7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

数学の本を読むのは楽しいけど、問題を解くのはそうでもない。

以前から少し気になっていたことを何気なくツイートしてみました。

最近は『数学セミナー』や大学数学の教科書などを読んで、内容が理解できるのがとても楽しいと思っています。

一方、数年前は趣味で高校数学の問題を解いていましたが、あまりワクワクせずに途中で終わってしまいました。

この差は何だろう?と思っていて、ツイートをしました。

いくつかの反応がありましたので、ご紹介します。

数学は「解ける」ことが重要視されているのでは?

なるほど!と思いました。

確かに、高校までの数学ではこの傾向が強いなと。ある意味で必然なのかもしれません。

自分にとって、「数学の本を読む」ということは大学で数学を勉強することで知りました。

このツイートに対して、このような反応をしました。今考えると、少し的外れかもしれません。


ある程度の見通しというか結果が予見できる方が気持ちいいから?

このツイートは自分のことを言い当てているように思えて、ドキッとしました。

数学に限らず、自分にとって、ある程度の見通しというか結果が予見できる方が気持ちいいことが多いです。

逆に、手探りで何かを見つけるのはあまりワクワクしません。

これまでの仕事の進め方を考えても、その通りだなと思いました。

このツイートが端的に本質を突いている?

おっしゃる通りという感想です。このツイートもドキッとしました。

特集「複素関数の質問箱」まとめ(その2)~『数学セミナー 2018年6月号』読書メモ

数学セミナー 2018年6月号』の特集「複素関数の質問箱」を引き続き読んでいます。

前回は、複素数の定義とその性質、そして複素関数と実関数の関係についてまとめました。

wed7931.hatenablog.com

今回は複素関数微分について、「複素微分とはなんですか.ふつうの微分とはどう違うのですか.」(金子元さん)をもとにまとめました。

この記事で扱っているのは、次の3つです。

  • 複素微分の定義
  • コーシー・リーマンの関係式
  • 正則関数の性質

なお、今回は手書きの資料をベースに記事を構成しています。見づらい部分がありましたら、申し訳ありません。

複素微分の定義とコーシー・リーマンの関係式

まとめの概要は以下の通りです。

  • 実数値1変数関数の微分と実数値2変数関数の偏微分の性質のおさらい
  • 複素関数微分の定義とその性質
  • 3種類の関数の共通点:“線形写像で近似できる”こと
  • コーシー・リーマンの関係式の導出

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複素関数は“角度を保つ”写像

上で見てきた  h(z)=zF'(z) を違う見方で考えます。

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正則関数の性質と解析関数

概要は以下の通りです。

  • 正則関数:領域上での複素微分可能性
  •  k 導関数:実関数と同様の定義
  • 解析関数:べき級数展開可能な関数
  • 上の3つは、複素関数では“同値”な概念
    • やや雑な言い方をしています。

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その他

本文では、一致の定理や上記の性質が実関数では成り立たない例が書かれています。

なお、一致の定理の詳しい議論は後続の記事に書かれています。

個人的な感想

コーシー・リーマンの関係式は学生時代に勉強したことがありますが、その式を導出するための動機付けが初めてわかりました。

ちなみに、学生時代は複素関数が実部と虚部を表す2変数関数を使って  F(z) = \varphi(x,y) + i \psi(x,y) と表せることが、なぜか納得できませんでした。おそらく、関数(写像)の概念の理解が不十分だったためだと思います。

手書き資料のPDF版

これまでに説明した5枚の手書き資料をPDFにして以下の場所に置きました。

www.dropbox.com

『数学ガール/ポアンカレ予想』第3章 読書メモ

数学ガールポアンカレ予想をじっくり読んでいます。

今回は第3章の読書メモです。

前回の第2章のメモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com

第3章のタイトルは「テトラちゃんの近くで」。数学の分野で言うと、位相空間がテーマです。

個人的には、第2章までの位相幾何学よりもなじみがある分野なので、すんなり読むことができました。

【目次】

第3章のキーワード

数式が出てこないのはやっぱり気になっていた

83ページに、第2章までのトポロジーの議論についてテトラちゃんの不安が書かれています。

「気になっているのは、数式が出てこない点です。絵を描いて終わりにしていいのかな、なんて」
(中略)
「数式が出てこないと、まちがったことをやっていないのかなと考えてしまうんです。伸ばしたらこうなりますね、貼り付けるとこうなりますね、数学なのに、それでいいんでしょうか。あたしは、まちがうのが恐いんです」

