引き続き『数学セミナー 2018年3月号』の「フーリエ解析ことはじめ」についてです。
熊原啓作さんの「フーリエ級数とは」の読書メモの後半です。
前半はフーリエ級数の定義といくつかの性質を書きました。
今回はフーリエ級数の3つの解釈の仕方についてまとめます。
フーリエ級数の解釈(1):正規直交系への直交射影の和
関数 と をベクトルとみなして、次のように内積 と長さ*1 を定義する。
このとき、以下のベクトルたちの長さはすべて になり、相異なるベクトルどうしは内積が になる。*2
つまり、このベクトルたちは正規直交系をなす。
(正規は「長さが 」、直交は「内積が 」を表す。直交は高校数学のベクトルでの用語の使い方と同じ!)
これらをすべて足し合わせると、 のフーリエ級数になる。
したがって、フーリエ級数は正規直交系をなす各ベクトル(関数)への直交射影の和と言える。
フーリエ級数の解釈(2):固有ベクトル分解
を 以上の整数とする。
を関数 と で張られた空間とする( )。また、 とする。
このとき、フーリエ級数の各項は の元である。
が を満たすことから、 は微分作用素 の固有値 の固有ベクトルと言える。
ちょっと乱暴な言い方をすると…
周期 の周期関数でフーリエ級数展開可能なもの全体の集合を とする。
このとき、 は の固有値 の固有空間で、 と固有空間分解できる。
フーリエ級数の解釈(3):平均2乗誤差を最小化するもの
先に述べた正規直交系を と書くことにする。
ここで、周期関数 と 正規直交系をなす 個の関数の1次結合 の距離 を考える。
と *3に注意して計算すると、次を得る。
これを と の平均2乗誤差という。
また、平均2乗誤差が最小になるのは、すべての で を満たすときである。
したがって、周期関数を三角関数で近似するとき、平均2乗誤差を最小にするのがフーリエ級数であると解釈できる。
そのほかに本文で書かれている内容
- ベッセルの不等式:
- パーセヴァルの等式:
解釈(3)の補足
解釈(3)を理解するために、自分の場合は以下のような計算を行いました。
手書きの計算結果を載せておきます。