に1点を加える(または除く)」という操作がポイントのようです。

マトロイドの2つの集合が連続変形できるとか、順序関係で極大な要素は基底と呼ばれるとか、双対を持つとか、集合・位相・線形代数でよく出てくる用語が記事の中に登場します。

実際、マトロイドはベクトル空間の一次独立性の抽象化と説明されることが多いようです。
記事を慎重に読み進めていくと、この説明は納得できました。

そして、マトロイドの構造に符号の情報を追加したものが有向マトロイドと呼ばれ、この連載の第1~2回で出てきた超平面配置につながっていると説明されています。

【第4回 - 2019年7月号】グラフのON/OFFゲームと計算量の話

グラフ *2 上の頂点をランプに見立てて、「一定のルールに従ってON/OFFすることでランプをすべて消す」というON/OFFゲームが扱われています。

与えられたグラフに対して、「どのような開始状態でも、最終的にランプをすべて消すことができるか?」が今回の主要な問題です。

この問題に対する答えの導き方が記事の前半で説明されています。この説明は難しい数学を使うことなく、ある意味で数学パズルのように理解できます。


そこから考察を進めると、2元体  \mathbb{F}_2 上の線形代数に帰着されることが後半に書かれています。

これは『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の研究問題に出てくる隣接行列に関係するようです。 *3 この関係については、個人的に興味があるので、手を動かして計算してみたいテーマです。

記事の中盤では、ON/OFF問題を例とした計算量とP≠NP問題について書かれています。PとNPの対になるcoNPという概念もあるようです。

最後には、前回記事のマトロイドとの関係が言及されています。


今回までで、超平面配置/マトロイド/ON/OFF問題が深いところでそれぞれが関係しあっていることが示唆されています。今後が楽しみです!

【第5回 - 2019年8月号】曲がったものをまっすぐにすること

第3回で出てきた超平面配置から考えを進めるところから始まります。

手書きで図を書いてみました。

https://lh3.googleusercontent.com/wvsRZ3lEz4-uPCRC2Noc7GNbYzQweuB-tcEigNZbQTrWu-t8Vib3UPEJikt2NIXIm060nqZT8-YSespDmUzEDjRiRs_fvxlCPVY83cbfaLYxfrXKdPwj4djErtFUKgVmmMKOo5xVbVcQYVGymLeDEUKfQp6lQzq98jH5klPwF91slv5Z49WtEqC0fPnYts67KxdYkgu6cY8__cXEUbUZhvPEmsxZ_Zx8smScJIefdlCW5XAMHV4_cnfF4X4sdRoPNEXVvyt-nNDYyvw6Fwb_jZhn_IFBSiBeAOHXaD0m9eCpX_vygGJBsAHJu9bFolhXVo-mpsPBiTyu9O4BTkpPZ_BpXGD7S6dCkxWrmKPlqvja6xycd1-hM16RM3LDKW7ko0ze0xxcKaO-AtQK7Cl73-BQwhm-a8dlx4A2VSFTtHEzKxe2z280neBy0UJRe9zEP21JTSKV-eiRvZNIoYlq36GG2yHd2waUY71GVkQ3PbPn_49fk35UWlqM4zV5TOysARpR4eZCA7zzYP5xWsC1p2A19a2skRDRa9uRO7LSjjznJcrqLRr3ihajK6PSHcmpB9hlfzDWpG4mAW88-43EqYCKPuh1z71agk9SCvn8JEdGG1Wrz2L4RRItyZ3CAhJl8r-Q2EN9_scDVpMdrwwQbXIO5uOL61wu=w889-h625-no

この図にある伸張可能性問題の計算量を考えるのが今回の主題です。

使う道具は3SATと呼ばれるNP完全問題

…私には難しくて、中盤以降は読み解けませんでした。残念。

*1:専門にしていた表現論関係のセミナーや講演で、ヤング図形と組合せ論の関係がテーマのものが多く、興味を持ちました。あのテトリスのようなヤング図形が、単純に馴染み深く思えたのかもしれません。

*2:頂点と辺がなす集合

*3:細かく言うと、隣接行列+単位行列になる?

