7931のあたまんなか

テーマ:数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など。うつと生きる30代後半の男です。

d次元ルベーグ測度~『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)の読書メモ第4回です。

第Ⅰ部「面積とは何か」の最後のまとめです。

これまでの読書メモはこちらです。

今回は第6章「d次元ルベーグ測度」のまとめです。

一般の次元のルベーグ測度

第5章までで議論されてきた2次元実数空間  \mathbb{R}^2ルベーグ測度を拡張して、第6章では一般の  d 次元実数空間  \mathbb{R}^dルベーグ測度を定義します  (d = 1,2,\dots)

2次元で成立する各命題は、  d 次元でも同様に成立することが説明されています。

第6章の主張と第1~5章の主張の対応

第6章で説明されているいろいろな定義や定理は、第1~5章の定義や定理に対応しており、証明も同様にできます。

ここではその対応をまとめます。

第6章の主張 対応する第1~5章の主張 備考
定義6.1 定義1.2 基本直方体、基本立方体
定義6.2 定義2.1 ルベーグ外測度
定理6.3 定理2.16
定理6.4 定理3.2 ルベーグ外測度の劣加法性
定義6.5 例2.2 有界閉集合
定義6.6 定義2.7 ルベーグ内測度
定義6.7 定義2.10, 定義3.18 ルベーグ可測集合、ルベーグ測度
定義6.8 定義3.10 開集合
定理6.9 定理3.16'
開集合はルベーグ可測 系3.15'
閉集合ルベーグ可測 系3.9'
定理6.10 (1) 定理4.1
定理6.10 (2) 定理3.1' ルベーグ測度の完全加法性
定理6.11 (2)の条件 定義5.1 カラテオドリの可測性
定理6.11 定理5.5 ルベーグ可測とカラテオドリ可測が同値
系6.12 系4.3 等測核、等測核
定義6.13 命題2.11 (2) 零集合
系6.14 系4.4
定理6.15 定理4.5

カラテオドリの意味での可測性~『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)の読書メモ第3回です。

これまでの読書メモでは、 ジョルダンとルベーグの2つの方式での面積の定義ルベーグ測度の性質 について整理しました。

今回は第5章のまとめです。

カラテオドリによるルベーグ可測性の特徴づけ

上にあるこの節の見出しは、第5章のタイトルそのものにしました。

第2章で定義されたルベーグ可測性と同値なものとして、カラテオドリによる可測性の定義があることが、この章を通じて説明・証明されています。

ルベーグ測度は「ルベーグ外測度=ルベーグ内測度」で定義されました。

カラテオドリの意味で可測であることは、ルベーグ外測度のみで記述されます。(定義5.1)

これまでに説明されているジョルダン可測性やリーマン可積分性との関係をまとめると、次のような図で表現できます。


補足

命題5.1について

  • 主張:定理4.1との類似性に注目する。
    • 定理4.1の  \mathfrak{M} \mathfrak{M}^* に置き換えたものが命題5.1の主張である。
  • 証明:定理4.1の位相空間論を使った証明とは異なる。

定理5.5の証明

  • 81ページ6行目:定理3.1'を使う。
  • 81ページ8~9行目:開集合  G と集合  G \cup A, \ G \cap A^c ルベーグ可測であること(系3.15と定理4.1より)と定理3.1'より、8行目の最右辺を得る。また、ルベーグ可測集合  B に対して  m(B) = m^* (B) であることと  E \cap A \subset G \cap A 、および補題2.9より、9行目を得る。
  • (2)⇒(1)の証明で開集合  G U をとれる理由:補題3.17の(i)と(ii)を繰り返し適用すればよい。
  • (2)⇒(1)の  m^*(A) = \infty の場合の証明の結末:  A_nルベーグ可測であることと  A= \bigcup_{n=1}^{\infty} A_n および定理4.1 (4)から、  Aルベーグ可測になる。

