「数学セミナー 2017年10月号」の読書メモ ~ その2
「数学セミナー 2017年10月号」の読書メモの続きです。
前回の記事はこれです。
トポロジー(結び目)における不可能性
ヒルベルトの第10問題
- ヒルベルトの第10問題とは、「ディオファントス方程式が整数解を持つかを有限的に判定する方法を与えよ」という問題。
- この問題は、1970年にマチャセビッチ(Matiyasevich)によって否定的に解決された。この解決までの流れを説明したのが、この内容である。
- ゲーデルは「算術の命題」を算術の論理式を通して「自然数へのコード化」を提案し、不完全性定理を証明した。
- 算術の論理式とは、自然数に関する記号 と論理記号 、等号 、変数 を用いて書ける論理式。
- 不完全性定理は自然数に関わる定理で、ヒルベルトの第10問題は整数にかかわる問題だが、ラグランジュの四平方定理などを使って、自然数に関する問題に書き直せる。
- ヒルベルトの第10問題の否定的解決は、「不完全性定理」と枚挙可能な集合という概念に関する「デーヴィスの予想」を結び付けて示される。
- 枚挙可能な集合とは、 個の自然数の集合 の部分集合について、計算可能という概念を通して定義される。
- このあたりの議論は、まだ自分でも追えていませんが、紙とペンでじっくり追えば難しくないかも。
- この記事の後半では、上記の内容に関連して、有理数全体の集合 や 実数全体の集合 についての命題の真偽を判定する計算手順の存在について書かれている。
- 自分としては、「そもそも計算とは何か?」というのが気になった。実際に、この記事の末尾で「計算」について言及されている。
超越数論における不可能性
不可能性の証明パズル
アローの不可能性定理
- 人が複数人いて異なる考えを持っている状態で、あることを決める際に「優れた決め方」とは何かを考えるのがテーマ。
- 「社会的選択理論」といい、経済学から発展したテーマらしい。
- 経済学者ケネス・アローが構築したモデルをもとに説明している。
- 個人の集合 と選択肢の集合 があって、個人ごとに の中に順序(全順序)を定める。
- 「個人 は を 以上に好む」という順序をつける。
- この順序にいろいろな条件(満場一致性、独裁制、無為など)をつけて、どのような「決め方」があるかを議論している。
- 2000年のアメリカ大統領選挙が例で使われていて、それだけを読んでもおもしろい。
- 社会における選択について、数学の概念である「順序」というものを入れて議論しているのが非常に印象的。順序がこのように使われるのは、目からうろこだった。
- 記事の終盤にある以下の言葉が印象的。
もし不可能性の源泉が満場一致制にあるのならば、主権者たちの意思に基づき統治を行おうとする民主主義の不可能性が示されたといってもよいだろう。 (『数学セミナー 2017年10月号』38ページ)