7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

「それでも、人生は続く。」はまさにその通り! ~ 『一発屋芸人列伝』読書メモ

山田ルイ53世一発屋芸人列伝』の読書メモです。 *1

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝


一発屋と呼ばれる11組の芸人について、髭男爵山田ルイ53世の取材をもとに書かれた本。

この本の帯には「それでも、人生は続く。」と書かれている。
まさにその通り!と思える内容だった。


一発屋になる前にそれぞれの考え方で行動していて、一発の後もそれぞれの人生を生きている。
それも各人が三者三様であることがよくわかった。

芸人という厳しい世界の中でどう生きてきたかを読んで、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」という問いが、頭の中に常に浮かんでくる。

この本に書かれている人たちに共通するのは、自分の周囲の変化にどう対応してどう生きるかを真剣に考えているんだと思った。
これについても、「それじゃあ、自分はどうなんだ?」。

山田ルイ53世さんのラジオや文章が好きで、お笑い番組が好きでこの本を読んだ。
それにしては、予想以上に考えさせられる本だった。


もちろん、お笑いネタのこともいろいろ書いてある。
どの芸人さんも(1人は存じ上げない芸人さんですが)、やっぱりおもしろいと再確認した。

特に、テツandトモは、数年前に地元の住宅展示場でのライブを見て、ものすごくおもしろかったことを思い出した。
テレビによく出ていた頃を知らない息子たちもすごく楽しかったようだ。

https://lh3.googleusercontent.com/zGN1EzQzPf1Bi0JpG-EfkVtXLmqLEI-l2RETpNcwQJ4rJJgignRXbdknufj_-juhjaWgOHORxtQ6k-nzvFMkTwFNSxzwrR0E2W_LlDxdDBr_HH7ZP_wX48u3B9rZAarEAuwEPN76b2EtM7M__U2Os5LE756tZBcdwLwMw6KOmrAs5w8RFlnde8zBPQ5eDd4GxqW4jcO_3wT4I5pRu4EIq-kqXeJSa8OZs365gTkRa45M3GvvSjpNk03bG-dFPwYilJrc9sdThWOR3EBMc_9KQVLwJCEd1Zy2MHBtiRgW_6kr_YsOXQd7HwTe0912FG02DaJGUWWBbgIDD7CyvCOgsAxh4F7MWkUmcshtfD1CcTqq3dMIpkWMdjaMhAhphRFNtH9tEkDZo_kRWgv1nvOyYFAijQn1RsR0ssykmI7t4uBXNbyg26uwhPsNRMw9xiLUiAbmM-W531i_SZ1gR1v-T3WvVdhBw5s-6JFrIexZFtp2f5p8PVi3yvRcyFja4jg5g8sMRIqAdH9R_oEzgH0iTrwNorSKRSDY2yF7S7rYQn7AWtZPB4bCrULiOjWOinX5SryeaDDPX9QXDAy5L2-6vCOiDnj8jeIBb5uVN06kBTMxPPyRdSSc5QjCK30g-eRT=w1170-h631-no

*1:ブクログにも同様の内容を記載しています。 booklog.jp

齋藤正彦『線型代数入門』の自分用インデックス

大学1年の線形代数学の講義での教科書は齋藤正彦『線型代数入門』でした。

線型代数入門 (基礎数学)

線型代数入門 (基礎数学)

当時は講義に追いつくのに必死でこの教科書をじっくり読んでいませんでした。

それから20年、ブックオフでたまたま見かけて、懐かしくて購入しました。

じっくり読んでみると、「今の方が理解できるなぁ」と過信してしまうほど、すいすいと読めました。

読みっぱなしではもったいないので、メモというか自分用のインデックスを作りました。

冗長にならないように書き方が正確ではない部分もありますので、ご認識ください。

第1章 平面および空間のベクトル

  • 高校数学で学ぶベクトルの基礎【§1~2】
  • 行列を使った線型変換:回転、折り返し、正射影【§3~4】
  • 行列式とベクトル積(外積)【§5】
  • 第2章 §7で、合同変換(直交変換と平行移動の合成)とアフィン変換が扱われている。
  • 第4章 §1の例1で、ベクトルの概念をある商集合として見直す。