ルベーグ測度の性質〜『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)の読書メモ第2回です。

前回の読書メモでは、ジョルダンルベーグの2つの方式での面積の定義について整理しました。

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今回は、第3〜4章に書かれているルベーグ測度の性質をまとめます。

第3〜4章を読む上で注意すること

  • 各主張がルベーグ測度 or ルベーグ測度のどちらに関することか?
  • ルベーグ測度が有限 or 一般の場合(有限とは限らない)か?
    • 全般的に、前半で有限の場合、後半で一般の場合を示している。

2つの加法性

  • ルベーグ測度は完全加法性(または σ-加法性)を持つ。
    • 有限の場合:定理3.1、一般の場合:定理3.1’
  • ルベーグ外測度は劣加法性を持つ。
    • 一般の場合:定理3.2(有限の場合を含む)
  • ルベーグ外測度が完全加法性を満たすかは難しい問題
    • 選択公理を仮定すると、完全加法性を満たさない例が作れる。(40ページ)
    • 相異なる任意の2つの集合の距離が正となる集合族では、ルベーグ外測度の完全加法性が成り立つ。(定理3.3)

2つの可測性の関係

リーマン積分と2つの方式の面積の関係

  • リーマン積分の定義は46〜47ページ参照。
  • 区間上でリーマン積分可能な関数について、x軸と閉区間上のグラフが囲む領域はルベーグ可測であり、その領域の定積分ルベーグ測度は一致する。(定理3.7)
  • 言い方を変えると、リーマン積分で求められない図形の面積がルベーグ積分で求められる可能性がある。


どんな集合がルベーグ可測集合か? *1

  • 空集合、全体集合
  • 閉集合
    • 有限の場合:定理3.9、一般の場合:系3.9'
  • 開集合
    • 有限の場合:系3.15(平面の2進分解と2進正方形を使う)、一般の場合:系3.15'
  • 可算個のルベーグ可測集合の和集合と共通部分
  • ルベーグ可測集合の補集合
    • 上の2つは定理4.1より。また、差集合も同様。
  • 等測包 *2 と零集合による特徴付け(系4.4)
    • 等測包と等測核 *3 の差を零集合にできることがポイント(系4.3)
    • 定理3.16'を使って証明する。


ルベーグ測度の計算

  • 差集合のルベーグ測度の計算(系4.2)
  • 包含関係について単調性を持つ集合族が収束する集合のルベーグ測度を極限値で求める。(定理4.5)
  • ルベーグ測度は平行移動・裏返し・回転に関して不変である。(定理4.8~4.10)