連載「やわらかいイデアの話」 ~ 『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』2018年4月号から、藤田博司さんによる「やわらかいイデアのはなし」が連載されています。

位相空間の初歩の話をする連載です。

各月の内容を自分なりにまとめるのがこの記事の目的です。

なお、偶数月号で講義、奇数月号で前月の演習問題の解説をするスタイルの予定とのことです。

私の位相空間の思い出

連載の内容まとめの前に、私にとっての位相空間の思い出を書いておきます。

位相空間を初めて知ったのは大学1年の数学科の講義で、教科書は『集合・位相入門』(松坂和夫著)が指定されました。

集合・位相入門

集合・位相入門

位相空間の特徴づけとして、開集合系の公理から入りました。

その後、閉集合や近傍などの概念、写像の連続性、点列の収束、距離空間、コンパクト性などと進んだ記憶があります。

ユークリッド空間  \mathbb{R}^n での各概念のイメージはおおよそつかめましたが、一般の位相空間ではイメージができないまま卒業したという形です。

【第1回 - 2018年4月号】大きい数・近い点・近傍フィルター

まずは、集合の基本についての説明です。

次は、「十分大きな実数」「十分近い点」という一見すると不思議な言葉について考え、フィルター近傍フィルターの定義が説明されます。

この近傍フィルターを手がかりに、位相について学ぼうということです。

最初に書いた開集合系とは異なる導入なので、今後の展開が楽しみです。

【第2回 - 2018年5月号】大きい数・近い点・近傍フィルター(演習)

第1回で出された4つの演習問題の解説です。

演習3の(5)の証明は私も試みましたが、議論が煩雑になり混乱してしまいました。本文中の記号でいうと、  r, \ \mathrm{P}, \ \mathrm{P'} , \ \mathrm{Q} を証明中で混乱して使ってしまったのが原因でした。

なお、本筋からずれますが、本文中の次の言葉が印象的でした。

大学の数学に初めて触れる人の中には,こうした「正解がひとつでない状況」に戸惑う人も多いようです。
(『数学セミナー 2018年5月号』46ページより引用)

本文中の例とは異なりますが、「ε-δ式の証明で具体的にδを与えるときに複数の候補からどれを選ぶかで悩む」というようなことです。

私にも同じ経験があるので、この気持ちはよ~くわかります。

【第3回 - 2018年6月号】近傍フィルターを生み出すしくみ ― 距離関数と開集合系

これまでに導入された近傍フィルターと今回導入される開集合系が同等であることをが説明されています。

距離空間

  • 距離関数の定義
  • 距離空間の例
    •  \mathbb{R}^2 上の距離(通常とは異なる距離)
    •  \mathbb{N} のべき集合上の距離
      • 部分集合の対称差を使って定義する。
      • カントール空間のひとつの実現方法
    •  \mathbb{Z} 上の)  p 進距離
  • 距離空間であれば、近傍フィルターは定義される。
  • 逆に、近傍フィルターは必ずしも距離関数で与えられるわけではない。
    • 本文に具体例あり。
    • あらゆる距離関数について、具体例で示した近傍フィルターが得られないことを示している。

近傍フィルターと開集合系

  • 近傍フィルターの性質を吟味して、開集合を定義している。
  • 開集合の性質を吟味して、開集合系を定義している。
  • 近傍フィルターを定めることと開集合系を定めることは同等であることを示し、位相空間を定義している。

【第4回 - 2018年7月号】近傍フィルターを生み出すしくみ(演習)

第3回の演習問題の解答が書かれています。

初めて知った概念は超距離不等式でした。

距離空間  (X, d) 上の点  x, y, z \in X に対して、超距離不等式とは  d(x,z) \leq \max \{ d(x,y) , \ d(y,z) \} を言います。これは三角不等式よりも強い不等式です。

超距離不等式を満たす距離関数を満たす距離空間アルキメデス的な距離空間と言います。(例:  \mathbb{N} のべき集合上の距離、( \mathbb{Z} 上の)  p 進距離)

【第5回 - 2018年8月号】連続写像の概念

次のような順番で連続写像を定義しています。

(1) 通常の距離が入っている距離空間  \mathbb{R} について、関数  f: \mathbb{R} \to \mathbb{R} の連続性をε-δ式の議論で考える。
 
つまり、「  f a \in \mathbb{R} において連続であるとは、  f(a) の任意の  \varepsilon -近傍の逆像が  a のある  \delta -近傍になる」ことを確認する。ここで、  \varepsilon -近傍や  \delta -近傍が区間であることに注意。
 
(2) 開区間を、一般の近傍に拡張して考える。
 
(3) さらに一般化して、2つの位相空間  (X, \mathscr{O}_X) (Y, \mathscr{O}_Y) の間の写像が連続であることを、 X Y近傍を使って定義する。
 
(4) そして、近傍を開集合に拡張しても、連続性を特徴づけられることを確認する。

第1回から一貫して、近傍という概念を話の中心に据えて議論を展開していることがとても印象的です。

新しい位相空間の例

密着位相空間と離散位相空間
なぜこのような名前が付いているか、ようやくわかりました。
ゾルゲンフライ直線
実数全体の集合  \mathbb{R} にある位相を入れた空間。第1回の「十分大きな実数」の定義と関係していると直感しましたが、よく見ると違うもの?

