『数学ガール/ポアンカレ予想』第7章 読書メモ
第7章のタイトルは「微分方程式のぬくもり」。
これまでは幾何学に関する話題が中心でしたが、この章は関数の微積分(解析学)の話題になります。
第一印象はこれまでと独立した話題というか唐突な感じでした。ポアンカレ予想にどう関係するかの楽しみが湧いてきます。
なお、前回の第6章の読書メモはこちらです。
【目次】
これまでの私と微分方程式の関係
常微分方程式はあまり身に付かなかった。
私の年代は高校で微分方程式を習っておらず、大学2年の教養の講義で微分方程式の解法を本格的に学びました。
教科書はポントリャーギン『常微分方程式』でした。
当時いろいろと勉強しましたが、あまり身に付きませんでした。特に、具体的な計算が苦手だった記憶があります。
偏微分方程式に触れる(1回目)
そんな状態でしたが、偏微分方程式の世界に飛び込みます。
所属していた大学数学科に偏微分方程式の研究者が非常に多かったことが影響していると思います。
大学3年のゼミでは、ユルゲン・ヨスト『ポストモダン解析学』を読み、偏微分方程式の入口にチャレンジしました。詳しくは↓で。
その後も講義などを受けましたが、とても難しく感じて、偏微分方程式からいったん離れます。
「微分方程式を解く」とはどういうことか?という疑問
このようなバックグラウンドを持って第7章を読むと、そもそも「微分方程式を解く」とはどういうことか?と考えるようになりました。
代数方程式と代数学の基本定理
例えば、代数方程式を解く場合は、解の公式や因数分解などを行うことで解を求めます。 *2
そして、代数学の基本定理(n次方程式の解は、重複を含めてn個である)ことから、すべての解が出せたことがわかります。
微分方程式と微分方程式の解の一意性…?
それでは、微分方程式を解くことが微分方程式を満たす関数をすべて求めることだとすると、どのような理由付けで「すべて求めた」と言えるんだろう?という疑問が湧いてきました。
第7章の脚注で触れられている微分方程式の解の一意性の主張を正しく理解することが鍵になるんでしょうか。
微分方程式の初歩的な内容だと思いますが、いずれ勉強し直したいです。
なぜこのようなことを思ったか?
図にしてみました。
特集「フィボナッチ数の大人の楽しみ方」/『数学セミナー 2018年8月号』読書メモ
『数学セミナー 2018年8月号』の特集は「フィボナッチ数の大人の楽しみ方」です。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2018/07/12
- メディア: 雑誌
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フィボナッチ数列は高校の数列の授業で習うもので、計算の仕方自体は小学生でも理解可能なものです。
このフィボナッチ数列について、
- 数列自体を深く考える。
- 数列を拡張して考える。
- 自然界で見られる現象や図形での応用を考察する。
など、いろいろな側面で語られています。
フィボナッチ数列が棲む空間を考える。
最初の記事で書かれている内容について、線形代数の応用として興味深かったので、メモしておこうと思います。
「フィボナッチ数列の漸化式」を満たす数列全体がなす線形空間
漸化式 を満たす実数列 全体の集合を とすると、これは線形空間になります。
最初の2項 を決めると の数列が決まります。この数列を と書くことにします。
なので、 の元 と を1次独立に取れば、 が の基底になります。
フィボナッチ数列について説明されている内容
対称関数から見たフィボナッチ数
斉次完全対称式、べき和対称式、基本対称式の3つの対称関数を使って、フィボナッチ数の拡張を試みています。
その議論の中では、ガロア群の可換性やフィボナッチ数列の正値単調非減少整数性などが登場します。
フィボナッチ数が「対称関数論、円分体論、組合せ論の3つの領域が交わったところに棲んでいる」という解釈が出てきます。
フィボナッチ数に関するその他の話題
特集内で触れられているその他の話題について、項目をリストします。
きたみりゅうじ『人生って、大人になってからがやたら長い』読書メモ
書店に行くと、コミックエッセイの書棚をよくチェックします。 *1
そのときにタイトルを見て、「これだ!」と直感的に思って買ったのがこの本、きたみりゅうじさんの『人生って、大人になってからがやたらと長い』です。
- 作者: きたみりゅうじ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/10/10
- メディア: 単行本
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きたみさんは、大学卒業後にプログラマとして就職し、2度の転職を経て、フリーランスとなった方です。
そして本文によると、20代で結婚して、2人のお子さんがいて、マイホームを購入したそうです。
転職とフリーになったことを除くと、私とほぼ同じプロフィールです。
さらに、私が住んでいる町の近隣にいらっしゃるんじゃないかと読み取れました。
そのせいか、共感できるところが多く、感情移入しすぎて涙が出そうなところもありました。
印象的な言葉やシーン
印象的な言葉やシーンがいくつかあったのでメモしておきます。
冒頭に何度か出てくる「勤めあげる」という言葉
住宅ローンが通って、「ほんとに買うことになっちゃったよ!」とビビる。
正解を知らなくてもスタスタと歩いていくことができる。それこそが「大人」なのかもしれない。
インプットとアウトプットのバランスが大事
時は金なり、逆も真なり
自分たちはそろそろ人生の前半戦を終えようとしているのかもしれない。
『死ぬ辞め』に通じる部分が多い?
