7931のあたまんなか

数学/読書メモ/自分の考え方/水曜どうでしょう/交通関係(道路・航空)など、頭の中にあることを書き出しています。

球面上の三角形を見ていて思ったこと

子どもたちと直角三角形の話をしていて、球面上に3つの直角を持つ三角形を書くことができることを説明しました。

三角形が書かれたボールをぼんやり眺めていると、いろんなことが頭に浮かんできました。



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幾何学の問題を考えるってこういうことなのかなぁ…と。

頭の中にあることをメモに書いてみました。あまりまとまりがないのはご容赦を。

幾何学への苦手意識が薄れると、こういう発想もできるようで楽しくなってきました。

2018年の数学活動を振り返る。

あと20日ほどで2018年が終わります。

何もしていなかったようで、たぶんいろいろやっていた2018年。

振り返りたいことはたくさんありますが、この1年でやってきた数学の活動について振り返ってみます。


【目次】

MATH POWER 2018に参加

私にとって初めて数学イベントに参加したことが、最も大きな出来事です。

学生時代以来、たっぷりと数学に浸れて、とても幸せな気分でした。

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来年も数学イベントに参加して、今度はいろいろな方と交流できればと思います。

数学ガール』シリーズのレビューを担当

念願だった数学ガール』シリーズのレビューを担当することができました。

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非常に貴重な体験でした!

著者の結城浩さんより献本いただいた本は宝物です。

幾何系に興味を持ち始めた

中学以来、幾何学には相当な苦手意識がありました。(こちらに詳しく)

しかし、昨年4月から定期購読している数学セミナーの特集や数学ガールポアンカレ予想を読んで、幾何学に興味が出てきました。

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リーマン計量、ホモトピーホモロジーなど、学部時代に理解できなかった内容がようやくわかってきて、幾何学が楽しくなってきました。

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来年もこの流れは続くように思います。

13年ぶりに表現論を勉強し始める

Twitterで数学関係のツイートを見ていると、リー群の表現論と物理との関係が目に付くようになりました。

大学院時代の専門がリー群の表現論だったので、「改めて理解したい!」と思うようになりました。

ということで、私の指導教官が書いた『表現論入門セミナー―具体例から最先端にむかって』を使って、表現論と物理の関係の勉強を10月から始めました。

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ゆっくりと読んでいて、ようやく第1章が読み終わりそうです。
物理との関係も少し出てきて、今後が楽しみです。

数学の本をたくさん買った

ブックオフやメルカリで数学書がかなり安く売っていることを知り、数学の本をたくさん買いました。

学生時代に読んだ教科書や読み物までいろいろ。
今年買った数学関係の本を並べてみると、予想以上にたくさんありました。

ご想像のとおり、ほとんどが積読です。
こういう本は手元にあるだけで落ち着きますね。

さて、2019年は?

2018年は学生時代以降で最もたくさん数学をしました。
興味の範囲も広がり、そのときの興味に応じて、いろいろなことを勉強しました。


そして、2019年。

今と同じように、その時点の興味に応じて勉強して、ブログやTwitterにアウトプットする予定です。

それに加えて、Twitterやイベントなどを通じて、いろいろな方と交流を深めたいです。

頭の中に断片的な知識が散らばった状態になりそうですが、長い時間をかけて知識をつなげて、より広い数学を知ることができればと思います!

それでは、ちょっと早いですが、みなさんよいお年を!

特集「幾何の概念のアイデア」~『数学セミナー2018年12月号』読書メモ その2

数学セミナー 2018年12月号』の特集は「幾何の概念のアイデアです。

前回のまとめ記事はこちらです。

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今回は、6個の記事のうち中盤の2個のメモを紹介します。

ファイバー束

キーワード

ファイバー束の概念
  • 空間の族や、各点ごとに値域が変わるような一般化された関数を記述するための1つの手法
ファイバー束
  • いわば、「ねじれた直積」を記述する手法
  • ファイバーと局所自明化
ファイバー束の例
  • (1) アニュラス
    • 直積空間であり、大域的な自明化が成り立つ積束の例でもある。
  • (2) メビウスの帯
  • (3) ホップ束
    • 複素射影直線  \mathbb{C}P^1 = \mathbb{C} \cup \{ \infty \} と2次元球面  S^2 の同一視
    • 1点コンパクト化 *1
  • (4) 主  U(1) -束
    • ホップ束の一般化
ファイバー束の構造群
  • 複数のファイバー束の関連を考えるための概念
  • 変換関数
  • 例:ベクトル束、接束、主束
ファイバー束の切断
  • 各点ごとに取る値の空間が変わるような一般化された関数を記述する手法
  • 例:滑らかな多様体上の連続ベクトル場
ファイバー束の分類問題
  • 引き戻し、分類空間、分類写像

