7931のあたまんなか

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齋藤正彦『線型代数入門』の自分用インデックス

大学1年の線形代数学の講義での教科書は齋藤正彦『線型代数入門』でした。

線型代数入門 (基礎数学)

線型代数入門 (基礎数学)

当時は講義に追いつくのに必死でこの教科書をじっくり読んでいませんでした。

それから20年、ブックオフでたまたま見かけて、懐かしくて購入しました。

じっくり読んでみると、「今の方が理解できるなぁ」と過信してしまうほど、すいすいと読めました。

読みっぱなしではもったいないので、メモというか自分用のインデックスを作りました。

冗長にならないように書き方が正確ではない部分もありますので、ご認識ください。

第1章 平面および空間のベクトル

  • 高校数学で学ぶベクトルの基礎【§1~2】
  • 行列を使った線型変換:回転、折り返し、正射影【§3~4】
  • 行列式とベクトル積(外積)【§5】
  • 第2章 §7で、合同変換(直交変換と平行移動の合成)とアフィン変換が扱われている。
  • 第4章 §1の例1で、ベクトルの概念をある商集合として見直す。

第2章 行列

行列の基本変形と階数(ランク)【§4】

  • 基本変形の操作にあたる3種類の基本行列はすべて正則であることに注意。
  • 一次方程式系の拡大係数行列の左基本変形と係数行列の階数の関係【[5.1]】

内積とユニタリ行列・直交行列【§6】

  • 随伴行列:  A^* := {}^t \bar{A}
    •  (A \mathbf{x}, \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, {}^t \bar{A} \mathbf{y}) に注意。
  • エルミート行列:  A=A^*
    •  (A \mathbf{x}, \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, A \mathbf{y}) を満たす。
  • ユニタリ行列:  A^* A = E
    •  (A \mathbf{x}, A \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, \mathbf{y}) を満たす。内積を変えない。
  • 実行列の場合はそれぞれ転置行列、対称行列、直交行列。

いろいろな行列【問題】

  • 正規行列:  A^* A = A A^*
    • つまり、エルミート行列とユニタリ行列は正規行列。
  • 交代行列:  {}^t A = -A
  • 冪零行列:  \exists k \ \ \text{s.t.} \ \ A^k = O
  • 確率行列:各行の成分の和が1
  • 交換子積:  [ X,Y ] = XY-YX

第3章 行列式

  • 多重線型性かつ交代性を持つ関数は、定数倍を除いて行列式をとる写像 det に一致する。【定理[2.6]】
  • 行列の階数は、0でない小行列式の最大次数に等しい。【定理[2.10]】
  • 余因子展開【定理[3.1]】
  • クラメルの公式:係数行列が正則な一次方程式系の唯一解の記述【定理[3.5]】
  •  A \in M_n(\mathbb{Z}) が正則かつ  A^{-1} \in M_n(\mathbb{Z}) であることの必要十分条件 |A| = \pm 1 。【問題10】

第4章 線型空間

用語と記号など

  • 一対一写像単射、上への写像全射、一対一対応は全単射のこと。【§1】
  • 線型空間  \mathbf{V} の部分集合  \mathbf{S} から生成される部分空間は  \mathrm{Span} \ \mathbf{S} などと書く。【[4.2]】
  • 線型写像  T について、 T(\mathbf{V}) \mathrm{Im} \ T T^{-1}(\mathbf{o}') \mathrm{Ker} \ T なとど書く。【[4.4]】
  • 線型部分空間の直和  \mathbf{W}_1 \dot{+} \mathbf{W}_2 \mathbf{W}_1 \oplus \mathbf{W}_2 なとど書く。【[4.8]の前】
  • 線型写像  T に対する行列  A は表現行列と呼ばれる。【§5の冒頭】
  • 線型写像の階数は  \mathrm{rank} \ T  = \mathrm{dim}(\mathrm{Im} \ T ) と書かれる。【[5.1]の後】

線型空間の例

  • 斉次一次方程式系、隣接n項間漸化式、斉次線型微分方程式など【§2 例1~10】
    • 基底と次元の計算【系[3.11]の後】
  • 双対空間と双対基底【問題12】
  • 商空間【問題13】