この本の前半部分は特に、汐街コナさんの『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』に通じる部分が多いと感じました。
『死ぬ辞め』については、過去にこのブログで触れています。
身体は大人になっても、心は子どものままなんだな。
自分や同世代の人を見ていて、うすうすとは感じていましたが、やっぱり「身体は大人になっても、心は子どものままなんだな」ということを改めて感じました。
その状態でどう大人の世界を生きていくかを考え続けるんだろうなと思います。
*1:以前に同じような出だしの記事を書いた気がします。
Twitterモーメント一覧(随時更新)
Twitterの気に入ったツイートや参考にしたいツイートを、これまではRTやいいね!をして保存していました。しかし、ツイート数が多くなって分類されていないために、後で見返すことがなくなってしまいました。
ということで、Twitterモーメントに分類して保存するようにしています。
モーメント数が多くなってきたので、このページにまとめておきます。なお、モーメントを追加するたびにこのページも更新予定です。
目次
モーメントの一覧(分類なし)
私が作成したモーメントの一覧はこちらから参照可能です。公開日の降順でソートされています。
自分の考え方がわかるツイート
自分の考え方
自分自身の考え方に関するツイートを集めた、自分用のメモです。
- 自分の考え方 その1:2017/12/24~2018/5/1
- 自分の考え方 その2:2018/5/1~2018/5/31
- 自分の考え方 その3:2018/6/1~2018/7/1
- 自分の考え方 その4:2018/7/2~
- 自分の考え方 その5:2018/7/27~
自分の中にあった違和感のまとめ
最近のTwitterを見ていると、自分の中にある違和感を感じているものがあぶりだされているように思えます。そして、その違和感の原因は何かがわかることもあります。これをまとめてみました。
将来を見据えて
次の一手を考える
休職中している関係上、次の一手をどうするかを考えています。その方向付けに役に立ちそうなツイートを集めました。現職をどうするかに加えて、興味がある書くことや数学に関係することなど。戦略構想中です。
- 次の一手を考える。 その1:2018/2/22~2018/4/30
- 次の一手を考える その2:2018/5/1~2018/5/31
- 次の一手を考える その3:2018/6/1~2018/7/1
- 次の一手を考える その4:2018/7/2~
- 次の一手を考える その5:2018/7/27~
たまに思い出したい印象的な言葉
心にグッときた言葉
心に残しておきたい、たまに思い出したいことばを集めました。半分以上はメンタルに関係することばです。
- 心にグッときたことば その1:2018/2/6~2018/4/30
- 心にグッときた言葉 その2:2018/5/1~2018/5/31
- 心にグッときたことば その3:2018/5/31~2018/6/22
- 心にグッときたことば その4:2018/6/22~2018/7/1
- 心にグッときたことば その5:2018/7/2~
- 心にグッときたことば その6:2018/7/27~
気になるもの/こと
気になる本
気になる本のツイートを集めました。数学系とメンタル系がメイン。
おもしろい/参考にしたいツイート
自分にとって「おもしろい」「参考にしたい」と思ったツイートのまとめです。
- おもしろい/参考にしたいツイート その1:2018/6/23~
- おもしろい/参考にしたいツイート その2:2018/7/27~
数学に関係するモーメント
数学に関するツイート
数学について興味があるツイートを集めました。具体的な問題や技術的なものが多いです。数学そのものの考え方は別のモーメントで。
- 数学に関するツイート その1:2018/1/10~2018/4/27
- 数学に関するツイート その2:2018/4/28~2018/5/31
- 数学に関するツイート その3:2018/5/31~2018/6/22
- 数学に関するツイート その4:2018/6/22~2018/7/1