イメージしやすいアニュラスとメビウスの帯

今回の連載で、初めてファイバーという概念を知りました。

本文にはアニュラスやメビウスの帯を平行や垂直に切った図が書かれていて、ファイバーの定義と照らし合わせて考えると、非常にわかりやすいのが特徴でした。

私としては、ホップ束や構造群を図としてイメージするのは難しかったですが、数式で追いかけるのはそれほど難しくありませんでした。

接空間をすべて集めた集合の意味合いがわかった

多様体を勉強していくと、滑らかな多様体  M の各点  p \in M における接空間  T_p(M) をすべて集めた集合  TM = \bigcup_{p \in M} T_p M というものが出てきます。

これまで、  TM という集合がどのような場面で使われるかがわからず、なかなか理解しがたいものでした。

ファイバーという概念を「各点ごとに値域が変わるような一般化された関数を記述するための手法」と認識することで、理解を進めることができました。

コホモロジー

キーワード

特異単体とチェイン
  • 標準  k 単体  \Delta^k
    •  \Delta^k = \{ (x_i, \dots, x_k) \in \mathbb{R}^{k+1} \ | \ 0 \le x_i , \ \sum_{i=0}^{k} x_i = 1 \}
  • 特異  k 単体
  • (特異)  k チェイン
    • 特異  k 単体の  \mathbb{R} -係数の形式的な線形結合
    • 特異  k チェイン全体の集合を  C_k(M) と書く。
特異コチェインの性質
  • (特異)  k コチェイン
    •  C_k(M) から  \mathbb{R} への線形写像
    •  k コチェイン全体の集合を  C^k(M) と書く。
  •  C_k(M) C^k(M) の双対空間と言える。
  •  M n-k 次元部分多様体  N を使って  M k コチェイン  N^{*} を作る方法
    • 特異  k 単体の像と有限個の点で交わる  N の交点の符号を足しあげる。
ポアンカレ双対
  •  k コチェイン  N^{*}微分形式で特徴づけられ、これを  Nポアンカレ双対という。
    • 本文では、  M N を特別な場合で説明しているが、一般の多様体でも定義される。
ド・ラームコホモロジー群と特異ホモロジー

1年前の特集でもホモロジーがあった

数学セミナー 2017年12月号』の特集で、ホモロジーが扱われていました。

図形的イメージは、2017年12月号でより詳しく書かれています。

そのときのまとめはこちらです。

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ド・ラームコホモロジーとド・ラームの定理について、今回の記事では数式を使って詳しく書かれています。

*1:松坂和夫『集合・位相入門』 第5章 定理17

*2:いつか、このブログできちんと書いておきたい。

特集「幾何の概念のアイデア」~『数学セミナー2018年12月号』読書メモ その1

数学セミナー 2018年12月号』の特集は「幾何の概念のアイデアです。

今年は『数学ガールポアンカレ予想』などを通して、これまででいちばん幾何学に触れた年だと思っています。

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そこで得られた知識の復習をすることができました。

ここでは、6個の記事のうち2個のメモを紹介します。

曲率の素朴な考え方

キーワード

  • 曲面とその接平面の「違い」から導かれるガウス曲率
  • 測地線:曲面上の2点を結ぶ最短の曲線
  • 曲面上の三角形と平面上の三角形の辺の長さの比較
  • 驚異の定理