その他:補題3.8の証明の補足

  • 49ページの証明3行目:定理A.10を使う。
  • 50ページの上から2行目:収束列がコーシー列であることを使う。

*1:ルベーグ可測集合は定義3.18で定義されている。

*2:等測包:ルベーグ可測集合を含む、ある開集合たちの共通部分

*3:等測核:ルベーグ可測集合に含まれる、ある閉集合たちの和集合

ジョルダンとルベーグの面積の定義〜『ルベーグ積分講義』読書メモ

ルベーグ積分に再入門したいということで、ルベーグ積分講義』(新井仁之 著)を読んでいます。

堅くもないけど多少の骨がありそうなこの本に行き着きました。

現時点で読み終えた第6章までの印象では、ほとんど行間がなくとても読みやすい本です。
頭の中で計算を追える程度に詳しく書かれています。

この本の読書メモ第1回として、第1〜2章についてまとめます。

なお、わかりやすさとイメージを優先して、この記事では「面積」という用語を正しく使っていない部分もありますので、ご注意ください。

2つの方式の面積の定義

「そもそも図形の面積とは何か?」からスタートして、

が書かれています。

ジョルダン方式は、有界であまり複雑ではない図形の面積を測定できます。

一方、ルベーグ形式は、有界に限らない複雑な図形の面積を測定することができます。

ルベーグ形式はジョルダン形式より精密に面積を測定でき、両者で測定した面積が同じ値になることが、第3章で述べられています。

2つの方式の比較

2つの方式の詳細は本文参照としますが、両者を比較すると次のように整理できます。


その他のメモ

  • 第1章を読む前に、付録A(実数の基本的な性質)と付録D(可算集合)を読んでおくとよい。
  • PDFの[注1]にある基本長方形での定義の仕方が、もともとのジョルダンの定義の仕方である。
  • 第2章を読む前に、この章でよく使われる問題2.1の主張を頭に入れておくとよい。
  • 定理2.8で述べられている性質は、位相空間論でコンパクトと呼ばれる。

読むタイミングがぴったりだった! ~ 『仕事論』読書メモ

私は『水曜どうでしょう』の初期からのファンで、DVD全巻購入はもちろん、出演者の著作もなるべく読むようにしています。

しかし、藤村D嬉野Dの本『仕事論』は、すぐに読もうという気にはなれませんでした。

仕事論

仕事論


というのも、メンタル不調による休職中で、ビジネス書からは意識的に距離をとっていたため。不調のときにビジネス書を読むと気分が落ち込むことが経験的にわかっていたからです。

『仕事論』というタイトルが、ストレートにビジネス書然としていて、意識的に避けていました。


しかし、リワーク(復職支援プログラム)の受講が終了し、職場復帰の意欲が出てきました。

何気なく書店で手に取ってパラパラめくると、「読めるかもしれない」と思い、勢いで購入しました。


番組のことをよく知っているせいか、すらすら読むことができました。


ざっくりまとめると、この本には次の3つが書かれていると考えています。

前半(第1~2章)
組織(会社)で働くということ
中盤(第3~5章)
仕事をする上で、自分の意志を持つことが大事
後半(第6章)
自分の人生における仕事の位置づけ


前半は、組織で働くことについての2人の強力な思いが書かれていて、メンタルが弱っているときだとかえって追い詰められて、この先を読むのをあきらめたと思います。

正論であり筋が通っているだけに、非常に強力な思いがあふれていて圧倒されました。


中盤は、これまでの自分の仕事の中でできなかったことを、改めて思い起こさせてくれました。

もうすぐ来る復職の後は、自分の意志を持って仕事ができるようにしたいものです。


後半は、書かれている内容が自分の理想に近いという印象を持ちました。

水曜どうでしょう』でやっていることはその理想を貫き通しているように見える。
しかし、実際問題、多くの人にとって理想通りに生きるのは難しい。
だから、この番組のような生き方にみんなが憧れて、これほど支持を受けているのだと感じました。

この理想は、DVD副音声の中で繰り返し語られています。(以下の記事でまとめています)

