7931のあたまんなか

テーマ:数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など。うつと生きる30代後半の男です。

特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(後編)

数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。

数学セミナー 2018年 10 月号 [雑誌]

数学セミナー 2018年 10 月号 [雑誌]

7つのうち前半3つの記事のメモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com

今回は後半4つの記事のメモです。

有限体の不思議な森

有限体  \mathbb{F}_p

  • 素数  p に対して、  p で割った余りの集合  \mathbb{F}_p = \{ 0, 1, \dots , p-1 \} は体となる。
    • 小さい  p では乗積表で逆元の確認ができる。
    • 一般の  p での証明は本文の脚注にあり。
    • 『はじめての数論』 *1 第9章参照

原始根

  •  \mathbb{F}_p の元  r  \neq 0 で、集合として  \{ r, r^2, \dots , r^{p-1} \} = \mathbb{F}_p \setminus \{ 0 \} となるものが存在する。これを \mathbb{F}_p原始根という。
  • 原始根の存在定理について
    • 原始根は1つとは限らない。
    • 言い換え: \mathbb{F}_p^{\times} 巡回群である。
    • 証明から、任意の体の乗法群の有限部分群は必ず巡回群であることが言える。
  • 『はじめての数論』第20章参照

円分多項式

準備
  • 正の整数  n に対して、多項式  \phi_{n}(x) = x^{n-1} + \dots + x + 1 を考える。 *2
  •  x^n -1 = (x-1)\phi_{n}(x) より、 \phi_{n}(x) は1の  n 乗根で1以外を根に持つ。
  •  \phi_{n}(x) \mathbb{Z} [ x ] では既約だが、 \mathbb{F}_p [ x ] ではどうかを考える。
  • フリーの数値計算ソフト PARI/GP を使うと計算できて、既約/可約(さまざまな分解の型 *3 )がわかる。重根を持つ場合もある。
円分多項式の性質
  • 1の  n 乗根のうちで  n 乗して初めて1になるものを1の原始  n 乗根という。
  • 1の原始  n 乗根をすべて根に持ち重根を持たない多項式 n 番目の円分多項式といい、  \Phi_{n}(x) で表す。
    •  \Phi_{n}(x) は整数係数で、  \mathbb{Z} [ x ] では既約である。
    •  n素数のときは、   \Phi_{n}(x) = \phi_{n}(x) となる。
  • 素数  p について、  \Phi_{n}(x) \mathbb{F}_p [ x ] 因数分解するとどうなるかを、本文では調べている。

すべての有限体は  \mathbb{F}_{p^n} で尽くされる

  •  \mathbb{R} に実数で根を持たない  x^2+1 の根を添加して  \mathbb{C} を構成したのと同様に、  \mathbb{F}_p を拡大して新しい有限体を作れる。
  • ここで、どのような  \mathbb{F}_p でも、任意の  n について  \mathbb{F}_p 係数の既約な  n多項式  f(x) が存在することを使う。
  •  f(x) の根を  \mathbb{F}_p に添加した体は  p^n 個の元を持つ有限体で  \mathbb{F}_{p^n} と書く。
  • 最小分解体の理論から  p^n 個の元を持つ有限体は  \mathbb{F}_{p^n} に限られる。
  • 逆に、任意の有限体は必ずある  \mathbb{F}_{p} の拡大で、元の個数はその  p の冪となる。
  • 以上により、すべての有限体は  \mathbb{F}_{p^n} で尽くされる

 p 進数体をめぐる冒険  p 進距離が紡ぎ出す甘美な世界

有理数 \mathbb{Q} に入る2つの距離による完備化で作られる体について説明されています。

2つの距離とその完備化の特徴について、次のポイントを挙げて整理しました。数学的に適切ではない記述についてはご容赦ください。

なお、素数  p を1つ取って固定します。

ポイント

  • (1) 距離関数の元になる絶対値の定義
  • (2) 距離関数が満たす三角不等式
  • (3) 有理数自然数倍すると何が起きるか?
  • (4) 完備化
  • (5) 整数に相当するもの
  • (6) “無限小数”の進数表記

(A) ユークリッド距離  d_{\infty} の完備化=実数体  \mathbb{R}

  • (1) 通常の意味の絶対値  | \cdot |_{\infty} *4。ここから距離  d_{\infty}(x,y)=|x-y|_{\infty} が入る。
  • (2) 通常の三角不等式 d_{\infty}(x,z) \le d_{\infty}(x,y) + d_{\infty}(y,z)
  • (3) 非常に小さい有理数を十分大きい回数加えると、非常に大きい有理数を超えることができる。
  • (4)  \mathbb{Q} d_{\infty} による完備化が  \mathbb{R} である。
  • (5) 通常の整数環  \mathbb{Z}
  • (6)  \mathbb{R} の元を10進数の無限小数で表すと、小数点以下(  10^{-1}, 10^{-2}, 10^{-3}, \dots の位)に無限に数が続く。 *5

