MATH POWER 2018に参加してきました。 #Mathpower
2018年10月6日~7日にわたって行われた数学イベント「MATH POWER 2018」に参加してきました。
このイベントは今回が3回目。
2016年の第1回から気になっていたイベントで、第2回はニコニコ動画で生放送を見ていました。
そして、今回は現地に行ってみよう!と思い、参加することにしました。
イベント時間約30時間のうち、初日の12:00~19:00のセッションに参加しました。
数学の講演を7時間聴きっぱなしで大満足!
大学院数学専攻を卒業して13年間、数学の講演や講義を聴くことはほとんどありませんでした。
13年のブランクの後に、ゴリゴリの本気の数学の講演を7時間!
数学の内容はもちろん、プレゼンや演出の上手さなどにとても感動しました。
本物の数学の講義のように、ノートにメモを取りながら聴き入りました。
それぞれの講演の簡単なメモを書きます。
なお、講演中に取ったノートや詳細なメモは、私のツイートを集めたTwitterモーメントをご覧ください。
インテジャーズ イン 仮面ライダービルド
講演者の関真一朗さんと辻順平さんのブログはよく読んでいるので、とても楽しみにしていました。
今年8月まで放送されていた、物理学者が主人公の『仮面ライダービルド』の話数表示に出てくる1~50にちなんだお話をしてくれました。
お2人とも整数論を専門にされているようなので、素数や完全数、ゼータ関数などの話が多く出てきました。
私が知っている話もいくつかありましたが、その先のいろいろな広がりや数学の他の分野との関係が見えて、とても興味深い講演でした。
そして、どうやったらここまで数学を深く深く知れるんだろう?と感じました。
これまで以上に、素数や整数への興味が湧いてきました。
仮面ライダービルドの物理学
『仮面ライダービルド』の物理学アドバイザーだった白石直人さんによる、番組に登場したシーンの物理学的背景の説明です。
これを聴いて、物理学の見方が変わりました。
具体的にはこの2点です。
- 物理法則とは、あらゆる世界(魔法が使えるような空想の世界を含めて)から一定の原理を満たすあり得る世界を選び取ったものであると言える。
- 物理現象を数式で表すときに、研究する物理の対象をどのように捉えるかが大事である。
- 例えば、水の流れを数式で表すときに、「水」を分子1個1個でミクロに捉えるか、もっとマクロに捉えるか?
レムニスケートから楕円関数へ
上の2つと比べて、より深く数学に入り込んだ講演です。
相加相乗平均(算術幾何平均)や積分を使って求める曲線の長さといった高校数学でおなじみの話題で始まり、楕円積分や楕円関数といったその先の数学に、自然と連れて行ってくれるわかりやすい講演でした。
意欲的な中高生に贈る数学の話題 ~数理空間トポスより~
中高生のために教科書より先の数学を提供する「数理空間 “τόπος“(トポス)」のチューターと顧問の方による講演です。
テーマは「楕円関数と楕円曲線、それに関係する合同数について」です。
前半は群や同一視、トーラスなどの大学数学での用語が出てきてやや難しいかもしれません。
後半の合同数については、定義は中学生なら十分に理解できる内容です。
定義だけを見れば簡単そうな合同数が予想以上に深いのが印象的でした。フェルマーの最終定理にもつながってきます。
ビブリオマテマティカ ~数学に目覚めるための数学書~
数学書を出版する4つの出版社の方によるプレゼンです。
この講演を聴くためにイベントに参加したといってもいいくらいです。
もっとも印象的だったのが、編集者のみなさんの数学に対する思いです。
講演を聴く前は、数学や科学が好きとは限らない本好きの方が編集者になって、業務上でたまたま数学書に携わっていると、勝手に思い込んでいました。
しかし、講演を聴いて、みなさんの数学に対する思いに感銘を受けました。
- 大学で数学科に所属していて、数学書の仕事をしている。
- 化学を専攻していたが、友人宅にあった数学書を読んで数学に目覚めた。
- その本が自分が学生時代に最も読み込んだといってもよい、永尾汎『代数学』だったのが印象的。
- 高専から編入した大学で表現論を専門にして、高専時代に勉強したフーリエ解析などを扱っていた。
- 表現論が専門というのは自分と同じ!