ゾルゲンフライ直線の定義

この連載では、ゾルゲンフライ直線が毎回のように出てきます。備忘のため、その定義を書いておきます。

実数全体の集合を、ここでは  \mathbb{S} と書きます。

 p \in \mathbb{S} に対して、  \mathbb{S} の部分集合  A  p の近傍であることを次のように定義します:ある実数  q ( < p) が存在して、半開区間  ( q , p ]  A の部分集合になる。

これにより、  \mathbb{S} の各点に近傍フィルターが定まり、  \mathbb{S}位相空間になります。この位相空間ゾルゲンフライ直線と呼びます。

よって、  A \subset \mathbb{S} が開集合であることの必要十分条件は、「  p \in A のとき、ある正の数  r (p-r , p ] \subset A なるものが存在すること」です。

【第6回 - 2018年9月号】連続写像の概念(演習)

第5回で出てきた3つの演習問題の解答が書かれています。

非常に詳細に書かれていて、大学数学を初めて勉強する人にはとても参考になると思います。

特に、演習1の解答では、何を証明すべきかの考え方がわかりやすく書いてあります。

【第7回 - 2018年10月号】閉集合・境界・同相写像

前半は、閉集合について扱われています。

  • 触点・閉包・境界の定義
  • 閉集合の定義と開集合/閉集合の直感的イメージ
  • 位相空間(が定義された集合)  X の部分集合  A についての以下の4つの演算の関係
    • 補集合を取る演算  X \setminus A
    • 閉包を取る演算  \mathrm{Cl}(A)
    • 内部を取る演算  \mathrm{Int}(A)
    • 境界を取る演算  \mathrm{Bd}(A)

後半は、開写像を明確に意識させた上で、同相写像の定義が述べられています。

以下の文章は、写像 *1 の必要性を端的に示しています。

連続な全単射が開集合を開集合にうつすとは限らないという事実は,連続な全単射といえども,位相空間の構造を完全に保つわけではないことを意味します.群やベクトル空間などの代数系においては,準同型で全単射であれば同型写像になるのですが,位相空間の場合は,そうなっていません.
(『数学セミナー 2018年10月号』73ページより引用)

最後は位相不変量が説明されていて、位相不変量には“精緻さや粗さ”があることがほのめかされています。

【第8回 - 2018年11月号】閉集合・境界・同相写像(演習)

第7回の演習問題3問に加えて、写像の連続性に関する例題が挙げられています。

【第9回 - 2018年12月号】基本近傍系・開基・稠密性

第8回までで、位相空間を定義する方法として、開集合系や閉集合系などが説明されました。

今回はこれらに加えて、基本近傍系と開基による定義が説明されています。

これらすべての定義の方法が同値であるというのが、個人的にはとても美しいと感じます。

以下、個人的にあまり知らなかったことのメモです。

  • 第1可算公理を満たす:各点が可算な基本近傍系を持つ。
  • 第2可算公理を満たす:可算な開基を持つ。
    • ユークリッド空間は第2可算公理を満たす。
    • ゾルゲンフライ直線は第1可算公理も第2可算公理もどちらも満たさない。
  • 可分:可算な稠密部分集合を持つ。
  • これらはユークリッド空間の特徴の一部を抽出したものと言える。

【第10回 - 2019年1月号】基本近傍系・開基・稠密性(演習)

第7回の演習問題3問に加えて、以下の2つが書かれています。

  • 集合  X の任意の部分集合族  \mathscr{A} によって生成される位相  \mathscr{O}_{\mathscr{A}}
    •  \mathscr{O}_{\mathscr{A}} \mathscr{A} のメンバーをすべて開集合とするために必要なぎりぎり最小限の開集合のみからなる。(P68より引用)
  • 1つの集合に対して、入れる位相によって可分性は異なる。
    • 本文での例: \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} に入れる3種類の位相

【第11回 - 2019年2月号】点と点を区別する:分離公理

5つの分離公理 \mathrm{T}_i 分離公理」  (i=0,1,2,3,4) を中心に話が進められています。

ちなみに、  \mathrm{T}_2 分離公理を満たす位相空間ハウスドルフ空間と呼ばれています。 *2

各種分離公理が成り立たない例、位相の強弱、直積空間への分離公理の継承について、イメージ図や証明を使ってわかりやすく説明されています。

位相空間フィルターを使った点列の収束の定義は、個人的に初めて知りました。
連続性の性質を含めて、距離空間での定義の自然な拡張になっています。

これまでは分離公理をほとんど意識せずに数学をしてきたので、以下の言葉がとても勉強になりました。

解析学位相幾何学で出会う位相空間の多くはハウスドルフ空間なのですから,ハウスドルフでない空間が一見奇妙に見えるのも無理はありません.しかし,ハウスドルフ空間でない位相空間にも代数幾何学におけるザリスキ位相や,コンピュータ・プログラムの理論におけるスコット位相など,応用上重要な例があります.(67ページから引用)