数学ガールポアンカレ予想』でも扱われている

ガウス曲率と驚異の定理は数学ガールポアンカレ予想』第8章でも扱われています。

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驚異の定理からわかること

ガウス曲率が曲面上での曲線の長さの情報 *1 から得られるというのが驚異の定理の主張です。

つまり、微分接平面をうまく定義できないような対象でも曲率を考えることができることがわかります。

微分形式/局所的にも大域的にも便利な道具

キーワード

  •  \mathbb{R}^n 上の  k微分形式(  k -form)
    • wedge \wedge が持つ交代性と強い冪零性
  •  k微分形式全体の集合  A^k(\mathbb{R}^n) C^{\infty}(\mathbb{R}^n) 加群となる。
  • 直和  \bigoplus_{k=0}^{\infty} A^k(\mathbb{R}^n) は代数をなし、外積代数(グラスマン代数)と呼ぶ。
  • 微分  d: A^k(\mathbb{R}^n) \to A^{k+1}(\mathbb{R}^n) dd=0 を満たす。
  • 一般の多様体上の微分形式
    • cotangent bandleのsectionが、局所座標系を使った  d x^{i} たちになる。
  • 微分形式の引き戻し(pullback)と押し出し(pushout)
  • 微分形式の積分を定義する手法としての1の分解
  • 微分方程式の弱解とカレント

微分形式と微分方程式の解に関係がある…?

この記事の最後では、微分形式と微分方程式の解の関係が、シュワルツ超関数やカレントという言葉を使って示されています。

いまさらながら、「私の修士論文に大いに関係するのでは?」と思うようになりました。修論を理解したい気持ちがさらに強まりました。

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*1:第一基本形式。『数学ガールポアンカレ予想』では、内在的な量と表現しています。

水曜どうでしょうDVD副音声でグッときた話(随時更新)

水曜どうでしょう』が大好きで、気づいたらファン歴が20年になりました。

水曜どうでしょう』は2002年9月にレギュラー放送が終了し、これまでの企画が順次DVD化されていて、すべてのDVDを買っています。

レギュラー放送された企画は、VHSで文字通りテープが擦り切れるほど見ていて、内容はほとんど頭に入っています。
なので、自分の楽しみはDVDの副音声です。

振り返って聴きたい副音声をまとめます。

副音声では、ディレクター陣と出演者がロケ当時の話などをしています。
それに加えて、番組の作り方のポリシーや生き方のような話をしています。
まるでラジオのような感じなので、運転中にラジオ代わりに聴いています。

中でも、生き方に関する内容にグッとくることが多いです。
これについては、振り返って聴きたくなります。

このエントリでは、どの企画の副音声でどんな話をしたかを、自分のメモのためにまとめます。
なお、随時更新する予定です。

粗大ゴミで家を作ろう(出演者:D陣、ミスター)

  • 映像は物事を伝えすぎてしまう。
  • 一方で、小説などの活字やラジオは、伝えたことプラス受け手の想像力で伝えるメディアである。

ヨーロッパ21ヵ国完全走破 第7夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 「妥協」は必ずしも後ろ向きなことではない。
  • 人と人は違って当たり前。
  • 恋愛などではまずは共通点を探し出すけど、もともと合わないんだから合えばラッキー。
  • だから、みんなが1つの方向に向かって進むのは、かえって気持ち悪い。
  • 「どうでしょう」はその中での葛藤を見せている番組。

カントリーサインの旅2 第2夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 目の前にあるもので楽しいものを自分で作る楽しさ
  • 子どもは積木ひとつでずっと遊んでいられる。自分で楽しいことを作れる。
  • 今は一から十までお膳立てされている状態で楽しむことが多い。

桜前線 第1夜(出演者:D陣)

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アメリカ横断 第2夜(出演者:D陣、ミスター)

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夏野菜第2~3夜(出演者:D陣、安田さん)

  • 安田さんと自分の考え方は似ているかもしれない。

サイコロ6 第1夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 自分はもともと欲がないけど、欲がある振りをしていたのかも。

30時間テレビ 第2夜(出演者:D陣、安田さん)

  • 安田さんは「考える/掘り下げる」ことで多忙なんじゃないか。
  • 「我が強い」と言われる。

試験に出る石川富山 第1夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 一からものごとを理解することが大事。
  • 経験が大事。
  • 順序立てて考えよう。
  • 今は出来合いのものしか見えない社会

試験に出る石川富山第3夜(出演者:D陣、安田さん)

  • 「何を了解して先に進むか」が人によって違う。

四国八十八か所2 第1夜(出演者:D陣)

  • 大泉さんは負け戦のプロ
  • 今の閉塞感のある日本に必要

四国八十八か所2 第2夜(出演者:D陣、大泉さん)