第2章まで読んで、自分もまさに同じことを思って、モヤモヤしていました。

この章で位相空間としての同相写像が定義されたので、この後にこのモヤモヤが解消されるかなと期待しています。

一般化と特殊化

この章には、一般化と特殊化(抽象化と具体化)の例が出てきます。

一つは、合同と相似。(1:1 と 1:r と見なせる。)

もう一つは、距離空間位相空間

距離空間から距離を捨てて、位相空間での写像の連続性の定義をしようとしています。

この議論をする際の、「抽象は捨象」という言葉が非常に印象的でした。

同一視と不変量

同相写像による位相空間の同一視、そして同相写像で変化しない量として位相不変量があることが説明されています。

ちなみに、グラフの一筆書き(第1章)については、グラフ同型での不変量としてオイラー閉路があるそうです。

グラフにはどういう位相を入れるんだろう?という疑問が出てきますね。

連続→極限→微分微分同相

そして、119ページの次のような議論は考えたことがなく、非常に新鮮な印象を受けました。

「連続が定義できたってことは、極限が使えるわけだよね。だったら、連続だけじゃなくて微分も定義できるんじゃない?」
「そうはいかない。微分を定義するには位相構造だけではなく、微分構造を入れる必要がある。そして、微分のことまで考えたときの《同じ形》のことを微分同相という」

そのほか気になったことや感想など

学生時代は松坂和夫『集合・位相入門』を参考に位相空間論の勉強をしました。

集合・位相入門

集合・位相入門

距離空間はイメージできたものの、一般の位相空間はなかなかイメージできずに、理解が不十分なままでした。

今一度、改めて『集合・位相入門』を読んでみたいと思いました。卒業時にこの本を手放してしまったのを後悔しています…。

特集「複素関数の質問箱」まとめ(その1)~『数学セミナー 2018年6月号』読書メモ

数学セミナー 2018年6月号』の特集は複素関数の質問箱」です。

複素関数は学生時代に講義を通して勉強しましたが、理解不足で終わってしまった分野です。

印象として残っているのは、実関数とは違って複素関数は「定義域内のある部分集合上での性質がわかれば定義域全体での関数の様子がわかる」ということでした。ですので、今回の特集で改めて複素関数を知ることができると期待しています。

この特集の7つの記事のうち、最初の2つの記事を読みましたので、その内容をまとめます。

複素数ってそもそも何なの?」(須川俊幸さん)

複素数の定義と様々な特徴づけについて書かれています。

複素数の定義

高校で習うレベルの内容なので、ここでは定義を省略しますが、次の特徴が説明されています。

また、複素数平面を使って考える幾何的特徴も説明されています。複素数  z複素数  c を掛けることは、 z を原点を中心に  \mathrm{arg} \ c 回転させて  |c| 倍引き延ばすことになります。

実数体  \mathbb{R} を使った複素数体  \mathbb{C} の3つの特徴づけ

 \mathbb{R}^2 に演算を入れる

集合  \mathbb{R}^2 に、複素数の実部と虚部の和と積の演算結果を保つように和と積を定める。これにより  \mathbb{R}^2 は体となり、  \mathbb{C} と同型になる。

多項式環  \mathbb{R}[x] を考える

1変数多項式環  \mathbb{R}[x] を、多項式  x^2+1 が生成する単項イデアル  (x^2+1) で割った商環  \mathbb{R}[x]/(x^2+1) \mathbb{C} と同型となる*1。特に、 x が代表する同値類が虚数単位に対応する*2

行列を使った特徴づけ

実数を成分にもつ2次正方行列全体  M_2(\mathbb{R}) の元として、  I単位行列 J := \left( \begin{array} {cc} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{array} \right) とする。  J^2 = -I に注意すると、  \{ aI+bJ \ | \ a, \ b \in \mathbb{R} \} は体をなし、  \mathbb{C} と同型になる。 J虚数単位に対応する。

