7931のあたまんなか

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『数学ガール/ポアンカレ予想』第4章 読書メモ

今回は数学ガールポアンカレ予想』第4章の読書メモです。

第1章と第2章はなかなか理解できずに読むスピードがゆっくりでした。第3章からは快調に読み進められていて気持ちいいです。

なお、前回の第3章の読書メモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com
第4章のタイトルは「非ユークリッド幾何学。私たちが“よく知っている”ユークリッド幾何学の範囲を越えてみようという内容です。

私にとっては断片的に知っていたことが、この章を読むことでつながったことが大きな収穫でした。

【目次】

第4章のキーワード

この章を読む前に知っていたこと

大学時代に幾何学 *1 の講義を一応受けていたので、中途半端に知識はありました。

(1) 非ユークリッド幾何学の存在

ユークリッド幾何学が「ユークリッド幾何学の平行線公理がない幾何学」であるということは知っていました。

そして、その中に球面幾何学双曲幾何学の2つがあるらしい…と。

しかし、

  • それぞれの幾何学がどのようなもので、そのような性質を持っているか?
  • ユークリッド幾何学と呼ばれるものは、この2つしかないのか?

ということはわかっていませんでした。

(2) たくさんある「リーマンなんとか」

リーマン計量リーマン幾何学リーマン多様体という言葉は知っていました。

しかし、定義の理解は不十分で、それぞれの関係がわかっていませんでした。

修士論文擬リーマン多様体を扱っていたにもかかわらずです。(恥ずかしながら…)

この章を読んで「なるほど!」と思ったポイント

(1) サッケリの予言的発見

この章の前半で、なるほど!と思ったのは、サッケリの予言的発見です。

ユークリッド幾何学における平面上の2本の直線の性質を示したものです。

ここから“すべての”非ユークリッド幾何学が導出されるわけではないと理解しましたが、球面幾何学と双曲幾何学における直線の性質をよく表しています。

ちなみに、それぞれの幾何学における“直線”とは、次のようなものです。

ユークリッド幾何学
私たちが“よく知っている”平面上の直線
球面幾何学
球の中心をとおる平面で切った断面が作る円(大円と呼ばれる)
双曲幾何学
ポアンカレ円板モデルで示される“円弧”や上半平面モデルで示される“半円”

また、直線の本数を使って整理した次のような記述も印象的です。

球面幾何学
直線  l 外の点  P を通過して、  l と交わらない直線は存在しない
ユークリッド幾何学
直線  l 外の点  P を通過して、  l と交わらない直線は1本存在する
双曲幾何学
直線  l 外の点  P を通過して、  l と交わらない直線は2本以上存在する

(2) 「計量によって無数の幾何学が作れることをリーマンは示した」

本文の158ページに書かれていた非常に印象的な言葉です。

これを読んで、リーマン計量リーマン幾何学リーマン多様体の3つがバチッ!とつながりました。

リーマン計量の定義と意味合いをメモします。

  • 線素  ds は、座標平面上の点  (x_{1},x_{2}) に応じて、  x_{i} 座標の微小変化  dx_{i} を使って微小な距離を決めている(  i =1,  2 )。
  • 座標平面上の関数  g_{ij} \ (i,  j = 1, 2) を使うと、  \displaystyle ds^2 = \sum_{i=1}^{2} \sum_{j=1}^{2} g_{ij} x_{i} x_{j} と書ける。
    •  g_{ij} はある点のある向きに対して、ユークリッド幾何学の距離よりどれくらいずれているかを表す関数と言える。
  • 行列  (g_{ij}) が“正定値” *2 であるとき、  ds^2リーマン計量という。 *3

(3) 修士論文に書いた「擬リーマン多様体」って?

ここで13年前に書いた修士論文で扱った擬リーマン多様体についての記述を振り返ってみます。

和が偶数になる *4 自然数  p, q について、擬リーマン多様体  \mathbb{R}^{p,q}ユークリッド空間  \mathbb{R}^{p+q}擬リーマン計量  dx_{1}^2 + \cdots + dx_{p}^2 - dx_{p+1}^2 - \cdots - dx_{p+q}^2 を入れたものとする。

「正定値じゃないから、擬(pseudo)が付くんだ!」といまさらながら思いました。

おわりに:『曲線と曲面の微分幾何』を改めて読みたい!

この章を読んだことで、学生時代にわからなかったことが関連付けて理解できました。10年以上のモヤモヤが解消された形です。

そしてこの章を読むことで、微分幾何学の教科書だった『曲線と曲面の微分幾何』の第3章までの概要が理解できることがわかりました。

曲線と曲面の微分幾何

曲線と曲面の微分幾何

時間があれば、この教科書をよく読んでみたいなぁと思っています。

*1:微分幾何学位相幾何学

*2:少し雑に書いています。

*3:この条件は『数学ガールポアンカレ予想』には書いていません。『多様体の基礎』(松本幸夫)の定義参考にしましたにしました。

*4:不要な条件かもしれませんが、一応書いておきます。