wed7931.hatenablog.com


全体を通して思うのは、メンタル不調から立ち直りつつある現時点で読むのがぴったりな本だったということです。

道に迷いそうになったときには、また読み返したいと思います。

連載「やわらかいイデアの話」 ~ 『数学セミナー』読書メモ

数学セミナー』2018年4月号から、藤田博司さんによる「やわらかいイデアのはなし」が連載されています。

位相空間の初歩の話をする連載です。

各月の内容を自分なりにまとめるのがこの記事の目的です。

なお、偶数月号で講義、奇数月号で前月の演習問題の解説をするスタイルの予定とのことです。

私の位相空間の思い出

連載の内容まとめの前に、私にとっての位相空間の思い出を書いておきます。

位相空間を初めて知ったのは大学1年の数学科の講義で、教科書は『集合・位相入門』(松坂和夫著)が指定されました。

集合・位相入門

集合・位相入門

位相空間の特徴づけとして、開集合系の公理から入りました。

その後、閉集合や近傍などの概念、写像の連続性、点列の収束、距離空間、コンパクト性などと進んだ記憶があります。

ユークリッド空間  \mathbb{R}^n での各概念のイメージはおおよそつかめましたが、一般の位相空間ではイメージができないまま卒業したという形です。

【第1回 - 2018年4月号】大きい数・近い点・近傍フィルター

まずは、集合の基本についての説明です。

次は、「十分大きな実数」「十分近い点」という一見すると不思議な言葉について考え、フィルター近傍フィルターの定義が説明されます。

この近傍フィルターを手がかりに、位相について学ぼうということです。

最初に書いた開集合系とは異なる導入なので、今後の展開が楽しみです。

【第2回 - 2018年5月号】大きい数・近い点・近傍フィルター(演習)

第1回で出された4つの演習問題の解説です。

演習3の(5)の証明は私も試みましたが、議論が煩雑になり混乱してしまいました。本文中の記号でいうと、  r, \ \mathrm{P}, \ \mathrm{P'} , \ \mathrm{Q} を証明中で混乱して使ってしまったのが原因でした。

なお、本筋からずれますが、本文中の次の言葉が印象的でした。

大学の数学に初めて触れる人の中には,こうした「正解がひとつでない状況」に戸惑う人も多いようです。
(『数学セミナー 2018年5月号』46ページより引用)

本文中の例とは異なりますが、「ε-δ式の証明で具体的にδを与えるときに複数の候補からどれを選ぶかで悩む」というようなことです。

私にも同じ経験があるので、この気持ちはよ~くわかります。

【第3回 - 2018年6月号】近傍フィルターを生み出すしくみ ― 距離関数と開集合系

これまでに導入された近傍フィルターと今回導入される開集合系が同等であることをが説明されています。

距離空間

  • 距離関数の定義
  • 距離空間の例
    •  \mathbb{R}^2 上の距離(通常とは異なる距離)
    •  \mathbb{N} のべき集合上の距離
      • 部分集合の対称差を使って定義する。
      • カントール空間のひとつの実現方法
    •  \mathbb{Z} 上の)  p 進距離
  • 距離空間であれば、近傍フィルターは定義される。
  • 逆に、近傍フィルターは必ずしも距離関数で与えられるわけではない。
    • 本文に具体例あり。
    • あらゆる距離関数について、具体例で示した近傍フィルターが得られないことを示している。

近傍フィルターと開集合系

  • 近傍フィルターの性質を吟味して、開集合を定義している。
  • 開集合の性質を吟味して、開集合系を定義している。
  • 近傍フィルターを定めることと開集合系を定めることは同等であることを示し、位相空間を定義している。

【第4回 - 2018年7月号】近傍フィルターを生み出すしくみ(演習)

第3回の演習問題の解答が書かれています。

初めて知った概念は超距離不等式でした。

距離空間  (X, d) 上の点  x, y, z \in X に対して、超距離不等式とは  d(x,z) \leq \max \{ d(x,y) , \ d(y,z) \} を言います。これは三角不等式よりも強い不等式です。

超距離不等式を満たす距離関数を満たす距離空間アルキメデス的な距離空間と言います。(例:  \mathbb{N} のべき集合上の距離、( \mathbb{Z} 上の)  p 進距離)

【第5回 - 2018年8月号】連続写像の概念

次のような順番で連続写像を定義しています。

(1) 通常の距離が入っている距離空間  \mathbb{R} について、関数  f: \mathbb{R} \to \mathbb{R} の連続性をε-δ式の議論で考える。
 
つまり、「  f a \in \mathbb{R} において連続であるとは、  f(a) の任意の  \varepsilon -近傍の逆像が  a のある  \delta -近傍になる」ことを確認する。ここで、  \varepsilon -近傍や  \delta -近傍が区間であることに注意。
 
(2) 開区間を、一般の近傍に拡張して考える。
 
(3) さらに一般化して、2つの位相空間  (X, \mathscr{O}_X) (Y, \mathscr{O}_Y) の間の写像が連続であることを、 X Y近傍を使って定義する。
 