  • 藤村D:私はテレビを愛しているんです!
  • 「負けるが勝ち」という言葉を最近は聞かなくなった。

原付西日本 最終夜(出演者:D陣、大泉さん)

  • 今のディレクターがやっているのは護岸工事。
  • 結論まで決めてしまっている。

原付西日本 最終夜(出演者:D陣、大泉さん)

  • 今のディレクターがやっているのは護岸工事。
  • 結論まで決めてしまっている。

ユーコン川160km 第3夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 今はみんなが用もなくあくせくしている。なぜなら、忙しいのが美徳と思われているから。
  • 「最近忙しい?」「いや全然!」というやりとりが、それを表している。

コスタリカ第1夜(出演者:D陣)

  • 熱量を持った人が熱量を持ってものごとを始めるのが大事。
  • そうしないと責任の所在がはっきりしないまま終わる。
  • だから、何か問題が起こったら、誰も責任を取らなくなって、うやむやになって終わる。

コスタリカ第2夜(出演者:D陣)

  • 本当にコミュニケーションが取れた社会になっているか?
  • 今はみんながルールを守りたがる。そうすることで面倒なことがなくなってコミュニケーションを取らなくて済むようになる。
  • ★この回の副音声はすごく濃厚な内容

コスタリカ第3夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 組織と多様性

5周年記念深夜バスだけの旅 第1夜(出演者:D陣)

  • わかりやすさを追求しすぎることの弊害

試験に出る日本史 第4夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 体や心が弱っている人の話
  • 笑うのが大事。
  • すべてをあきらめる。
  • つらいことはつらい。
  • あるがままを受け入れる。
  • 晴耕雨読な生活

四国八十八か所3 第1夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 若いときは新しいことにチャレンジする。でも歳をとると…。
  • 「山の頂上に登る」と「山の裾野を360度見回す」では、見える景色が変わる。
  • 自分は波に追いつけなかった。無理して追いついていたんじゃないか?
  • やり残したことは?
  • ★この回の副音声はすごく濃厚な内容

四国八十八か所3 第5夜(出演者:D陣、森崎さん)

  • 若いときは自分の我を通すことが正義だと思っていた。

日本全国絵ハガキの旅2 第1夜(出演者:D陣)

  • がんばらないようにするために、一度レギュラー放送を終わらせた。

釣りバカ屋久島 第1夜(出演者:D陣、安田さん)

  • 安田さんは撮影現場で「安田さんはクラフトマンですね」と言われた。
  • 周りの人が長い目で見てあげる。

前枠・後枠傑作選 第1夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 結末が決まっているものや予定調和はおもしろくない。
  • 水曜どうでしょう』という番組は人間の葛藤を映し出している。

DVD発売記念!「6年間の事件簿! 〜今語る!あの日!あの時!〜」(出演者:D陣、ミスター)

  • ミスターの考え方と自分の考え方が似ている点
    • ものごとを始めたら、中途半端にはやりたくない。
    • ある程度のグレードまでは持っていきたい。
    • 一方で、逃げの気持ちがある。
    • 早くこの場から解放されたい!という気持ち
    • だらだらやるのは嫌い。
  • ミスターは韓国の映画修行に行って、この考え方が変わったらしい。

ミスター映画勉強壮行会

※DVD第5弾(212市町村1/宮崎/韓国)の特典映像の主音声
note.mu

西表島 第6夜(出演者:D陣、安田さん)

  • 嬉野さん:常に終わりを考える。
    • 自分にとって、「終わり」は何か?
  • 安田さん:リーダーシップを取らずに、流れに乗っていきたいタイプ。

ヨーロッパ20カ国完全制覇完結編 第1夜(出演者:D陣)

  • アニメや映画に出てくる勧善懲悪“ではない”世界
  • 悪役とはいかないまでのキャラクターの存在が大事

ヨーロッパ20カ国完全制覇完結編 第2夜(出演者:D陣、ミスター)

  • 間違っていようが正しかろうが、前に進めることも大事

ヨーロッパ20カ国完全制覇完結編 第4夜(出演者:D陣、ミスター)

