「数学セミナー 2017年10月号」の読書メモ ~ その1
「数学セミナー 2017年10月号」の読書メモです。
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不可能性の証明/古代ギリシャから現代まで
- 数学において「~は不可能である」ことが証明されることは、後ろ向きのことではなく、新しい問題のスタート。
- 例えば、どこまで仮定を緩めれば「不可能ではなくなる」のかを考える研究に発展するなど。
ギリシャの三大作図問題とガロア理論
- 古代ギリシャ数学での「ギリシャの三大作図問題」(以下の(1)~(3))は、2000年以上経ってからすべて「不可能である」ことが証明された。
- (1) 与えられた立方体の2倍の体積を持つ立方体の1辺の長さを作図できるか?
- (2) 与えられた角を3等分するように作図できるか?
- (3) 与えられた円と同じ面積を持つ正方形の1辺の長さを作図できるか?
- この証明の主題はガロア理論。これは、一般の代数方程式(実数係数の多項式)が解の公式を持つかどうかを判定するために使われ、代数学の基本である群や体を土台とした理論である。
- もう1つの基本の「環と加群」はどんな応用があるんだっけ…?
- 「ギリシャの三大作図問題」は幾何学の問題だが、いずれも代数学の問題に置き換えることができ、最終的には代数学の問題として不可能性が証明された。
- (1)は、という方程式に置き換えられます。3次方程式は解の公式を持ちますが、その解を作図することは不可能です。
- ちなみに、折り紙では3次方程式の解を作図する(折る)ことができるとのこと。(数学セミナー2017年5月号|日本評論社の『2次方程式の解の公式からガロア理論へ』参照)
- (2)は、書籍『数学ガール/ガロア理論』(結城浩)の第5章に詳しく書かれています。定規とコンパスによる作図可能性についても詳しいです。
- (3)は、が超越数であることが証明できればいいのかな?
連続体仮説
- 連続体仮説とは、「実数全体の集合と自然数全体の集合の真に中間の濃度を持つの部分集合は存在するか?」という問題。(ヒルベルトの第1問題)
- ゲーデルの第一不完全性定理によると、どのように公理を設定しても証明も反証もできない文が存在する。
- この定理は 書籍『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』(結城浩) に書かれていますが、自分は1回読んだだけでは証明が追いきれませんでした…。
- 公理的集合論で標準的に使われるZF公理系においては、連続体仮説が「証明も反証もできない文」となる。
- つまり、連続体仮説を満たす集合は「あってもなくてもおかしくない」ということがわかり、そこから公理的集合論の研究がさらに進んでいるとのこと。
- 上の2つの定理が同時に成立することを知ったことが、10月号でいちばんの衝撃でした。
- 恥ずかしながら、これまではとの間の濃度を持つ集合は「存在しない」と思い込んでいました。
他の記事のことも書こうと思いましたが、今回はここまでにします。
(印象的なのは、超越数、アローの不可能性定理、リーマン面の3つ)
想像以上に詳しく書きすぎました。これからはもっと簡潔に書くようにします。