(4) そして、近傍を開集合に拡張しても、連続性を特徴づけられることを確認する。

第1回から一貫して、近傍という概念を話の中心に据えて議論を展開していることがとても印象的です。

新しい位相空間の例

密着位相空間と離散位相空間
なぜこのような名前が付いているか、ようやくわかりました。
ゾルゲンフライ直線
実数全体の集合  \mathbb{R} にある位相を入れた空間。第1回の「十分大きな実数」の定義と関係していると直感しましたが、よく見ると違うもの?

ゾルゲンフライ直線の定義

この連載では、ゾルゲンフライ直線が毎回のように出てきます。備忘のため、その定義を書いておきます。

実数全体の集合を、ここでは  \mathbb{S} と書きます。

 p \in \mathbb{S} に対して、  \mathbb{S} の部分集合  A  p の近傍であることを次のように定義します:ある実数  q ( < p) が存在して、半開区間  ( q , p ]  A の部分集合になる。

これにより、  \mathbb{S} の各点に近傍フィルターが定まり、  \mathbb{S}位相空間になります。この位相空間ゾルゲンフライ直線と呼びます。

よって、  A \subset \mathbb{S} が開集合であることの必要十分条件は、「  p \in A のとき、ある正の数  r (p-r , p ] \subset A なるものが存在すること」です。

【第6回 - 2018年9月号】連続写像の概念(演習)

第5回で出てきた3つの演習問題の解答が書かれています。

非常に詳細に書かれていて、大学数学を初めて勉強する人にはとても参考になると思います。

特に、演習1の解答では、何を証明すべきかの考え方がわかりやすく書いてあります。

【第7回 - 2018年10月号】閉集合・境界・同相写像

前半は、閉集合について扱われています。

  • 触点・閉包・境界の定義
  • 閉集合の定義と開集合/閉集合の直感的イメージ
  • 位相空間(が定義された集合)  X の部分集合  A についての以下の4つの演算の関係
    • 補集合を取る演算  X \setminus A
    • 閉包を取る演算  \mathrm{Cl}(A)
    • 内部を取る演算  \mathrm{Int}(A)
    • 境界を取る演算  \mathrm{Bd}(A)

後半は、開写像を明確に意識させた上で、同相写像の定義が述べられています。

以下の文章は、写像 *1 の必要性を端的に示しています。

連続な全単射が開集合を開集合にうつすとは限らないという事実は,連続な全単射といえども,位相空間の構造を完全に保つわけではないことを意味します.群やベクトル空間などの代数系においては,準同型で全単射であれば同型写像になるのですが,位相空間の場合は,そうなっていません.
(『数学セミナー 2018年10月号』73ページより引用)

最後は位相不変量が説明されていて、位相不変量には“精緻さや粗さ”があることがほのめかされています。

【第8回 - 2018年11月号】閉集合・境界・同相写像(演習)

第7回の演習問題3問に加えて、写像の連続性に関する例題が挙げられています。

【第9回 - 2018年12月号】基本近傍系・開基・稠密性

第8回までで、位相空間を定義する方法として、開集合系や閉集合系などが説明されました。

今回はこれらに加えて、基本近傍系と開基による定義が説明されています。

これらすべての定義の方法が同値であるというのが、個人的にはとても美しいと感じます。

以下、個人的にあまり知らなかったことのメモです。

  • 第1可算公理を満たす:各点が可算な基本近傍系を持つ。
  • 第2可算公理を満たす:可算な開基を持つ。
    • ユークリッド空間は第2可算公理を満たす。
    • ゾルゲンフライ直線は第1可算公理も第2可算公理もどちらも満たさない。
  • 可分:可算な稠密部分集合を持つ。
  • これらはユークリッド空間の特徴の一部を抽出したものと言える。