第2章 行列

行列の基本変形と階数(ランク)【§4】

  • 基本変形の操作にあたる3種類の基本行列はすべて正則であることに注意。
  • 一次方程式系の拡大係数行列の左基本変形と係数行列の階数の関係【[5.1]】

内積とユニタリ行列・直交行列【§6】

  • 随伴行列:  A^* := {}^t \bar{A}
    •  (A \mathbf{x}, \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, {}^t \bar{A} \mathbf{y}) に注意。
  • エルミート行列:  A=A^*
    •  (A \mathbf{x}, \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, A \mathbf{y}) を満たす。
  • ユニタリ行列:  A^* A = E
    •  (A \mathbf{x}, A \mathbf{y}) =(\mathbf{x}, \mathbf{y}) を満たす。内積を変えない。
  • 実行列の場合はそれぞれ転置行列、対称行列、直交行列。

いろいろな行列【問題】

  • 正規行列:  A^* A = A A^*
    • つまり、エルミート行列とユニタリ行列は正規行列。
  • 交代行列:  {}^t A = -A
  • 冪零行列:  \exists k \ \ \text{s.t.} \ \ A^k = O
  • 確率行列:各行の成分の和が1
  • 交換子積:  [ X,Y ] = XY-YX

第3章 行列式

  • 多重線型性かつ交代性を持つ関数は、定数倍を除いて行列式をとる写像 det に一致する。【定理[2.6]】
  • 行列の階数は、0でない小行列式の最大次数に等しい。【定理[2.10]】
  • 余因子展開【定理[3.1]】
  • クラメルの公式:係数行列が正則な一次方程式系の唯一解の記述【定理[3.5]】
  •  A \in M_n(\mathbb{Z}) が正則かつ  A^{-1} \in M_n(\mathbb{Z}) であることの必要十分条件 |A| = \pm 1 。【問題10】

第4章 線型空間

用語と記号など

  • 一対一写像単射、上への写像全射、一対一対応は全単射のこと。【§1】
  • 線型空間  \mathbf{V} の部分集合  \mathbf{S} から生成される部分空間は  \mathrm{Span} \ \mathbf{S} などと書く。【[4.2]】
  • 線型写像  T について、 T(\mathbf{V}) \mathrm{Im} \ T T^{-1}(\mathbf{o}') \mathrm{Ker} \ T なとど書く。【[4.4]】
  • 線型部分空間の直和  \mathbf{W}_1 \dot{+} \mathbf{W}_2 \mathbf{W}_1 \oplus \mathbf{W}_2 なとど書く。【[4.8]の前】
  • 線型写像  T に対する行列  A は表現行列と呼ばれる。【§5の冒頭】
  • 線型写像の階数は  \mathrm{rank} \ T  = \mathrm{dim}(\mathrm{Im} \ T ) と書かれる。【[5.1]の後】

線型空間の例

  • 斉次一次方程式系、隣接n項間漸化式、斉次線型微分方程式など【§2 例1~10】
    • 基底と次元の計算【系[3.11]の後】
  • 双対空間と双対基底【問題12】
  • 商空間【問題13】

線型空間の次元と基底

  • (1) 一次方程式系の理論での証明【[3.8]】
  • (2) 極大線型独立系を使った証明【[3.10]】
  • 基底の変換行列【§3の後半】

線型写像

  • 次元定理【[5.1]の後】
  • 行列の階数の特徴付け【[5.3]の後】
  • 基底変換による表現行列の変化: \exists \  P \  \text{正則 s.t.} \  B=P^{-1}AP【[5.3]の後】

 n 次以下の実係数多項式空間  \mathbf{P}_n (\mathbb{R}) の正規直交基底の例

第5章 固有値固有ベクトル

固有値と行列の対角化

  • 行列の対角化ができるための必要十分条件と構成方法【[1.2]'】
  • 行列の対角化が可能 ⇔ 各特性根の固有空間の次元=根の重複度【[1.4]】
  • 固有空間分解と漸化式および微分方程式の解の関係【§1 例8~9】
  • 可換な行列の和と行列の冪の固有値【[2.3]】