【第12回 - 2019年3月号】点と点を区別する:分離公理(演習)

第11回の演習問題の解答に加えて、無限個の空間の直積への位相の定め方が書かれています。

直積空間は元の位相空間たちが満たす分離公理を保存しますが、可算性・可分性は必ずしも保存されないようです。

【第13回 - 2019年4月号】離れていることとつながっていること

冒頭は、これまでの連載について振り返りと今後の見通しです。
連載中で漏れていたという、内点の定義も書かれています。

今回のテーマは連結性です。

まずは、離れている(不連結である)という概念について観察をしてから、連結であることの定義をしています。

私が学生時代に教科書に指定された 『集合・位相入門』(松坂和夫) では、連結であることの定義がいきなり書かれていて理解が難しかった記憶があるので、今回のような説明はとてもわかりやすく感じました。

そして、以下の内容について説明されています。

  • 連結な集合の性質
  • 同相写像により連結性が保たれること(位相不変性)
  • 実数直線  \mathbb{R}^1区間、半直線の連結性
  • 弧状連結
    • 弧状連結⇒連結は成り立つが、逆が成り立たないことに注意。
  • 連結成分

最後に、微積分学に出てくる中間値の定理が、より一般化された主張から導かれています。 *3

連結性の証明が難しいと感じていた理由

連結であることは「~を満たす開集合が存在しないこと」と特徴づけられます。

連結性の証明は難しいと思っていましたが、「存在しないこと」を示すことに困難を感じていたのかもしれません。

【第14回 - 2019年5月号】離れていることとつながっていること(演習)

前半は第13回の演習問題の解答です。

後半は直積空間の連結性/弧状連結性についてです。
(定理:2つの連結な位相空間の直積は連結である。逆も成り立つ。)

【第15回 - 2019年6月号】コンパクト性をめぐって

この連載では、フィルターを使って位相空間のいろいろな概念を説明することが多くあります。

今回のテーマのコンパクト性でも、まずフィルターを使った定義をして、いくつかの同値な条件を導いています。

同値な条件の中には、「任意の開被覆が有限部分被覆を持つ」ことが含まれます。

私がコンパクト性を習ったときは有限開被覆で定義されましたが、「なぜそのように定義するか?」を疑問に思っていました。

フィルターを使った議論でスタートすることで、その疑問が自然と解消できたように感じました。

また、ボルツァーノ・ワイエルストラスの定理や最大値原理といった微分積分学における基本的な定理との関係もよくわかります。

【第16回 - 2019年7月号】コンパクト性をめぐって(演習)

第15回の3つの演習問題の解答が書かれています。

主なテーマは有限交叉性、準フィルター、コンパクトなハウスドルフ空間の性質です。

【第17回 - 2019年8月号】正規空間とウリゾーンの補題

第11回に出てきた正規空間 *4 が満たすウリゾーンの補題の証明と適用例について書かれています。

正規空間の特徴を「分離できる」という言葉で捉えるとすると、0と1のように白黒きっちり分けると考えがちです。
ウリゾーンの補題の主張を見たときの私の第一印象は、「グラデーションのように分離できる」ということでした。

ウリゾーンの補題の適用例として、連載全体を通しておなじみの、ゾルゲンフライさんが出てきます。
この記事では、ゾルゲンフライ直線の直積空間であるゾルゲンフライ平面が正規空間でないことが示されています。

ちなみに、松坂和夫『集合・位相入門』のを見てみると、「正規かつ第2可算公理を満たす位相空間は、台集合に適当な距離を入れた距離空間と一致する」という距離づけ定理の証明で、ウリゾーンの補題が使われています。(第6章 §6)

*1:本文では、「開集合であるという性質を前向きに保つ写像」と説明されています。

*2:他に、正則空間(  \mathrm{T}_1 かつ  \mathrm{T}_3 )、正規空間(  \mathrm{T}_1 かつ  \mathrm{T}_4 )もあります。

*3:中間値の定理は、閉区間上の実数値連続関数についての主張である。一般化された主張は、閉区間の代わりに連結な位相空間について述べられている。

*4:本文中の言葉を借りると、正規空間は《空間の各点  p について  \{ p \}閉集合である》かつ《お互いに交わりのないふたつの閉集合を交わりのない開集合のペアで分離できる》空間である。前者は  \mathrm{T}_1 分離公理、後者は  \mathrm{T}_4 分離公理のこと。