数学書の編集者の方に対してなんて失礼なことを思っていたんだと反省しました。
やっぱり数学は楽しい!
このイベントに参加して、改めて数学の楽しさを実感しました。
やっぱり数学が大好きで一生離れられないと再確認し、数学熱がさらに高まりました!
今後も数学イベントに積極的に参加していきたいと思います!
現場復帰への活動が参考になる ~ 『うつ病九段』読書メモ
うつ病患者の一人として、とても気になり手に取ってみました。
- 作者: 先崎学
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/07/13
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
なぜこの本が気になったか?
「自分がしていた仕事と似ている部分が多いのでは?」と直観的に思ったのが、この本が気になった理由です。
著者の先崎さんはプロ棋士。
頭をフル回転させて対局をこなすことはもちろん、将棋界の発展のための活動もされていました。
自分の休職前の仕事はシステムインフラの設計とプロジェクト管理。
システムインフラの設計には技術力が不可欠で、技術力を日々磨いて実際の業務システムに適用するため、頭を使う業務です。
設計業務と並行して、複数のプロジェクトのマネジメントをしていました。
こちらもマネジメントスキルという技術を持って、複数の関係者との調整をはじめとする人間対人間のかなり泥臭い業務をこなします。
ひとことで言えば、プレイングマネージャーとしての活躍が求められる立場です。
頭を使う仕事と人を動かす仕事を両立させている中で精神的に参ってしまったというのが共通しているように思えました。
初期症状と回復に向かう過程での症状が似ている
この本を読むと、先崎さんと私の初期症状と回復に向かう過程がとても似ていることに気付きました。
入院有無の違いは大きな違いですが、それ以外は似ているところが多くありました。
これに気付いて、この本にどんどん引き込まれました。
ちなみに、31ページに書かれている先崎さんの経験は非常に共感しました。うつ病あるあるなのかもしれません。
先崎さんの現場復帰の過程はリワークそのもの?
現時点(2018年10月時点)の私の目標は、職場復帰に向けてリワークの通所を始めることです。
リワークとは、精神疾患により休職している人の職場復帰に向けたトレーニングを指します。
いろいろな形態がありますが、私が通所を目指しているリワークでは、平日週5日で施設に通い(通勤トレーニング)、疑似的な職場での業務を行います。復職や再発防止に向けた自己分析のようなカリキュラムなども含まれます。
先崎さんは、仲間と将棋を打ったり、多くの人がいる場に顔を出すなどして、徐々に現場復帰に向けた活動を進めました。
その結果、約1年の休養を経て、現場復帰されています。
この過程が、サラリーマンの私にとってのリワークそのものだと感じました。
それでは、
- 自分はどのような心構えでリワークに臨むか?
- もう少し先を見て、復職~再発防止に向けてどう活動するか?