ユニタリ空間における正規変換の特徴【§2】

  • 可換な行列がユニタリ行列で同時上三角化可能な条件【[2.2]'】
  • 正方行列がユニタリ行列で対角化可能 ⇔ 正規行列【定理[2.4]'】
  • 正規変換のスペクトル分解(部分空間への射影子を利用)【[2.6]の後】
  • エルミート変換 ⇔ 固有値はすべて実数【系[2.8]】
  • ユニタリ変換 ⇔ 固有値はすべて絶対値1の複素数【系[2.8]】*1
  • 正値行列 *2 と半正値行列の特徴【[2.9]~定理[2.11]】

実計量空間における対称変換の特徴

  • 実計量空間では対称変換に着目して、§2と類似した結果を得る。【§3】
  • 実正規行列の実数の範囲内での標準形【§6】
  • 3次元空間での原点周りの回転(オイラー角)【§6】

二次形式、二次曲線、二次曲面【§4~5】

  • 実対称行列とそれを対角化する直交行列に注目する。

第6章 単因子およびジョルダンの標準形

  •  \mathbb{K} -係数の1変数多項式を成分とする正方行列を考える。本文ではこれを  x -行列と呼んでいる。
  • 基本変形によって、成分である多項式にある整除関係が成り立つ対角行列に変形する。【定理[1.2]】
  • ここから議論を進めて、任意の正方行列がジョルダン細胞の並べ方を除いてただ1つのジョルダン行列に相似であることを示す。【定理[2.2]】*3
  • 行列の冪を線型結合した多項式を考え、最小多項式の性質とハミルトン・ケイリーの定理を導く。【§3】

第7章 ベクトルおよび行列の解析的取扱い

行列値関数【§1】

  •  \mathbb{R} 上のある区間  I で定義された、 m \times n 型実行列をとる写像  A(t) = (a_{ij}(t)) を行列値関数という。
    • つまり、各  a_{ij}(t) I から  \mathbb{R} への関数。
  • 通常の関数と同じように極限や連続性が定義され、微分、さらにテイラー級数を考えることができる。

行列の冪級数とノルム【§2】

  • 行列  X の冪級数  \sum_{p=0}^{\infty} a_p X^p を考えることができて、  X固有値によって収束・発散がわかる。【§2 1°、定理[2.1]】
  • 指数級数  \exp \ X = \sum_{p=0}^{\infty} X^p / p! はすべての行列  X で収束する。さらに、対数級数や等比級数を考えられる。【§2 2°】
  •  \mathbb{R}^n にいろいろなノルムが入れられるように、  M_{m,n}(\mathbb{R}) にもノルムを入れることができ、解析学と同じような概念が考えられる。【§2 3°】

非負行列の性質【§3】

  • ペロン・フロベニウスの定理【定理[3.1]】
  • フロベニウス根【定理[3.3]】

『齋藤正彦 数学講義 行列の解析学』に詳細が書いてあった(2020/6/15追記)

齋藤正彦 数学講義 行列の解析学

齋藤正彦 数学講義 行列の解析学

  • 作者:齋藤正彦
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 単行本
この本の前半部分に、第7章を詳細に説明した内容が書かれていました。
その内容をメモしてみました。
f:id:wed7931:20200615224911j:plain

附録

附録1 多項式

附録2 ユークリッド幾何学の公理

附録3 群および体の公理

おわりに

大学4年で表現論を勉強することになり、線形代数をよく使うようになりました。

このときは佐武一郎『線型代数学』を参考にしていました。

線型代数学(新装版) (数学選書)

線型代数学(新装版) (数学選書)