(B)  p 進距離  d_p の完備化=  p 進数体  \mathbb{Q}_p

  • (1)  p 進絶対値を次のように定義する。距離を  d_{p}(x,y)=|x-y|_{p} で定義する。
    • 整数  x  \ (\neq 0) は、0以上の整数  e_x p と互いに素な整数  x' を使って、  x = p^{e_x}  x' と一意に書ける *6 \mathrm{ord}_p \ x := e_x x加法的  p 進付値と呼ぶ。
    •  \mathrm{ord}_p有理数  x  \ (\neq 0) に拡張する。  x は2つの整数  m, \ n \ (n \neq 0) を使って  x = m/n と書ける。  \mathrm{ord}_p \ x := \mathrm{ord}_p \ m - \mathrm{ord}_p \ n で定義する( m, n の取り方によらず、well-defined)。
    • 以上を使って、有理数  x の乗法的  p 進付値を  |x|_p := p^{-\mathrm{ord}_p \ x } で定める。ただし、  \mathrm{ord}_p \ 0 = + \infty, \ |0|_p = 0 と定める。
  • (2) 強三角不等式 d_{p}(x,z) \le \max \{ d_{p}(x,y) , \ d_{p}(y,z) \}
  • (3) 非常に大きな有理数を何回加えても、もとの有理数を超えることはできない。
  • (4)  \mathbb{Q} d_{p} による完備化を  \mathbb{Q}_p と書き、  p 進数体と呼ぶ。
  • (5) 各整数  n について、  \mathbb{Q}_p での半径  p^{-n} の“円”  C_n := \{ x \in \mathbb{Q}_p \ | \ d_p(0,x) = p^{-n} \} を考えると、  \mathbb{Z} \mathbb{Z}_p := \{ x \in \mathbb{Q}_p \ | \ d_p(0,x) \le 1 \} = \{ 0 \} \sqcup \bigsqcup_{n=0}^{\infty} C_n  に含まれると言える。  \mathbb{Z}_p  p 進整数環という。
    • さらに、  \mathbb{Z} \mathbb{Z}_p で稠密であることが知られている。
  • (6)  \mathbb{Q}_p の元を  p 進数の“無限小数”で表すと、小数点以上(  10^{0}, \ 10^{1}, 10^{2}, \dots の位)に無限に数が続く。

その他

  •  \mathbb{Q} 上の距離は実質的に  d_{\infty} と各素数に対応する  d_p しかないことが知られている(オストロフスキーの定理)。
  • ディオファントス問題 *8有理数解を求めるのは難しい。一方、実数解はニュートン法 p 進数解はヘンゼルの補題などで、点列の極限として解を構成的に発見できる。
  • 大域類体論と局所類体論
  • キーワード:ハッセ-ミンコフスキーの定理、ハッセの原理、アーベル拡大、フロベニウス元

実数体の使われ方 ― 量化記号消去と半代数的集合

量化記号消去

  •  \forall, \ \exists などの量化記号を使った論理式から、量化記号を使わない同値な論理式を得ることを量化記号消去という。
    • 例:「  \forall x \in \mathbb{R} \ ( x^2 + bx + c > 0) 」から同値な命題「  b^2 -4c < 0 」を得る。
  • 実数に関する命題 *9 では量化記号消去だが(タルスキー-ザイデンベルグ)、整数に関する命題では量化記号消去できない。
  • ポイントは中間値の定理
  • 東ロボくんの数学の問題を解く手段としても使われている。

実閉体

  • 加法や乗法と両立する順序構造を持った体である条件(本文の(i)~(iii))を満たすものを実閉体という。
  • 実閉体では、量化記号消去は成立し、ヒルベルトの第17問題とも関連している。

半代数的集合

  • 多項式の等式や不等式を使って表現される集合といえる半代数的集合 *10 と量化記号消去の関係がありそう…だが、自分の力では把握できず。

計算機で扱える実数

  • 実数は有理数のコーシー列の極限で定義されるが、実数を扱うときに近似列をまじめに扱うことは少ない。
  • 一方で、計算機で実数を扱う場合は、実数の近似列を使って計算を行う。
  • 実代数的数は、近似列を使わずに、四則演算や等式を扱うことができることが知られている。
  • 一方で、超越数についてはまだ答えが得られていない。