を、先崎さんの活動と対応付けて考えようと考えるようになりました。
この本の後半の復帰過程についてはメモを取り、自分なら何をするかを考えながら読みました。
中間管理職の人におすすめの本
私と同じように、中間管理職でプレイングマネージャーとして活動している中で精神的に疲れてしまった人におすすめの本です。
私はまだ現場復帰の途中ですが、この本のことをたまに思い起こしながら活動していきたいと思います。
特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(後編)
『数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2018/09/12
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る
7つのうち前半3つの記事のメモはこちらです。
今回は後半4つの記事のメモです。
有限体の不思議な森
原始根
円分多項式
準備
すべての有限体は で尽くされる
- に実数で根を持たない の根を添加して を構成したのと同様に、 を拡大して新しい有限体を作れる。
- ここで、どのような でも、任意の について 係数の既約な 次多項式 が存在することを使う。
- の根を に添加した体は 個の元を持つ有限体で と書く。
- 最小分解体の理論から 個の元を持つ有限体は に限られる。
- 逆に、任意の有限体は必ずある の拡大で、元の個数はその の冪となる。
- 以上により、すべての有限体は で尽くされる。
進数体をめぐる冒険 ― 進距離が紡ぎ出す甘美な世界
有理数体 に入る2つの距離による完備化で作られる体について説明されています。
2つの距離とその完備化の特徴について、次のポイントを挙げて整理しました。数学的に適切ではない記述についてはご容赦ください。
なお、素数 を1つ取って固定します。
ポイント
いろいろな体 ― 体のレベルをつうじて
整域から体を作る
整域から作られる体
- 商体(分数体): からその商体 が得られる。これは を部分環として含む最小の体である。
- の商体はローラン冪級数体 である。これは完備離散付値体で とともに数論では重要な研究対象になる。
- の商体として、 変数有理関数体 が得られる。これは 上の超越次元が の体になる。
小さい体の例:素体
体からさらに大きい体を作る
斜体:乗法が非可換な体
体のレベル
- 体 上の代数方程式 が解を持つような最小の自然数 を のレベルといい、 と書く。
- このような が存在しないときは と定める。
- なる体を形式的実体または実体といい、実体ではない代数体を総虚という。
- 【疑問】虚2次体と総虚の関係は?
- 有限体 や2次体 のレベルは のいずれかになる。
- 体のレベルは有限である限りは2の冪であり、逆に任意の2の冪をレベルに持つ体が存在する(フィスター)ので、さらに“大きい”体の存在が示唆されている。
*1:以下、次の本を指す。 はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで
*2:本文では、最初に を研究している。
*3:分解の型についての探求問題あり。【疑問】分割数やヤング図形と関係あり?
*4:通常は で表すもの
*5:コーシー列と合わせて考える。
*7: を使う。
*9:ぼやかして書いています。
*10:きちんとした定義は本文参照
*11:志村五郎『数学をいかに使うか』の第1章~第5章で、ハミルトンの4元数体の記載あり。いつかまとめる予定。
特集「体とはなにか」 ~ 『数学セミナー 2018年10月号』読書メモ(前編)
『数学セミナー 2018年10月号』の特集は「体(たい)とはなにか」です。
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2018/09/12
- メディア: コミック
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大学数学科時代に体論やガロア理論の講義を受けましたが、十分に理解できないままでした。
卒業後に『数学ガール/ガロア理論』を読んで、ガロア理論や方程式の可解性をようやく理解しました。
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2012/05/30
- メディア: 単行本
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今回の特集を読むことで、有限体やp進数体などの概要がわかりました。
ここでは、特集内の7つの記事のうち、前半の3つの記事の内容をメモします。
体とはなにか
体の歴史
四則演算と変数の記号化との関係
- ヴィエトの業績
- 森田真生『数学する身体』の第二章 計算する機械 - 2 記号の発見 に関連した内容が書かれている。
- 作者: 森田真生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/04/27
- メディア: 文庫
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ガロア理論で体をみる
代数方程式の分解体とガロア拡大
代数体
- 代数体:代数方程式の根をいくつか添加して得られる の拡大体
- 整数や有理数の問題を、代数体に一般化して考えると有効なことがある。
単位円上の有理点を求める問題から広げて考える
問題1: を満たす有理数 を求めよ。
解法3の説明
問題3:整数 について、 を満たす は存在するか。
- これは問題2の一般化。なお、代数体 は虚2次体と呼ばれる。
- の場合は問題2とほぼ同様に解けるが、他の では同様に解けない場合がある。
- (1)のように、ある整数で割った余りのように簡単に特徴づけできない。
- の場合は、(2)が成立しない。 *6
「類数」という概念からの広がり
参考にした本
学生時代に代数学で主に使用した永尾汎『代数学』を参考にしました。
- 作者: 永尾汎
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 1983/04
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 42回
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*3:以下、次の本を指す。 はじめての数論―発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで
*5:本文では、既約元分解の一意性と書かれている。
*6:例:
*9:この本に出てくるんだろうか?