時間があれば、この本についても自分用インデックスを書いてみようと思います。

*1:問題3に冪零行列、問題5に実交代行列の固有値の性質が書かれている。

*2:正定値行列とも言う。

*3:定理[2.2]の直前に書かれている「  n 次行列  A の特性行列  xE-A x -行列としての階数は  n である」がわかりませんでしたが、その前まではついていけました。

『現代解析の基礎 直観⇔論理』読書メモ (第7章)

昨年末まで『現代解析の基礎 直観⇔論理』(荷見守助・堀内利郎 著)の第6章まで読んでいました。

現代解析の基礎―直観から論理へ 論理から直観へ

現代解析の基礎―直観から論理へ 論理から直観へ


第6章までには、1変数関数の微積分が書かれています。

wed7931.hatenablog.com

今回のテーマは2変数関数の微積

最後の第7章のテーマは2変数関数の微積です。

多変数関数の微積分を大学時代に勉強したときには、計算の仕方の理解を優先し、理論的な裏付けは後回しにしていた記憶があります。
特に、重積分や線積分は理解が追い付いていませんでした。

微積分を振り返るために手に取ったこの本では、理論的な裏付けがとても詳細に書いてある印象を持ちました。
その分、具体的な計算は練習問題に回っています。


ちなみに、学生時代に指定された教科書(以下の2冊)は具体的な計算に重きを置いている印象です。 *1

微分 改訂版

微分 改訂版

積分 改訂版

積分 改訂版

第7章 - 2変数関数の微分積分

 \mathbb{R}^2 上の集合と2変数関数
  • ベクトルの性質
    • 本文中では平面ベクトルを扱っているが、一般の  n 次元空間でも成り立つ。
  • 座標平面内の部分集合の性質と各種定義
    • 集合の内部、外部、境界など
    • 開集合と閉集合の定義、連結性など
  • 連続な2変数関数の性質
2変数関数の偏微分
  • まずは方向微分偏微分可能性を定義し、次に座標軸方向の偏微分を定義する。
  • 次の定理が成り立つ。(定理4)
    •  f を開集合  D \subset \mathbb{R}^2 上で定義された偏微分可能な関数とする。もし偏導関数  f_x(x,y), \ f_y(x,y) が連続ならば、任意の方向  \mathbf{u}=(\alpha,\beta) \neq 0 に対して偏導関数  f_{\mathbf{u}} が存在し、  f_{\mathbf{u}} (x,y) = \alpha f_x (x,y) + \beta f_y (x,y) が成り立つ。したがって、   f_{\mathbf{u}} も連続である。
  • 1変数と同様に、高階の偏導関数が定義できる。
  • 偏微分の順序交換が可能(つまり、  f_{xy}=f_{yx} )なのは、  f_{xy} f_{yx} がどちらも連続な場合である。(定理8)
  • 2変数関数のテイラーの公式では、2通りの剰余項の表し方が書かれている。
偏微分の応用
  • 3次元空間内の曲面  \{(x,y,z) \in \mathbb{R}^3 \ | \ z=f(x,y) \} 上の点における接平面と法線
  • 接平面の方程式の導出過程を反省し、関数  f の全微分可能性と傾き  \mathrm{grad} \ f = (f_x, f_y) を定義する。
    •  \mathbf{p} \in \mathbb{R}^2 に対して、  (\mathrm{grad} \ f)(\mathbf{p}) は曲面の最大傾斜の方向を表し、これに直交する方向は等高線が走る方向になる。
  • 陰関数定理
  • 極値問題
  • ヤコビ行列とヤコビアン
2変数関数の重積分
  • 2次元閉区間の分割とリーマン和を使って、重積分を定義している。
    • 7ページにわたって細かく丁寧に説明されている。私がこれまでに見た本の中では非常に細かい。
  • 有界な平面図形の面積の測り方
    • これも精緻な議論をしている。ジョルダン可測の定義など。
  • 積分可能条件
    • 不連続点の集合の面積が0の関数は積分可能である。(定理23)
    • ルベーグ積分を意識した書き方?
  • 変数変換(定理24)
    • ヤコビアンや陰関数定理などを使った精緻な議論をしている。
    • 極座標変換では、逆写像が1価にならないために局所座標を入れている。(例11)
  • 広義積分
    • 例13~14に出てくる  J, \ B, \ \Gamma はそれぞれガウス積分、ベータ関数、ガンマ関数と呼ばれる。
積分