連載「高校数学ではじめる整数論」~『数学セミナー』読書メモ

数学セミナーでは、2019年4月号から「高校数学ではじめる整数論(谷口隆)の連載が始まりました。

この記事では、この連載のメモを毎号追記していく予定です。

なお、問題の解答例は以下のサイトに掲載されています。 → 数学セミナー 編集部ブログ

【第1回 - 2019年4月号】素数のレース

「ある数以下の素数全体を与えられた自然数で割った余りで分類したときに、どの余りに属する素数が最も多いか」を観察することから始まります。

そして、リーマンのゼータ関数リーマン予想素数との関係、ディリクレの L 関数と最初の観察結果の関係へとつながっていきます。

リーマン予想は、リーマンのゼータ関数  \zeta(s) だけでなく、ディリクレの L 関数でも成り立つのではないか?」という予想は、数ヶ月前の『数学セミナー』に出ていた…と思いましたが見つけられず。

ちなみに、ディリクレの L 関数の定義  L(s,\chi_4) で関数  \chi_4 を常に 1 となる関数で置き換えると、リーマンのゼータ関数が得られますね。

【第2回 - 2019年5月号】関とベルヌーイの数列

関孝和が考えた数列と二項係数の観察から始めて、ベルヌーイ数 *1  B_n が現れる次のような数について調べています。

  •  j 乗数の和  S_j(n) := 1^j + 2^j + \dots + n^j の公式(べき和の公式)
    • ポイント:  \displaystyle \frac{xe^x}{e^x-1} = \sum_{k=0}^{\infty} B_k \frac{x^k}{k!}
  • 素数に関係する和
  • 余接関数  \cot(x) = \frac{1}{\tan \ x} の部分分数展開とゼータ関数  \zeta(2k) の値の公式

【第3回 - 2019年6月号】あまりたちのなすサイクル

素数  p についてのフェルマーの小定理 *2 とウィルソンの定理 *3 から話が始まります。

(大学数学風に書くと、)整数を素数で割ったあまりの性質を観察して、  (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} *4 が原始  p 乗根を生成元とする巡回群をなすことが説明されています。

【第4回 - 2019年7月号】素数は無数に

素数が無数に存在することの証明法を3つ紹介しています。

  • (1) (結論を否定して)有限個の素数全体の積 + 1 が素数になることを示す証明
  • (2) 任意の正の整数が平方数と無平方数の積で書けることを使う証明
    • この証明での矛盾の導出は、私は初めて見る手法でした。
  • (3)  x 以下の素数の個数  \pi(x) の評価を使う証明
    • 素数定理との関係が見えてきます。また、本文では明記されていませんが  v_p(nn') = v_p(n) + v_p(n') 素因数分解の一意性より)がよく使われています。

【第5回 - 2019年8月号】ベルトランの仮説

ベルトランの仮説とは、「任意の正の整数  n に対して,  n < p \le 2n となる素数  p が存在する」という主張です。

この主張は正しいことが証明されており、いろいろな証明が知られているようです。

この記事では、二項係数  {}_{2n} \mathrm{C}_{n}素因数分解を用いた証明が紹介されています。加えて、上のような素数  p の個数の評価について説明されています。

高校レベルを越える数学は使われておらず、二項係数や対数などの数学Ⅱ・Bを知っている高校生なら、証明の大部分を追いかけることができると思います。

*1:関・ベルヌーイ数とも呼ばれます。

*2: a \in \mathbb{Z} p の倍数でないとき、  a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p} である。つまり、  a \in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} ならば、  a^{p-1} =1 である。

*3: (p-1)! \equiv -1 \pmod{p} 。つまり、  \prod_{a \in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}} a = -1

*4:本文では、  \mathscr{A}_p  \mathbb{F}_p^{\times} と書かれています。

特集「おおきな数」~『数学セミナー2019年7月号』読書メモ

数学セミナー 2019年7月号』の特集は「おおきな数」です。

「大きな数」に,人々はどうかかわってきたか

前半は、(小さい/大きいに限らず)人が数とどうかかわってきたかが書かれています。
後半は、天文学的数やアッケルマン関数(アッカーマン関数といった巨大な数の説明です。

9ページに書かれている「『天文学的数』よりも今は『組合せ論的な数』のほうが大きいものが知られてい」るという指摘に、なるほど!と思いました。

億が兆より大きい? - 大きな数の命名をめぐって *1

この記事の筆者は歴史学者の方で、「億」「兆」や「million」などの東アジアや西洋での数の命名法を歴史的見地から解説しています。

中国では、タイトルにあるとおりに「億が兆より大きい」とする記数法が100年ほど前まであり、これで書かれた文書が残されているようです。

グラハム数,ラムゼー理論,そして,役に立たない定数時間アルゴリズム

まず、記事の中盤に書かれているラムゼー理論における典型的な定理の主張を引用します。

大きな対象を定数個の部分に分解すると,その中のある部分には必ず規則的な構造が現れる.(19ページより引用)