外向きの評価と内向きの評価の変化
2018年9月4日発行の結城浩さん(@hyuki)のメルマガで、外向きの評価と内向きの評価について書かれていました。
これがとても印象的でこのようなツイートをしました。
結城浩メルマガ感想。「外向き/内向きの評価」が胸に刺さった。学生時代は内向きの評価だけでよかったが、社会人になって外向きの評価を気にするようになった。それも急激に。自分はこれにうまく対応できなかったのかな。
— 7931 (@wed7931) September 4, 2018
結城浩メルマガ 2018/9/4 Vol.336|note(ノート) https://t.co/O3FTXO65dg pic.twitter.com/2CPuWmM1ga
この外向き/内向きの評価の図をもう少し細かく書いてみました。自分の経験をモデルに書いています。
内向きの評価が小さくなって、外向きの評価が急激に大きくなったことに、自分が耐えられなかったのかなということが見えてきました。
自分の状況を図や表にまとめると、自分のことがよく理解できるような気がします。
『数学ガール/ポアンカレ予想』を自分なりにまとめてみた
『数学ガール/ポアンカレ予想』を約5か月かけて読み終わりました。
頭の整理のために、第1章~第10章まで1章ごとにメモをブログに書いてきました。
例えば、第1章のメモはこちらから。
『数学ガール』シリーズの既刊5巻すべてを読んで、各章ごとの数学的内容は独立していて、非常にわかりやすく読みやすいと感じていました。
一方で、通読した後に各章の関連付けがどうなっているかがうまく整理できないことがありました。
というわけで、今回は通読後に各章の関連付けを整理しよう!と目標を立てて読みました。
自分なりにまとめてみた
この本を読むための目標設定を1つ立ててみて、それぞれの章の役割と関連付けてみたのが、下の図になります。 *1
目標設定をしてみる
この本を読むことの目的を、
と設定してみました。
(2) もっと広い幾何学を知って
そこから先の幾何学(大学数学など)を
の3つと考えました。
そして、第1~6章と第8章は
- (a-1)から(a-2)へ:計量と曲率
- (b-1)から(b-2)へ:位相幾何学
- (c-1)から(c-2)へ:位相不変量とその例(基本群が例の1つ)
を理解する役割があると見ました。
(3) ポアンカレ予想の主張を読み解いて
第6章で初めて提示され、第10章で再掲されるポアンカレ予想は、(2)に出てくる概念(図の(B)~(E))で読み解くことができます。
「理解する」というよりも「読み解く」がポイントです。
(4) 証明のアイディアに触れてみよう!
ポアンカレ予想の証明のアイディアは、ハミルトンプログラムと呼ばれる考え方がポイントです。
その中に出てくる熱方程式の理解の助けとして、第7章と第9章の内容が使われています。
おわりに
この本を通じて、今まで苦手にしていた幾何学に歩み寄れた気がしました。
『数学セミナー 2017年12月号』の特集でホモロジーについてもざっくり知ることができたので、大学数学の幾何学の初歩の初歩までは近づけたかなと思います。
これを機会に、幾何学に対する否定的な先入観をなくして、数学を楽しみたいです!
*1:もちろん、いろいろな整理の仕方がありますので、これはあくまで私が作った一例にすぎません。
2018年9月19日で「7931のあたまんなか」開設から1周年!
2018年9月19日で当ブログ「7931のあたまんなか」をはてなブログに開設してから1周年になりました。
前身の「7931のblog(仮称)」(ライブドアブログ)からカウントすると、ブログを書き始めて14年目になります。 *2
メンタル不調による休職中でも仕事をしている感覚を忘れないようにするため、意識して「書く」ということを続けるために、はてなブログにリニューアルしました。
数学のことや自分が考えたことなど、好きなことを書き連ねていますが、1日あたり100名以上の方に見ていただいています。
本当にありがとうございます!
まだ仕事への復帰の見通しは立ちませんが、リハビリを兼ねてこのブログを続けていこうと思います。
これからもよろしくお願いします!