まとめ

ざっくりとした理解で終わっていた部分なので、とてもいい復習になりました。

紙とペンを使いながら読む形はとれませんでしたが、微積分で困ったときはこの本に立ち返ろうと思わせてくれる本でした。

ブックオフで100円のたまたま見つけた本でしたが、非常にいい買い物をしました!

*1:ここでは改訂版を紹介していますが、私の学生時代はまだ改訂版は出ていませんでした。

方向転換を決断した人には、いつも「うらやましい」と言っている。

自宅の本棚にあった『こんなツレでごめんなさい』(望月昭 著)を読んで、ブクログにこんなレビューを書いた。

この本を読んだのは2回目になる。

1回目はうつ病になる前に、『ツレうつ』を読んだ後。
2回目はうつ病で休職して復帰を目指している今の段階。

ツレさんと自分は、症状は半分くらいは似ていると思う。
他に本で読んだうつ病経験者とは、症状の共通点が少ない方だと思う。

ツレさんは環境をガラッと変えることで物事が良い方に進んでいっているという印象を持っている。
その方向転換をする勇気と決断力を持っているのが素晴らしいと思う。

逆に、自分はそのような方向転換をするほどの気持ちを持てていない。
方向転換をしようにも、どこに転換すればいいか、転換して進んでいいものかを考えて尻込みしてしまう。

自分もこのような気持ちがほしい。


これを書いて思ったのが、自分は方向転換を決断した人には、いつも「うらやましい」と言っているということ。


自分の周りには、方向転換をした人がたくさんいる。例えば…

  • 新卒で就職した会社を退職して、別の会社に就職した人
  • 高校を中退して、専門学校に通って理容師になった人
  • 大学院の博士課程を中退して研究者をあきらめ、一般企業に就職した人
  • 自衛官を辞めて、別の種類の公務員になった人
  • 育児に専念するために退職した人