【第10回 - 2019年1月号】基本近傍系・開基・稠密性(演習)

第7回の演習問題3問に加えて、以下の2つが書かれています。

  • 集合  X の任意の部分集合族  \mathscr{A} によって生成される位相  \mathscr{O}_{\mathscr{A}}
    •  \mathscr{O}_{\mathscr{A}} \mathscr{A} のメンバーをすべて開集合とするために必要なぎりぎり最小限の開集合のみからなる。(P68より引用)
  • 1つの集合に対して、入れる位相によって可分性は異なる。
    • 本文での例: \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} に入れる3種類の位相

【第11回 - 2019年2月号】点と点を区別する:分離公理

5つの分離公理 \mathrm{T}_i 分離公理」  (i=0,1,2,3,4) を中心に話が進められています。

ちなみに、  \mathrm{T}_2 分離公理を満たす位相空間ハウスドルフ空間と呼ばれています。 *2

各種分離公理が成り立たない例、位相の強弱、直積空間への分離公理の継承について、イメージ図や証明を使ってわかりやすく説明されています。

位相空間フィルターを使った点列の収束の定義は、個人的に初めて知りました。
連続性の性質を含めて、距離空間での定義の自然な拡張になっています。

これまでは分離公理をほとんど意識せずに数学をしてきたので、以下の言葉がとても勉強になりました。

解析学位相幾何学で出会う位相空間の多くはハウスドルフ空間なのですから,ハウスドルフでない空間が一見奇妙に見えるのも無理はありません.しかし,ハウスドルフ空間でない位相空間にも代数幾何学におけるザリスキ位相や,コンピュータ・プログラムの理論におけるスコット位相など,応用上重要な例があります.(67ページから引用)

【第12回 - 2019年3月号】点と点を区別する:分離公理(演習)

第11回の演習問題の解答に加えて、無限個の空間の直積への位相の定め方が書かれています。

直積空間は元の位相空間たちが満たす分離公理を保存しますが、可算性・可分性は必ずしも保存されないようです。

【第13回 - 2019年4月号】離れていることとつながっていること

冒頭は、これまでの連載について振り返りと今後の見通しです。
連載中で漏れていたという、内点の定義も書かれています。

今回のテーマは連結性です。

まずは、離れている(不連結である)という概念について観察をしてから、連結であることの定義をしています。

私が学生時代に教科書に指定された 『集合・位相入門』(松坂和夫) では、連結であることの定義がいきなり書かれていて理解が難しかった記憶があるので、今回のような説明はとてもわかりやすく感じました。

そして、以下の内容について説明されています。

  • 連結な集合の性質
  • 同相写像により連結性が保たれること(位相不変性)
  • 実数直線  \mathbb{R}^1区間、半直線の連結性
  • 弧状連結
    • 弧状連結⇒連結は成り立つが、逆が成り立たないことに注意。
  • 連結成分

最後に、微積分学に出てくる中間値の定理が、より一般化された主張から導かれています。 *3

連結性の証明が難しいと感じていた理由

連結であることは「~を満たす開集合が存在しないこと」と特徴づけられます。

連結性の証明は難しいと思っていましたが、「存在しないこと」を示すことに困難を感じていたのかもしれません。

*1:本文では、「開集合であるという性質を前向きに保つ写像」と説明されています。

*2:他に、正則空間(  \mathrm{T}_1 かつ  \mathrm{T}_3 )、正規空間(  \mathrm{T}_1 かつ  \mathrm{T}_4 )もあります。