- 数学に関するツイート その5:2018/7/2~
- 数学に関するツイート その6:2018/7/27~
数学の考え方
数学関係のアイディアや数学の考え方についてのツイートを集めました。具体的な数学の議論で興味があるものは別のモーメントで。
- 数学の考え方 その1:2018/1/20~2018/4/30
- 数学の考え方 その2:2018/4/27~2018/5/31
- 数学の考え方 その3:2018/6/1~2018/6/22
- 数学の考え方 その4:2018/6/22~2018/7/1
- 数学の考え方 その5:2018/7/2~
- 数学の考え方 その6:2018/7/27~
複素数をより受け入れられやすく導入するには?
「複素数は『存在しない数』として、否定的な表現で導入されることがある。有用性を強調すれば、より受け入れられやすいのでは?」という私のツイートに関連するツイートを集めました。
「数学科って、何やってるの?」
数学科にいる本人もなんて答えればいいかよくわからない質問。反応を集めてみました。他の学問分野での説明の仕方も集めています。随時追加中です。
- 「数学科って、何やってるの?」:2018/3/14~
学習・勉強・研究・教育など
学習・勉強・研究について
学習・勉強・研究について気になるツイートを集めました。
- 学習・勉強・研究について その1:2018/1/18~2018/4/30
- 学習・勉強・研究について その2:2018/5/1~2018/5/31
- 学習・勉強・研究について その3:2018/5/30~2018/7/2
- 学習・勉強・研究について その4:2018/7/2~
- 学習・勉強・研究について その5:2018/7/27~
都会・地方の教育格差の話
阿部幸大さんの『「底辺校」出身の田舎者が、東大に入って絶望した理由』と『大反響「底辺校出身の東大生」は、なぜ語られざる格差を告発したのか』に関するツイートを集めました。
道路関係
自分のツイートに関する反応
『数学ガール/ポアンカレ予想』第6章 読書メモ
第5章に続いて、紙とペンを持って計算しながら読むというよりは、頭の中でイメージしながら読む形でした。
なお、前回の第5章の読書メモはこちらです。
第6章のタイトルは「見えない形を捕まえる」。
ポアンカレ予想の主張に使われている基本群を説明しています。
【目次】
第6章のキーワード
2つの形が同じかを考えるために群を考えるのは自然なこと
例えば、正多角形を考える。
正 角形にある操作を施してぴたりと重なるのはどのような操作かを考えると、次の3つがあります。
(1) 回転 。
(2) ある軸での裏返し
(3) (1)と(2)の合成
(1)の全体は群となり、位数 の巡回群と同型です。
(1)~(3)の全体も群になり、二面体群と呼ばれます。
どちらもぴたりと重ねるという操作を代数的に表したものです。回転や裏返しという幾何的な言葉を代数的な言葉に置き換えています。
基本群が位相不変量のひとつ
「位相空間上に描けるループが本質的に何種類あるか」ということを考えます。
本文にあるトーラスや球面の例を考えると、具体的な図形的イメージができると思います。
この問いに答える基本群について、本文から数式を中心にしてノートにまとめました。
この章の前半は、「2つの弧状連結な位相空間 と が同相ならば、それぞれの基本群 と が同型である」、つまり基本群は位相不変量であることで締めくくられています。
ポアンカレ予想の主張
この章の後半では、ポアンカレ予想の主張が出てきます。
本文で「僕」が話しているように、ここまで読めば、ポアンカレ予想の主張が何を言っているかがわかります。
『数学ガール/フェルマーの最終定理』でも、証明のキーとなる主張の読み解きをしていて、「自分でも理解できるんだ!」と感動したときと同じような気持ちになりました。
数学の自己紹介シート(α版)を作ってみた
ふと、「数学について知りたいことがたくさんあるなぁ」と思った。
『数学セミナー』や数学関係のTwitterの情報などを見て、数学に関する断片的な知識がつながっていくのがとてもおもしろい。
それじゃぁ、こんなことはできないか?と考えた。
(1) 今までに知っている数学はどんなことか?