複素数は存在するか?」

上のような特徴づけから、「実数が存在するのであれば、それと同時に複素数も存在する」と答えられるのではないかと述べられています。

奇しくも、2018年6月号の発売直前に次のようなブログを書きましたので、興味があればご覧ください。

wed7931.hatenablog.com

複素数の必要性とその拡張

複素関数論の中の実関数」(中村弥生さん)

この記事では、複素関数の特徴的な性質と複素関数に拡張したことで見えてくる実関数の性質について書かれています。

オイラーの公式

実関数を複素関数に拡張することの例として、  e^{ix} = \cos x + i \sin x の導出を扱っています。また、この式から三角関数の加法定理が得られます。

初等超越関数と特殊関数

本文中で説明されている関数についてのいくつかの用語を挙げます。

解析関数(または正則関数)
収束するべき級数で定義される関数(例: \displaystyle \cos  z = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n}{(2n)!} z^{2n} \ (z \in \mathbb{C} )
初等関数
代数関数、指数関数、三角関数、対数関数たちの線形結合、積、商、合成関数、逆関数をとる操作で得られる関数
初等超越関数
初等関数のうち、特に代数関数ではないもの
楕円積分と楕円関数

不定積分が初等超越関数で表せない例として、楕円積分(例:  \displaystyle \int \frac{1}{\sqrt{1-x^4}} dx )とそこから得られる楕円関数が説明されています。*5

特殊関数

特殊関数について、ガンマ関数  \Gamma (z)ゼータ関数  \zeta (s)超幾何関数が挙げられています。実関数との関係として、次のことが説明されています。

 \mathbb{C} \cup \{ \infty \} 上の関数

実数の場合、数直線上の点が原点からどんどん離れていく場合のその行先を、正方向の極限としての  + \infty と負方向の極限としての  - \infty の2種類を考えます。

複素数の場合で、複素数平面上の点が原点からどんどん離れていく場合のその行先を考えます。

実数のように大小関係がないために2方向の極限のみを考えるわけにはいきません。離れ方はさまざまで偏角に依存するため、最終的に行き着く先を方向の概念を持たない無限遠  \infty と考えます。

そのため、複素関数 \mathbb{C} \cup \{ \infty \} から  \mathbb{C} \cup \{ \infty \} への関数ととらえることがあります。

なお、  \mathbb{C} \cup \{ \infty \} はコンパクト空間で球面  S^2 と同一視できることが書かれています。

ローラン展開

複素関数では  \frac{1}{z} という関数の  z=0 での振る舞いが大きな興味の対象だそうです。

実関数ではテイラー展開がありましたが、複素関数では負べきの項も込めたべき級数展開であるローラン展開が扱われます。展開の中心点について、負べきの項の個数によって次のような名前が付けられます。

負べきの項が有限個
真性特異点
負べきの項が無限個
除去可能特異点
負べきの項がない

また、  -1 次の項の係数を留数と呼びます。留数解析という言葉があるほど重要な数です。

感想

2つ目の記事にある無限遠点の考え方が初めて理解できました。

無限遠点というものがあることは知っていましたが、なぜそれを考える必要があるかがわかっていませんでした。

「原点からの離れ方は偏角に応じて無数にあるが、最終的に行き着く先を方向の概念を持たない無限遠点という1点とする」

これが理解できたのが大きいです。

続きの記事の内容

複素微分と複素積分、正則関数の性質、複素対数関数の多価性、解析接続と続きます。

まずは正則関数の性質まで読むのを目標としたいと思います。

おまけ

2018年3月に複素関数についての気づきをブログに書きました。興味があればどうぞ。

wed7931.hatenablog.com

*1: (x^2+1) が極大イデアルであることから従う。

*2:商環上で  x^2+1 \equiv 0 となることからわかる。

*3:非可換体で、関数の微分を考えるときは左右からの割り算の区別が必要

*4:零因子を持つ。

*5:数学セミナー 2017年4月号』から、「楕円積分と楕円関数 ― おとぎの国の歩き方」が連載されています。

プログラミング教育の題材として筆算を扱うのはどうでしょう?