この例として、以下のようなものが挙げられています。

  • グラハム数 および グラハム・ロスチャイルドの定理
    • 超立方体の2頂点を結ぶ線分の色分け問題における、ある数の評価に関連している。
  • ファン・デル・ヴェルデンの定理
    • 主張:十分大きな自然数 n に対して、集合 {1, 2, 3, ..., n} をある個数に分割したとき、ある部分には必ず等差数列が含まれる。
  • セメレディの定理
    • ファン・デル・ヴェルデンの定理を含む定理。
    • 本文の説明を借りると、ファン・デル・ヴェルデンの定理の密度版。

アッカーマン関数ヒルベルト

アッカーマン関数は、この連載の最初の記事で漸化式の形で定義されています。これを再帰という概念を使って再構成しています。

記事の中盤では、再帰と関係の深い順序数の観点で、アッカーマン関数を見直しています。

後半では、アッカーマン関数が現れる数学の例として、代数学におけるネーター性とヒルベルトの基底定理 *2 が説明されています。
この議論の中で、ヒルベルトの基底定理に似た計算量の問題が出てくるのが印象的です。

巨大数の世界

ふぃっしゅ数と呼ばれる巨大数を考案したふぃっしゅさん ( ふぃっしゅっしゅ 🐟🐠 (@kyodaisuu) | Twitter ) による記事です。

「関数を強化する装置を作る→その装置をさらに強化する装置を作る→…」という考えで、巨大数を構築しています。その中で順序数や計算可能性理論などの“本格的な”数学を使うことになるそうです。

最も興味深かったのは、このような巨大数が世界中にいるアマチュア数学愛好者の中から生まれ続けているという点です。
マチュア数学愛好者の1人として、とても楽しい活動だろうというのは手に取るように想像できます!

無限の数 - 順序数・基数・巨大基数

集合論で扱われる巨大基数について、整列集合や順序数、可算性、連続体仮説などの準備をしながら説明をしています。

この中で印象的だったのは、測度論との関係が出てきているという点です。
測度論がσ-加法性のような集合論の言葉がベースに構成されることを考えると自然なことですが、自分の中ではそれらがうまく結びついていなかったので、よい復習になりました。 *3

参考資料

セメレディの定理

連載内の3本目の記事に出てくるセメレディの定理は、以下のブログ記事で詳しく扱われています。
integers.hatenablog.com

順序、可算性、再帰など

教科書としては、『集合・位相入門』(松坂和夫)が有名です。

集合・位相入門

集合・位相入門

再帰性については、数学ガールゲーデル不完全性定理』(結城浩でも扱われています。

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

巨大数論

連載内の5本目の記事を書いたふぃっしゅさんの著書です。PDF版が無料で読めますが、内容が濃く、無料とは思えないクオリティです!
gyafun.jp

*1:個人的には、本題とは外れますが、記事内で示されている19世紀の日本の英和辞典の写真にも、心が惹かれました。

*2:ヒルベルトの基底定理:体上の多変数多項式環の任意のイデアルは有限生成である。(体より広く、可換ネーター環でもよい。)

*3:σ-加法性は、新井仁之『ルベーグ積分講義』の読書メモとして、私のブログの中でも扱っています。また、34ページに出てくる完全集合は、『ルベーグ積分講義』の178ページに出てきます。 wed7931.hatenablog.com

特集「微分方程式の質問箱」~『数学セミナー2019年6月号』読書メモ

数学セミナー 2019年6月号』の特集は微分方程式の質問箱」です。

大学2年時に常微分方程式の講義があり、いろいろな解法を勉強しましたが、なかなか頭に入らなかった記憶があります。

頭に入らなかった理由は「解ける微分方程式は非常に少ないのに、特殊な形 *1微分方程式の解き方を勉強して、どんな意味があるんだろう?」という疑問があったからだと思います。

今回の記事を読んで、微分方程式を解く」の意味を広く解釈することで、疑問が少し解消できたように感じています。

常微分方程式の求積

この記事で、私の中の「微分方程式を解く」という概念が変わりました。

本文では、変数分離形の微分方程式  \frac{dy}{dx} = \frac{f(y)}{g(x)} を解くことを考えています。

主題は、「  \frac{1}{f(y)} dy = \frac{1}{g(x)} dx というように  dx dy を分離する形で変形して両辺を積分して解くこと(求積法)が、なぜ正当性を持つか?」です。

それに対する答えとして「求積法は探すときの方法であると理解して,それが正しいことの証明は別途行うのである.」(10ページより引用)と書かれています。
私にとって、非常に納得感がありました。

微分方程式 解ける?解けない?