(2) (1)はどのように勉強したか?(本、講義など)
(3) これから知りたい数学はどんなことか?それは、(1)とどんな関係があるか?
(4) 読んでみたい数学の本や資料は、(3)のどこかにマッピングできるのではないか?
(1)~(4)がまとめられれば、自分の数学の履歴書というか自己紹介シートみたいなものができるのではないか?
これを図にしておけば頭を整理しやすくなるし、updateしやすい状態におけばベストだ。
『数学ガール/ポアンカレ予想』第5章 読書メモ
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2018/04/14
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
全10章のうちの前半を読み終わりました。じっくり集中できる時間を見つけて読んでいるので、進みはゆっくりです。
なお、前回の第4章の読書メモはこちらです。
第5章のタイトルは「多様体に飛び込んで」。
多様体という言葉を見て、幾何学が苦手な自分は身構えましたが、読んでみると意外とすっきり読めました。
【目次】
第5章のキーワード
- 1次元、2次元、3次元、4次元の立方体
- 中身が詰まっていない「サイコロ面」
- 中身が詰まっている「サイコロ体」
- 次元サイコロ面を 次元で見る。
- 次元球体と 次元球面 の展開図
- 次元多様体
この章を読むのに必要なのは想像力
第4章までは紙に図や式を書いて、お絵描きをしながら計算をしながら読みました。
一方で、第5章を読むときには、紙はほとんど使いませんでした。
本文で丁寧に説明されている文章と多くの図を見ながら、想像力を働かせて読む感じでした。
ポイントは「サイコロ面」と「サイコロ体」
その想像力を働かせるのにポイントになるのが、サイコロ面とサイコロ体の理解だと思います。
例えば、「球」と言ったときに、中身の詰まっていない球を指すか、中身の詰まっている球を指すかに十分気を付けようということです。
数学では、前者を球面、後者を球体と言って区別します。
式で書くと、 と です。 と の違いに注意です。 *1
この立方体版を考えて、
- 中身が詰まっていない立方体をサイコロ面
- 中身が詰まっている立方体をサイコロ体
と呼んで、本文では説明しています。
これが理解できれば、第5章の目標のひとつである
- 3次元球面 *2
- 4次元立方体
が「見える」ようになると思います。
どちらも4次元空間内の図形なので、平たく言うと、4次元が見える経験ができるはずです。
この章での新しい発見
サイコロ面とサイコロ体という考え方
これまでの数学経験で、球面と球体の区別は意識していましたが、立方体について同じような見方をしたことがありませんでした。
この理解によって、幾何学の理解が一気に広がったような気がします。
『数学ガール/ポアンカレ予想』第5章を少しずつ読み始めた。今までに見たことがある4次元立方体の図の解釈がようやくわかってきた。新しい幾何学の知識がついてきた。 pic.twitter.com/oF0zt75VEb
— 7931 (@wed7931) July 19, 2018
図形の《中》に入る/図形の《外》から《撫でる》感覚
この2つの表現はとても文学的ですが、数学的にも非常にわかりやすかったです。著者の結城さんの言葉の力に感動しました。
- 次元サイコロ面の中をどこまでも進んでいく様子
- 次元生物が 次元球面を一周する様子
本文を読んでこの2つが理解できれば、《撫でる》の意味がわかると思います。同時に、《有限/無限》と《果てがある/ない》の意味も。
おわりに:今後の展開が楽しみなこと
この章を読んで、理解できなかったことが2つありました。
(1) 「無限遠点を足した上で裏返す」とはどういうこと?(177ページ)
(2) 「形を知る道具が群」とはどういうこと?(190ページ)
どちらも第6章以降で明らかになるだろうと考えて読み進めようと思います。