親として危機感を持って読んだ本 ~ 新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』読書メモ
新井紀子さんの『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読みました。
コンピュータに大学入試問題を解かせる「東ロボ君」やRST(Reading Skill Test)の結果を通じて、子どもたちの読解力とAIとの関わりについて問題提起を行っている本です。
新井さんのツイートなどを見ていて、2人の小学生の親として読解力に関する興味と危機感を持ち、いてもたってもいられず、この本を手に取りました。
- 作者: 新井紀子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/02/02
- メディア: 単行本
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この本のあらすじ
2018年2月22日のTBSラジオ『伊集院光とらじおと』に新井さんがゲストとして出演しました。
番組で話された内容がこの本のあらすじだと読みながら感じました。*1
番組の内容について、以下の記事にまとめていますのでご覧ください。
「数学」という視点で本を見てみる
新井さんは数学者として活動されています。
私自身が大学で数学を専攻していたため、数学の視点でどのようなことが書かれているか、読む前から楽しみでした。
まず、この本は一般向けに書かれており、数式や数学用語はほとんど出てきません。
ほんの少し出てきますが、数式の意味がわからなくても読み進められます。
そして、この本について、次のような印象を持ちました。
- 非常に論理的に理路整然と書かれている。
- 事実に基づいて、地に足がついた主張をしている。
新井さんが数学者であり、しかも論理自体を研究対象とする数学基礎論がご専門であることが影響していると感じました。*2
また、詳しくは本文中にありますが、現代の数学を「論理・統計・確率」の3つに大きく分けるという視点はなるほどと思いました。
「小学生の親として何ができるか」を考えたい
ラジオでも聴いた内容ですが、「中学生の半数は教科書を読めない状態で卒業しているのではないか」という調査結果に改めて衝撃を受けました。
実際に中学生に行われたテストの例題やその正答率を見て、「本当なのか?」と疑いたくなるほどでした。
そして、読解力の問題は今になって表面化しただけであり、ずっと前から(30代後半の私たちの世代でも)あったはずだということにも驚いています。
本に書いてあるとおり、近い将来にAIに取って代わられる業務が出てくると思います。
そのような社会で生きていくためには読解力が物を言うというのも納得できます。
私には小学生の息子が2人いますが、「親として何ができるか」をよく考える必要があると認識しました。
たくさん本を読ませると読解力が上がると思いがちですが、必ずしもそうではなさそうです。
今のところの私の考えは、AIにはできなくて人間にしかできないことを高めることが必要なのかなと思っています。
例えば、社会常識や生きるために必要な感覚を身につける、判断する経験を与えるなどです。
私自身が今後どう生きていくかのヒントがあった
この本の最後の章には「最悪のシナリオ」と題して、ちょっと怖い(けど実際に起こりそうな)将来の予測が書かれています。
暗澹たる気持ちになりそうでしたが、最後の節は「一筋の光明」というタイトルで、AIに代替されることなく残っていく仕事について、いくつかの具体例とともに論じられています。
その中に書かれていた次の文章が非常に印象的でした。
「ほぼ日」でセーターやブラウス、「穴かがり」をストーリー付きの商品として販売しておられる方々は、好きなモノづくりをして、大金は稼いでいないとしても、楽しく、人間らしく、誇りをもって生活できているはずです。
(Kindle の位置No.3403:新井 紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』)
AIや読解力とは直接関係ない文章のように見えますが、「自分ができる範囲でやっていくことを見つけていけば、精神的に豊かな生活を送れるのかな」と少し希望を持てました。
社会人になる前の子どもを持つ親にぜひ読んでほしい
この記事の冒頭に書きましたが、親として危機感を感じて、この本を読みました。
最後まで読んで、危機感は持ち続けたままです。
危機感を払拭するためのHow-Toは書かれていません。というか、まだわかっていません。
でも、どこに課題感があるかは読み取れると思います。
私と同じく、社会人になる前の子どもを持つ親にぜひ読んでほしいと思いました。