この記事の冒頭は、私が疑問に思っていた「解ける微分方程式は非常に少ないのに、…」と全く同じ質問から始まります。

ポイントは以下の4点です。

  • (0) 解の存在と一意性の定理を証明する。
  • (1) 解を構成する関数を初等関数より広げて考える。
    • 例:リウヴィルの操作による解の構成、特殊関数、(梅村の)古典関数
  • (2) (0)の保証のもとで、関数列の構成や冪級数などを使った解をとにかく作る。
    • 例:ピカールの逐次近似法、コーシーの折れ線の方法
  • (3) 解を書き下せない場合は、解関数の性質を調べる。
    • 「本当は何を知りたいか」を考える。

C は原始関数につくアクセサリーじゃない

不定積分を求めると必ずついてくる積分定数  C に関する話題です。
改めて問われると、積分定数が何かはきちんと答えられないなと考えさせられました。

私がハッとさせられたのは、積分定数区間上で一定値をとる定数関数である *2 ということです。

不定積分が関数であることを考えると、本文に書かれている「不定積分=原始関数+定数関数」という式のほうがしっくりきます。

このことを理解するために、  \int \frac{1}{x} dx = \log |x| + C \ (x \neq 0) の絶対値記号が意味するところが詳しく説明されています。

後半では、  C= \infty を許して微分方程式の解を記述するという、私は考えたことがなかった議論が出てきます。

微分方程式の解の存在と一意性

リプシッツ連続性と解の一意的存在定理 *3 の関係が書かれています。

微分積分学の基本定理平均値の定理の重要性が改めてよくわかります。 *4

偏微分方程式の導出と解法 ― 熱方程式を例として

これまでは常微分方程式の話でしたが、この記事は偏微分方程式について書かれています。

熱方程式をテーマとして、以下の2つが書かれています。

微分方程式は身の回りにどのように活かされているか

微分方程式が使われる以下のような例が説明されています。

  • 放射性物質半減期
    • 放射性炭素による年代測定、(応用例として)人口減少
  • 共振現象
    • 水風船、建築物の耐震設計、アナログ式ラジオとRLC回路
  • 弦の振動

ちょっと寄り道ですが、式を見るときに次元を意識するという指摘も気に入りました。

広がる微分方程式の世界

※『数学セミナー2019年7月号』に書かれていますが、こちらのブログ記事で紹介します。

前半では、簡単な微分方程式の例として、2つが挙げられています。

  • 力の釣り合い
    • 例:回転中の液体、懸垂線
  • 統計的量の記述(膨大な離散量を連続量で近似する)

後半は変分問題について書かれています。

微分方程式を満たす関数を動かして、汎関数(関数に実数を対応させる写像)が最大最小になる関数を求める問題です。

具体例として、フェルマの原理から導かれる光の屈折(スネルの法則)などが挙げられています。

多くの変分問題に適用できるオイラー-ラグランジュ方程式に関する記載もあります。

*1:変数分離形、同次/非同次線形微分方程式など。

*2:19ページより引用

*3:定理の呼び名は本文からの引用です。非常にうまい言い方だなと感心しました。

*4:平均値の定理の重要性を感じたときのことは、以下の記事でも書いています。 wed7931.hatenablog.com

*5:数学ガールポアンカレ予想』第10章に出てくる熱方程式がどのように導出されるかが詳しく書かれています。 wed7931.hatenablog.com

*6:フーリエ級数についての過去の記事です。 wed7931.hatenablog.com

『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』読書メモ

加藤文元さんの『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』

IUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論は、ずーっと気になっていたテーマだったので発売後すぐに読み始めました。

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

IUT理論についてうっすら知っていたこと

この本の読書メモを書く前に、IUT理論について私がこれまでに知っていたことをまとめておきます。

原論文はもちろん読めなかったが、いくつか気になる用語があった。

IUT理論に関する論文は、提唱者である望月新一教授のサイトで公開されています。

www.kurims.kyoto-u.ac.jp

論文は試しに読んでみようと思いましたがダウンロードしてほぼ終わりという感じでした。(あたりまえ)
また、関連する講演資料などもざっと目を通しましてみましたが、何が何だかわからず…。

シアターや通信など、一見数学で使うとは思えない用語があるんだなというのはわかりました。

著者の加藤文元教授のIUT理論に関する講演を見た。

この本の著者の加藤文元教授が、MathPower2017というイベントで行ったIUT理論に関する講演の動画は見たことがありました。

www.nicovideo.jp

この講演で印象的だったのは「たし算とかけ算の関係は複雑すぎてよくわからない!」ということ。

言葉自体は非常に印象的でしたが、何を意味しているかはわかりませんでした。

ABC予想はIUT理論から得られる帰結の1つである。

ABC予想そのものはIUT理論が話題になるまでほとんど知りませんでした。

IUT理論が出てきたときに「ABC予想が解決された!」とニュースになりましたが、そのニュース自体はあまり注目していませんでした。

おそらくIUT理論から得られる系の1つなんだろうなと思っていました。
そして、ニュースになった理由は「ABC予想」という用語自体がキャッチーだったからだろうと。

この本でIUT理論の雰囲気はよくわかった!