  • これまでに立ててきた目標はほとんど達成できていないのが実態。
  • 目標を達成するのはかっこいいけど、↓に書いているようなことも大事。
    • できないことはできない。
    • 勇気ある撤退
    • 正直に言う。
    • あっさりとあきらめる。
  • どうでしょうは男4人の旅。女性がいないのがポイントかもしれない。
  • 海外でも通じるような番組かも?
  • ★この回の副音声はすごく濃厚な内容

全般的に

  • 先のことを決めると苦しくなる。だから、先のことは決めない。
  • 自分が楽なように生きる。
  • 人間は強くない。(それが自然)

射影表現と表現群~『表現論入門セミナー』読書メモ その2

『表現論入門セミナー―具体例から最先端に向かって』の読書メモ第2回です。

表現論入門セミナー―具体例から最先端にむかって

表現論入門セミナー―具体例から最先端にむかって

いろいろな表現(§1.2)

 G のいろいろな表現が、誕生した経緯とともに説明されている。

置換表現

有限群  G置換表現とは、  G から  n 次対称群  \mathfrak{S}_n への準同型のことをいう。

線形表現

ベクトル空間  W 上の可逆な線形変換全体がなす群を  \mathrm{GL}(W) と書く。
 W= \mathbb{C}^d のときは  \mathrm{GL}(d, \mathbb{C}) と書き、これは正則な  d 次正方行列全体である。

 G線形表現とは、準同型  \pi : G \to \mathrm{GL}(W) のことをいう。

線形表現の指標

線形表現  \pi指標  \chi_{\pi} は、各  g \in G \chi_{\pi}(g) = \mathrm{tr}( \pi (g)) \in \mathbb{C} で定義される。これは  G の1次元表現になる。

分数変換と表現

 m 次正方行列  A = (a_{ij}) \in M_m(\mathbb{C}) に対して、分数変換  P_A : \mathbb{C}^{m-1} \to \mathbb{C}^{m-1} を次のように定義する:

 x := (x_i) \in \mathbb{C}^{m-1} に対して、  P_A (x)  \in \mathbb{C}^{m-1} の第  i 成分が  \displaystyle x_i ' = \frac{ \sum_{k=1}^{m-1} a_{ik}x_{k} + a_{im}}{\sum_{k=1}^{m-1} a_{mk}x_{k} + a_{mm}}  ( 1 \le i \le m-1) と書かれる。

ここで、  P_{\lambda A} = P_A , \ P_A \cdot P_B = P_{AB} , \ P_A^{ \ -1} = P_{A^{-1}}  (A,  B \in \mathrm{GL}(m, \mathbb{C}), \ \lambda \in \mathbb{C}^{\times}) に注意する。

すると、 P_{\bullet}  \mathrm{GL}(m, \mathbb{C}) の表現に見える。これが  (m-1) 次元の複素射影空間上の表現になるようだ。 *1

射影表現

有限群  G射影表現  \Pi とは、  g \in G \Pi (g) \in \mathrm{GL}(m, \mathbb{C}) を対応させて、  \Pi(g) \Pi(h) = r_{g,h} \Pi (gh)  (g, h \in G, \ r_{g,h} \in  \mathbb{C}^{\times}) を満たすものをいう。

線形表現は射影表現の特別な場合

スカラー  r_{g,h} が常に1 (つまり  r_{g,h} \equiv 1 )の場合は、  \Pi は線形表現になる。

射影線形群

 \mathrm{GL}(m, \mathbb{C}) の中心(すべての元と可換な元)は  \{ \lambda 1_m \ | \ \lambda \in \mathbb{C}^{\times} \} \simeq \mathbb{C}^{\times}  となる。

 \mathrm{PGL} (m, \mathbb{C}) :=  \mathrm{GL}(m, \mathbb{C}) / \mathbb{C}^{\times} 射影線形群と呼ぶ。

射影表現の別の見方

以上により、射影表現  \Pi G から  \mathrm{PGL} (m, \mathbb{C}) への準同型と言える。 *2

射影表現を線形表現に直せるか?