*3:中間値の定理は、閉区間上の実数値連続関数についての主張である。一般化された主張は、閉区間の代わりに連結な位相空間について述べられている。

特集「ひろがりゆく可積分系の世界」~『数学セミナー2019年3月号』読書メモ

数学セミナー 2019年3月号』の特集は「ひろがりゆく可積分系の世界」です。

私にとって、可積分系という言葉は聞いたことがある程度でした。

5つの記事を読んでいく中で、数学だけでなく物理や生物など他分野との関係が広がっていることがわかりました。

そして、私がこれまでに読んだ本の中でも触れられていた概念であることに気付かされました。

諸科学に飛び出す可積分系

前半は可積分系の定義とその数学的な例、後半は他分野へ波及している内容が書かれています。

微分方程式は通常は解けないもの」 *1 だというのが出発点です。

可積分系の定義

本文では「厳密な定義がない」と断りを入れた上で、次のように記載されています。

本来は解けないはずの非線形微分方程式や差分方程式などが,ある意味で厳密に解け,さまざまなよい構造が付随するとき,それらの方程式を可積分系と呼ぶことが多い.(8ページより引用)

「よい構造」として5つが挙げられており、それぞれについて代表的な方程式や解が例示されています。

例えば、KdV方程式、サイン・ゴルドン方程式、戸田格子方程式、ソリトン解などです。

特に、ソリトンは粒子のような振る舞いを見せる孤立波として、この特集では何度も出てきます。 *2

また、従属変数の変数変換や、微分方程式の離散化による差分方程式の導出などがよく使われる方法のようです。

越境する可積分系数理モデルアルゴリズム

まずは、可積分系とそれを解くアルゴリズムの関連性を以下の例で説明しています。

次に、非線形シュレディンガー方程式 *4 や短パルス方程式を例に、可積分性や解の構造を崩さずに離散化する方法が書かれています。

最後に、ローグ波と呼ばれる海洋に突然現れる巨大な波の研究について触れられています。

箱玉系の広がり

箱玉系について、「浅水波を記述するKdV方程式の特徴であるソリトン現象に注目し,箱と玉のみからなる系に対する単純なルールとして抽出したもの」 *5 と説明されています。

力学系オートマトン、確率論などへの広がりを持つ概念として、具体例を多く交えて書かれています。

書かれている内容を実際に手を動かして計算すると、簡単なパズルをやっているようで楽しい気持ちになりました。

この記事を読み進めながら「箱玉系やオートマトンの図をどこかで見たことがある」と思って調べてみると、10年以上前に読んだ『渋滞学』(西成活裕に同じような図が出てきていました。

渋滞学 (新潮選書)

渋滞学 (新潮選書)

粘菌とソリトン

粘菌というと、イグノーベル賞を受賞した迷路を解く研究がまず思い浮かびますが、ソリトンのような挙動を示す生物としても注目されています。

これは、それを研究する生物学者による記事です。

数式は全く出てこず、粘菌のソリトンのような動きを表す写真が多く登場し、見ているだけでおもしろくて不思議な気持ちになります。

工業デザインと可積分系

工業デザインに出てくる“美しい”とか“魅力的”とされる曲線を定式化する取り組みを行ったところ、ソリトンや可積分性の性質が現れたというお話です。

対数型美的曲線準美的曲線など、「美的」という言葉が入る不思議な数学用語(?)も出てきます。

曲率、相似幾何 *6 、リッカチ方程式、弾性曲線などの概念が出てきます。

ちょっと寄り道:クロソイド(緩和曲線)

本筋とは離れますが、道路の曲線設計で使われるクロソイド(緩和曲線)がちらりと説明されています。

道路設計でなぜこれが出てくるかがずっと疑問でしたが、この記事を読んで「ハンドルを切る=曲率を連続的に変化させる」と解釈すると合点がいきました。

*1:8ページより引用

*2:私にとって最もわかりやすいソリトンの説明は、25ページにありました。

*3:行列の固有値を計算するアルゴリズムの1つ

*4:式に出てくるローマン体の i は虚数単位を表します。

*5:17ページより引用

*6:《大まかに言えば,ユークリッド幾何では「直線」を基準とし曲線の曲がり具合を表現しているが,相似幾何では円を基準にしているのである.》(30ページより引用)