こういう人と話すときには、いつも「決断ができて、うらやましい」と言っている。


それでは、自分はどうか。

体調がどうにもならなくて休職をするという選択はした。

これをある路線の駅で停車していると例えると、前述の方向転換した人は別の路線に乗り替わったと言える。

ここまでの決断はできていない。


「うらやましい」という言葉が口をついて出るということは、やはり方向転換をしたいということなんだろうか。

現在は休職中で、時間はある。

これからの人生の進め方をゆっくり考えたい。


ちなみに、この記事を書いている日に放送されたNHK朝ドラ『半分、青い』では、ヒロインの親友である律が退職届を出したシーンがあり、心が動かされた。

www.nhk.or.jp


これ以外にも『半分、青い』では、今の自分の胸に刺さるセリフが多い。






この朝ドラに自分が動かされそうな気がしている。

特集「間違いから発展した数学」~『数学セミナー 2018年9月号』読書メモ

数学セミナー 2018年9月号』の特集は「間違いから発展した数学」です。

数学での間違った証明や命題が新しい理論などを生んだ例が7つ *1 の記事で説明されています。

間違いの意義と創造性

科学全般で使われる言葉のセレンディピティパラダイムシフトについて、数学ではどのような例があったかが説明されています。

具体的には、ユークリッド『原論』に始まり、ユークリッド幾何学を経由して、数学基礎論に至る道筋が書かれています。

平行線公理

ユークリッド『原論』の第5公準(平行線公理)を他の公準から証明しようとする試みがあったことはよく知られていると思います。

その中で起こったユークリッド幾何(双曲幾何)の誕生について書かれています。

関連した話題が『数学ガールポアンカレ予想』第4章に書かれています。

wed7931.hatenablog.com

また、『数学セミナー』2017年4月号~2018年3月号で連載されていた足立恒雄さんの「よみがえる非ユークリッド幾何」も参考になりそうです。 *2

関数の連続性についてのコーシーの誤り ― 反例が導いた厳密な概念

(現代の)解析学でよく知られた次の定理に関する話題です。

区間  I 上の連続関数の列  \{ f_n(x) \}_{n=1,2,\dots} を考える。 I 上の関数  f を、 各  x \in I に対して  f(x) = \lim_{n \to \infty} f_n(x) で定義する。
このとき、関数列  \{ f_n \}区間  I 上で関数  f一様収束するならば、  f I で連続である。

この一様収束という条件がどのような議論により導かれたかが説明されています。

ポアンカレ予想

最初のポアンカレ予想ホモロジーを使った主張でしたが、議論を進める中で誤りであることがわかり、基本群を使った今日のポアンカレ予想になりました。

この記事では、以下のことが書かれています。

最後の節に書かれている論文で予想を述べる重要性も勉強になりました。

ルベーグの間違いと記述集合論の誕生

ルベーグによるボレル集合に関する誤った命題から記述集合論が生まれた経緯が書かれています。

σ-代数、ボレル集合、ディリクレ関数 *4 など、自分が忘れていたことを思い出させてくれました。

間違いと真理 ― 解析学集合論の場合

自分にとって土地勘がない分野なので読むのがややしんどかったです…。

キーワードは、超準解析/選択公理/ZFC集合論/無限小などでしょうか。

印象的な言葉はこれでした。

古典的な(つまり20世紀中盤くらいまでの)解析学はすべてZFCの中に余裕で展開できると断言できます. [本文より引用]

4色定理の証明 ― 小さな誤りから大きな問題への道

4色定理の「証明」が1879年に出されましたが、約10年後にこれが誤りであると指摘されました。

この誤った証明がどのようなものだったかが、「6色定理」と「5色定理」を使って説明されています。

*1:4色定理の記事も含めています。

*2:私自身は第3回くらいまで読みました。

*3:次の説明がとても印象的でした。「基本群  \pi_1 (X,b) を可換群化したもの,すなわち商群  \pi_1 (X,b) / [ \pi_1 (X,b) , \pi_1 (X,b) ] を1番ホモロジー H_1(X) とみなすことができる.」 ※  [ G,G ] は群  G の交換子群。

*4:有理数に対して1、無理数に対して0を返す関数

『数学ガール/ポアンカレ予想』第10章 読書メモ

数学ガールポアンカレ予想』第10章の読書メモです。これが最後の章になります。


第10章のタイトルはポアンカレ予想

この本のタイトルであるポアンカレ予想を読み解きます。

これまでの幾何学を中心とした数学の準備がどのように結実するかが楽しみです。


なお、第9章の読書メモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com



【目次】

第10章のキーワード

ポアンカレ予想の主張からわかること

フェルマーの最終定理の主張は小学生でも十分に理解が可能ですが、これに比べるとポアンカレ予想の主張は少し難しいです。

でも、仮定と結論を正しく読み取れれば、3次元閉多様体の判定 *1 ができることがわかると書かれています。

このような主張の読み取りは、高校で習う必要条件や十分条件の練習問題として使えるのではないかと思いました。 *2

ペレルマンによるポアンカレ予想の証明と物理との関係

ポアンカレ予想ペレルマンにより肯定的に解決されました。

証明のいくつかのポイントは本文に書かれています。(サーストンの幾何化予想やハミルトンプログラムなど)

その証明の中では、リッチフロー方程式が使われています。

本文によると、次のように言えるようです。

  • 物理学の熱方程式に対応するものがリッチフロー方程式
  • 熱方程式の温度に対応するのが、リッチフロー方程式のリーマン計量(から計算されるリッチ曲率)