表現論で最も重要な数学者であるシューア *3 が考えたのは、「任意の射影表現をスカラー倍で修正して、線形表現に直せるか?」ということだったという。

つまり、射影表現  \Pi について、  \Pi (g) \lambda_{g} \Pi(g) \ (\lambda_{g} \neq 0) に置き換えて線形表現が得られるかということである。

この答えを、中心拡大という概念を使って得た。

中心拡大

 \widetilde{G} が有限群  G中心拡大であることを次のように定義する:

全射準同型  \phi : \widetilde{G} \to G で、  Z := \mathrm{Ker} \ \phi  \widetilde{G} の中心に入るものが存在する。(言い換えると、  Z の元はすべての  \widetilde{G} の元と可換である。)

シューアの問題の答え

有限群  G の適当な中心拡大  \widetilde{G} を取れば、  G の任意の射影表現が  \widetilde{G} の線形表現になる。

中心拡大について言えること

  • 群準同型の図式  1 \to Z \to \widetilde{G} \xrightarrow{\phi} G \to 1 は完全であるともいえる。
    • 完全であるとは、準同型  f_i たちについて、  \mathrm{Im} \ f_{i-1} = \mathrm{Ker} \ f_i \ (\forall \ i) を満たすことをいう。 *4

表現群

中心拡大のうちで最も‘効率的’なものはすべて有限群で、同型を除いて有限個のみであることが知られている。

これを  G表現群という。

表現群の具体例

 n 次対称群と交代群の表現群は§1.2.4~§1.3.2で説明されている。

*1: x_i' の定義の分母が0になるときの対処に関係する。

*2:定数倍を同一視している形なので、まさに「射影」という言葉がぴったりだと思った。

*3:本書では、「シュア」と綴っている。

*4:『数学セミナー 2018年11月号』 P76で完全系列について言及されている。(連載「双対と表現」第2回)

置換群とその表現群~『表現論入門セミナー』読書メモ その1

買ってから14年経ってようやく『表現論入門セミナー ― 具体例から最先端に向かって』(平井武・山下博)を読み始めました。

表現論入門セミナー―具体例から最先端にむかって

表現論入門セミナー―具体例から最先端にむかって

私が学生時代に専門にしていたリー群の表現論について書かれた本で、物理との関係についても触れられています。

Twitterを通じて表現論と物理の関係に興味を持ち、この本を読み始めました。

自分の頭の中を整理することを目的として、読書メモを書いていこうと思います。

まずは第1章の§1.1~§1.3にあたる内容をまとめます。

置換群の復習

 n 次対称群  \mathfrak{S}_n の性質についての復習(§1.1.1)

  • 巡回置換
  • 互換
  • 単純置換(互換のうち、  (i \ \ i+1) で表せるもの)
  • 偶置換と奇置換
  • すべての偶置換を集めた  n交代群  \mathfrak{A}_n

 \mathfrak{S}_n \mathfrak{A}_n の生成元系

  • 自由群と基本関係式の復習(定理1.1)
  •  \mathfrak{S}_n の生成元系の具体的表示(定理1.1)
  •  \mathfrak{A}_n の生成元系の具体的表示(問題1.3、問題1.4、定理1.3)

置換群の例と関係する話題

 \mathfrak{S}_n \mathfrak{A}_n の表現群

※表現群の定義は次回に説明する。元の群を大きくして表現を拡張するようなイメージ。

  •  \mathfrak{S}_n の表現群:§1.2.4
    •  n=6 は例外(§1.3.1)
  •  \mathfrak{A}_n の表現群:§1.3.2
    •  n=6,7 は例外

本文中に  l 重の被覆群という用語が出てくるが、詳細な定義は後の章で述べられる。

外部自己同型群

 G の外部自己同型群の定義が書かれていなかったので、ここにメモしておく。

  • 自己同型群  \mathrm{Aut}(G)
    •  G から  G への群同型全体
  • 内部自己同型群  \mathrm{Int}(G) *3
    •  g \in G が引き起こす自己同型  \iota_{g} (h) := g h g^{-1} \ (h \in G) (内部自己同型)の全体
  • 外部自己同型群  \mathrm{Out}(G)
    •  \mathrm{Out}(G) := \mathrm{Aut}(G) / \mathrm{Int}(G)

次回以降:多面体群の置換表現

置換群の一例として、§1.4~§1.5に多面体群の置換表現が書かれています。

次回以降でまとめる予定です。

*1:15パズルは 数学セミナー 2017年 10 月号 32ページにも記載あり。参考: 「数学セミナー 2017年10月号」の読書メモ ~ その2 - 7931のあたまんなか

*2:難しくて読み切れなかったが、基本群との関係が気になる。

*3: \mathrm{Inn}(G) と書いた本もある。