上に書いたようにIUT理論についての断片的な知識がありましたが、この本を読んでそれらが頭の中でつながって、IUT理論の雰囲気がよくわかりました。

「たし算とかけ算の関係は複雑すぎてよくわからない!」という言葉のこころ *1 が理解できたことが理解の突破口になったように思えます。

IUT理論について、この本では中学数学+αの知識で読めるくらいに非常にやさしく書かれており *2「これで自分もIUT理論がわかるはずだ!」と錯覚してしまうほどでした。

数学とは?数学者は何をしているか?が効果的に書かれている。

この本では単にIUT理論という数学的内容だけを説明しているわけではなく、「数学とは?」「数学者は何をしているか?」がとても詳しく書かれています。
「詳しく」というよりも「効果的に書かれている」と言った方が適切かもしれません。

IUT理論の概要を解説するという道具を使って、「数学はどういう学問か?」を説明しているようにも思えます。

私は大学院まで数学を専門にして勉強してきましたが、数学はどういう学問かをうまく理解できないまま卒業したので、とてもいい気づきが得られました。

数学そのものに興味がある方におすすめの本です。

いろいろな数学の概念をわかりやすく説明している。

高校・大学で習うような数学の概念のわかりやすい説明も、この本の特徴です。
私にとっては既知の概念が多かったですが、こんなにわかりやすく説明できるのか!と感動しました。

特に、に関する説明は非常に素晴らしいです。

最後に:対称性は数学で本質的に重要?

この本の前に読んだのは、E.フレンケル教授の『数学の大統一に挑む』でした。
読書メモは以下のブログに書きました。

wed7931.hatenablog.com

『数学の大統一に挑む』では、量子物理学では対称性が重要な役割を果たすことが書かれています。

このブログで紹介した『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』でも、2つの数学の舞台の間で対称性を伝え合うことをベースにIUT理論が説明されています。

2冊連続で、対称性が重要なキーワードとして出てきました。

やはり数学では、「対称性」が本質的に重要なものなのかもしれません。

*1:第4章までを読めばわかります。

*2:大学数学科の2年生くらいで習う「群」の知識もあるといいですが、第7章で非常にわかりやすく説明されているので大丈夫です。

『世にも美しき数学者たちの日常』読書メモ

二宮敦人さんの『世にも美しき数学者たちの日常』は、「小説幻冬」への連載開始から私のTwitterタイムライン上で話題になっていました。連載をまとめた単行本の出版直後に読んでみました。

世にも美しき数学者たちの日常

世にも美しき数学者たちの日常

数学者が考えていることが意外だった。

私は大学院まで数学科で数学の勉強をし、就職後約10年のブランクを経て、趣味として改めて数学の勉強を再スタートしました。

学生時代は周りに数学者はたくさんいましたが、数学を教えてもらう以外の接点はあまりなかったと思います。また、新しい定理を発見したことはなく、すでに構築済みの数学理論を追うことが精いっぱいでした。

この本を読むと、日常的に数学をして新しい定理を発見する数学者の意外な考え方が見えてきました。

  • 数学が難しくなりすぎているのかもしれない。
  • 問題を作る(良い予想を作る)ことの大変さ
  • 数学者どうしの交流で研究が進む一方で、孤独とのたたかいもある。
  • 研究内容や研究の仕方に独自性を出すということ

これらは学生時代に身近に数学者がいたにもかかわらず気付かなかったことでした。

「数学とともに生活をする」。自分にも経験があった。

この本に出てくる数学者の言葉を見ていると、机に向かって必死に勉強するというよりも、数学とともに生活をしている様子が見て取れます。

そういえば、私にもそういう経験があったなぁと思い出しました。

学生時代に付き合っていた彼女(現在の妻)と一緒にいるときの話。なかなか解けずに頭の中で引っ掛かっていた問題の解決への道筋がひらめき、その瞬間に彼女そっちのけで机に向かって計算を始めて答えを出すことが何度かありました。

最初はそんな私の様子を不審がって見ていましたが、そのうち慣れていったようです。

数学者ではない数学を愛する人たち

この本では数学者だけでなく、「在野の探求者たち」と題して、数学者ではない数学を愛する人たちのインタビューも書かれています。

私もそのような人たちの端くれとして、大いに共感しながら読み進めました。

TwitterFacebookを見ていると、このような人たちは意外とたくさんいることがわかります。人によっていろいろな数学との接し方があり、私もそのような方たちと交流を進めることで刺激を受けています。

ちなみに、私の数学の接し方は以下のツイートのように表現できます。



最後に:書籍以外にもWeb上の記事も

この本の著者の二宮敦人さんと数学者である黒川信重先生と加藤文元先生の鼎談のWeb記事もあります。くだけた感じでとても楽しいお話です。

【前半】
www.gentosha.jp

【後半】
www.gentosha.jp