小4の長男の宿題として、最近は割り算の筆算がよく出てきます。

何度も反復練習をして、だんだん計算に慣れてきたようです。

振り返ると、これまでに足し算・引き算・掛け算・割り算の四則計算の筆算を学んだことになります*1

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ここで、いったん立ち止まって考えてみます。

それぞれの筆算の手順を覚えてトレーニングを重ねて、計算できるようになったとします。

それでは、なぜその手順で計算できるかはどれくらい理解できているでしょうか。

自分が小学生だったころを思い出すと、その理由が理解できたのは、筆算を習ってしばらく経過してからでした。

理解できたきっかけは、何かの本で「割り算の商は、割られる数を割る数で引ける回数」であることを知ったことです。これを知ったときの衝撃はよく覚えています。

その後、プログラミングというものを知り、筆算はアルゴリズムの一つなんだということを知りました。


2020年から小学校でプログラミングが必修化されます。

私は具体的にどのような授業を展開するかはわかりません。

ある処理を行うためのアルゴリズムを考えて、それをプログラミング言語を使ってコーディングするという授業かもしれません。

もしそうだとしたら、アルゴリズムを考える取っ掛かりとして、小学生みんなに馴染み深い筆算を題材にするというのも一つの手ではないかと思いました。

ざっと、このようなことができるのではないでしょうか。

これなら、PCが手元になくても、通常の教室で授業できて手軽ではないかと思っています。

*1:足し算と引き算の筆算は小2、掛け算は小3、割り算は小4で学習します。

数式を含む文を日本語でどう読むか

中学校や高校の数学の教科書には、こんな文が書かれています。*1

 a < b のとき、 a+c < b+c である。

この文を声に出して読むとしたら、どう読むでしょうか。

 x < y を「  x 小なり  y 」と読むとしたら、

 a 小なり  b のとき、 a+c 小なり  b+c である。

と読めます。

実際に、私が中学校で不等式を習ったときは*2、このような読み方を教わりました。高校まではこの読み方をよく聞きました。


しかし、この読み方は日本語としてやや不自然に思えます。そして、数学的な意味(この例では、数の大小関係)が直感的に伝わりにくい言い方です。

これを考慮すると、このような読み方をする方が自然です。

 a b より小さいとき、 a+c b+c より小さい。

意味が伝わりやすい言い方になりました。しかし、よく見るとあることに気付きます。

元の不等式を含む文から、「のとき」の「の」や文末の「である」が消えています。

このように消える文字があるので、この読み方ができるようになるには慣れが必要かもしれません。


数式もひとつの言葉と考えれば、日本語として自然で伝わりやすい後者の読み方をした方がよいのではないかと思います。

個人的に、最近は読解力が気になっています。

数式を含む文の読み方を工夫して、数学の教科書を自然な日本語で声に出して読めるようになれば、読解力が上がるのではないかと思っています。

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*1:厳密には、「任意の実数  c に対して」を書くべきですが、ここでは省略します。

*2:今は高校で不等式を習うようです。

ストレスを減らしてみよう ~ 床屋さん編

昨日、37年の人生で初めて丸坊主にしてみました。

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もともと丸坊主の息子たちを床屋に連れて行って、ついでに自分の髪も切ってもらうことにしました。


いつもは「こう切ってほしい」とあれこれ話しますが、どう話すかを考えるのがいつもストレスでした。

高校まで住んでいた実家の近くの床屋さんは、黙っていても切ってくれる感じだったでした。

しかし、学生になって実家を出ると、髪を切ってもらうというほぼ毎月の行事が大変でした。

まずはどの床屋に入るか?入ったらどうお願いするか?特にこだわりもないし、どうお願いすればいいか?そして天然パーマなので、どう切ってもらっても時間が経つと、気になる部分が増えてくる。かといって、床屋さんに頻繁に行くのは面倒だし、行ったらお願いする内容で悩むし…。

床屋さんをやっている叔父に相談したこともありました。

それくらい、床屋に行くということ自体がストレスでした。


そして昨日、丸坊主にすれば、「何mmのバリカンで刈ってください!」でストレートに伝えられる!と思って、思い切って丸坊主にしてみました。

この髪型は意外と快適です。家族は慣れない髪型に戸惑い気味ですが、そのうち慣れるでしょう。


これで長年のストレスが一つ解消できたかなと思っています。