いろいろな体 ― 体のレベルをつうじて

整域から体を作る

準備(整域の定義とその例)
  • 整域  D :零因子を持たない可換環 \{ 0 \} を除く)
  •  K の形式的冪級数  K [ [ t ] ] := \{ \sum_{i=0}^{\infty} a_i t^i \ | \ a_i \in K \} は整域である。
  •  K n 変数多項式環  K [ X_1, \dots , X_n ] は整域である。
整域から作られる体
  • 商体(分数体) D からその商体  \mathrm{Quot}(D) := \{ a/b \ | \ a, b \in D, \ b \neq 0 \} が得られる。これは  D を部分環として含む最小の体である。
  •  K [ [ t ] ] の商体はローラン冪級数  K ( ( t ) ) := \{ \sum_{i > - \infty}^{\infty} a_i t^i \ | \ a_i \in K \} である。これは完備離散付値体で  \mathbb{Q}_p とともに数論では重要な研究対象になる。
  •  K [ X_1, \dots , X_n ] の商体として、  n 変数有理関数体  K ( X_1, \dots , X_n ) が得られる。これは  K 上の超越次元が  n の体になる。
超越次元を持つ体の例
  • 有理関数体の拡大体も得られる。具体的には、有理関数体内で根を持たない多項式を使うもので、本文に例がある。
  • 代数多様体の関数体にも超越次元を持つ体が現れる。

小さい体の例:素体

  •  K標数を、乗法の単位元  1 に対して  1 + \dots + 1 \ ( n \text{個} ) = 0 となる最小の自然数  n と定義する。
  • 体の標数 0 または素数  p となる(体が整域であることを使う)。
  • また、標数  0 の体は  \mathbb{Q} 標数  p の体は  \mathbb{F}_p を必ず含むことがわかる。 \mathbb{Q} , \ \mathbb{F}_p を最小の体という意味から素体と呼ぶ。

体からさらに大きい体を作る

  •  K 上の既約  n多項式の根で  K にはない元  \theta K に添加した体  K( \theta ) = \{ a_0 + a_1 \theta + \dots + a_{n-1} \theta^{n-1} \ | \ a_i \in K \} は拡大次数  n(代数)拡大体になる。
    • 特に、  K= \mathbb{Q} のとき、  \mathbb{Q}(\theta) n 次代数体という。
  • すべての  K 上の多項式  f(x) が必ず  K 内に根を持つ体を代数閉体という。
  • 一般に、すべての体  K には代数閉体  \overline{K} が存在することが知られている。  \overline{K} K代数閉包という。
    • 体ごとに定まる代数閉包はすべて同型になる。
  • 有理関数体  \overline{K} (X_1, \dots , X_n) を代数拡大して、さらに大きい体を作れる。

斜体:乗法が非可換な体

  • 可換環  R R \setminus \{ 0 \} が乗法群をなすものを斜体という。
    • 有限集合は斜体にならない(ウェダーバーンの小定理)。
  • 斜体の例:ハミルトンの4元数体  \mathbb{H} \mathbb{C} の一般化)
    •  \mathbb{H} をさらに一般化したケイリーの8元数  \mathbb{O} と呼ばれる代数は結合律が成立しなくなる。この代数はさらに一般化できる。 *11
  • キーワード:ノルムの乗法性、ラグランジュの4平方定理、Hurwitz、Pfister

体のレベル

  •  K 上の代数方程式  X_1^2 + \dots + X_n^2 = -1 が解を持つような最小の自然数  n Kレベルといい、  s(K) と書く。
    • このような  n が存在しないときは  s(K) = \infty と定める。
  •  s(K)=\infty なる体を形式的実体または実体といい、実体ではない代数体を総虚という。
    • 【疑問】虚2次体と総虚の関係は?
  • 有限体  \mathbb{F}_{p^n} や2次体  \mathbb{Q}(\sqrt{m}) のレベルは  1, 2, 4, \infty のいずれかになる。
  • 体のレベルは有限である限りは2の冪であり、逆に任意の2の冪をレベルに持つ体が存在する(フィスター)ので、さらに“大きい”体の存在が示唆されている。

おわりに

この特集で体論についての振り返りができました。

そして、数学セミナー 2017年6月号』の特集で群論の振り返りができるようになっています。ブログにはまとめられていませんが…。

あとは環論

群・環・体でいちばん理解できていないのが環論なので、今後の『数学セミナー』に期待です!

*1:以下、次の本を指す。

はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで

はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで

  • 作者: ジョセフ・H.シルヴァーマン,Joseph H. Silverman,鈴木治郎
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 2001/08
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*2:本文では、最初に  \phi_5(x) = x^4 + x^3 + x^2 + x +1  \ ( = \Phi_5(x) ) を研究している。

*3:分解の型についての探求問題あり。【疑問】分割数やヤング図形と関係あり?

*4:通常は  | \cdot | で表すもの

*5:コーシー列と合わせて考える。

*6:素因数分解の一意性より

*7: \mathrm{ord}_p \ N \le 0, \ |N|_p \le 1 を使う。

*8: f \in \mathbb{Q} [ x_1, x_2, \dots, x_n ] で、  f( x_1, x_2, \dots, x_n ) = 0 有理数解を求めよ。

*9:ぼやかして書いています。

*10:きちんとした定義は本文参照

*11:志村五郎『数学をいかに使うか』の第1章~第5章で、ハミルトンの4元数体の記載あり。いつかまとめる予定。

数学をいかに使うか (ちくま学芸文庫)

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