一見して無関係のように思えますが、本文を読んでいると「なるほど…」という気分になりました。

特に、曲率と温度の均一化をイメージさせる表現がある次の部分が印象的です。

  • 355ページ
  • 364ページ~367ページ
  • 376ページ

自分の修士論文も物理と関係があるらしい。

最近のTwitterのTLを見ていると、「私の修士論文の内容も物理との関係がありそう」ということがわかってきました。具体的には水素原子の挙動に関係するようです。

wed7931.hatenablog.com

いずれはその関係を理解してみたいと思い、関係するツイートをTwitterモーメントに集めています。

twitter.com

数学の論文検索はMathSciNetしか知らなかった

数学科の学生時代('00年代前半)は、論文検索でMathSciNetをよく使っていましたが、arXivは知りませんでした。

MathSciNetとarXivについては以下のサイトに詳しく書かれています。

blog.livedoor.jp

詳しい数学がわからなくても論文は「読める」

自分の場合、細部にこだわって数学書や論文を読む傾向があります。

本文で説明されているペレルマンの論文の「読み方」はとても参考になりました。

《知らないふりゲーム》の具体例がわかりやすい

数学ガール』シリーズでは、《知らないふりゲーム》がよく出てきます。

本文に書かれている例が非常にわかりやすいと感じました。

ただの集合にどんな構造を入れると、何が議論できるかをまとめておきます。

  • 位相を入れる → 連続性や連結性が議論できる
  • 多様体 → 次元
  • 微分多様体微分、接空間
  • リーマン計量(リーマン多様体にする) → 距離、角度、曲率

最初のポアンカレ予想ホモロジー群を使ったものだった

ポアンカレ予想変遷は、数学セミナー 2018年9月号』の特集「間違いから発展した数学」でも取り上げられていました。

おわりに

数学ガールポアンカレ予想』の全体まとめとして書く記事で説明する予定です。

*1:分類ではないことに注意!

*2:数学でよく使われる、主張の強い/弱いなどの表現を含めて。

『数学ガール/ポアンカレ予想』第9章 読書メモ

数学ガールポアンカレ予想』第9章の読書メモをまとめます。


第9章のタイトルは「ひらめきの腕力」

ここまでで最後の第10章で必要な数学の準備が終わります。

個人的には、ここ1年ほどで復習している数学の内容が含まれていて、とてもいい頭の整理になりました。


なお、第8章の読書メモはこちらです。

wed7931.hatenablog.com


【目次】

第9章のキーワード

フーリエ展開でハッとした2つの言葉

数学セミナー 2018年3月号』の特集記事で、フーリエ級数について復習していたので、第9章は頭の整理に最適でした。

wed7931.hatenablog.com

そして、次の2つの言葉はとても印象的で、ハッとしました。定義や定理の表面だけを見ていると気付きにくいのかなと思いました。

テイラー展開微分フーリエ展開は積分を使うのか」 *1 (325ページ)

「なるほど……ところで、  x^2 という関数はもう十分に簡単な形になっていますよね。それをわざわざ三角関数で表す意味はあるんでしょうか。テイラー展開はわかるんです。  \sin x という難しいものを、  x^k というやさしい形で表すんですから。でも……」 (330ページ)

数学に必要なものって?

この章で最も印象的だったのは、定理や数式そのものではなく、冒頭の「9.1.1 ひらめきと腕力と」の内容でした。

「自分にはひらめきも腕力も足りていない。特に腕力が足りない」というのが率直な感想です。

そして、9.1.1節と似たようなことが数学セミナー 2018年9月号』の特集「間違いから発展した数学」に書かれていました。野家啓一さんの「間違いの意義と創造性」という記事です。

2つを合わせて読むのをおすすめします。

おわりに

残すは最後の第10章です。

これまでは、各章を読んでブログを書いた後に次の章を読んでいました。

今回は、第9章を読んだ勢いでそのまま第10章を読みました。

それでは、第10章のまとめ記事を書き始めましょう!

*1:テイラー展開の係数は微分を、フーリエ展開の係数は積分を使って書ける」という意味。