線型空間の次元と基底

  • (1) 一次方程式系の理論での証明【[3.8]】
  • (2) 極大線型独立系を使った証明【[3.10]】
  • 基底の変換行列【§3の後半】

線型写像

  • 次元定理【[5.1]の後】
  • 行列の階数の特徴付け【[5.3]の後】
  • 基底変換による表現行列の変化: \exists \  P \  \text{正則 s.t.} \  B=P^{-1}AP【[5.3]の後】

 n 次以下の実係数多項式空間  \mathbf{P}_n (\mathbb{R}) の正規直交基底の例

第5章 固有値固有ベクトル

固有値と行列の対角化

  • 行列の対角化ができるための必要十分条件と構成方法【[1.2]'】
  • 行列の対角化が可能 ⇔ 各特性根の固有空間の次元=根の重複度【[1.4]】
  • 固有空間分解と漸化式および微分方程式の解の関係【§1 例8~9】
  • 可換な行列の和と行列の冪の固有値【[2.3]】

ユニタリ空間における正規変換の特徴【§2】

  • 可換な行列がユニタリ行列で同時上三角化可能な条件【[2.2]'】
  • 正方行列がユニタリ行列で対角化可能 ⇔ 正規行列【定理[2.4]'】
  • 正規変換のスペクトル分解(部分空間への射影子を利用)【[2.6]の後】
  • エルミート変換 ⇔ 固有値はすべて実数【系[2.8]】
  • ユニタリ変換 ⇔ 固有値はすべて絶対値1の複素数【系[2.8]】*1
  • 正値行列 *2 と半正値行列の特徴【[2.9]~定理[2.11]】

実計量空間における対称変換の特徴

  • 実計量空間では対称変換に着目して、§2と類似した結果を得る。【§3】
  • 実正規行列の実数の範囲内での標準形【§6】
  • 3次元空間での原点周りの回転(オイラー角)【§6】

二次形式、二次曲線、二次曲面【§4~5】

  • 実対称行列とそれを対角化する直交行列に注目する。

第6章 単因子およびジョルダンの標準形

  •  \mathbb{K} -係数の1変数多項式を成分とする正方行列を考える。本文ではこれを  x -行列と呼んでいる。
  • 基本変形によって、成分である多項式にある整除関係が成り立つ対角行列に変形する。【定理[1.2]】
  • ここから議論を進めて、任意の正方行列がジョルダン細胞の並べ方を除いてただ1つのジョルダン行列に相似であることを示す。【定理[2.2]】*3
  • 行列の冪を線型結合した多項式を考え、最小多項式の性質とハミルトン・ケイリーの定理を導く。【§3】

第7章 ベクトルおよび行列の解析的取扱い

行列値関数【§1】

  •  \mathbb{R} 上のある区間  I で定義された、 m \times n 型実行列をとる写像  A(t) = (a_{ij}(t)) を行列値関数という。
    • つまり、各  a_{ij}(t) I から  \mathbb{R} への関数。
  • 通常の関数と同じように極限や連続性が定義され、微分、さらにテイラー級数を考えることができる。

行列の冪級数とノルム【§2】

  • 行列  X の冪級数  \sum_{p=0}^{\infty} a_p X^p を考えることができて、  X固有値によって収束・発散がわかる。【§2 1°、定理[2.1]】
  • 指数級数  \exp \ X = \sum_{p=0}^{\infty} X^p / p! はすべての行列  X で収束する。さらに、対数級数や等比級数を考えられる。【§2 2°】
  •  \mathbb{R}^n にいろいろなノルムが入れられるように、  M_{m,n}(\mathbb{R}) にもノルムを入れることができ、解析学と同じような概念が考えられる。【§2 3°】

非負行列の性質【§3】

  • ペロン・フロベニウスの定理【定理[3.1]】
  • フロベニウス根【定理[3.3]】

『齋藤正彦 数学講義 行列の解析学』に詳細が書いてあった(2020/6/15追記)

齋藤正彦 数学講義 行列の解析学

齋藤正彦 数学講義 行列の解析学

  • 作者:齋藤正彦
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 単行本
この本の前半部分に、第7章を詳細に説明した内容が書かれていました。
その内容をメモしてみました。
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附録

附録1 多項式

附録2 ユークリッド幾何学の公理

附録3 群および体の公理

おわりに

大学4年で表現論を勉強することになり、線形代数をよく使うようになりました。

このときは佐武一郎『線型代数学』を参考にしていました。

線型代数学(新装版) (数学選書)

線型代数学(新装版) (数学選書)

時間があれば、この本についても自分用インデックスを書いてみようと思います。

*1:問題3に冪零行列、問題5に実交代行列の固有値の性質が書かれている。

*2:正定値行列とも言う。

*3:定理[2.2]の直前に書かれている「  n 次行列  A の特性行列  xE-A x -行列としての階数は  n である」がわかりませんでしたが、その前まではついていけました。